第4話 感情
ひとっ飛びですぐに、ベルベットは人間に追いつき、嘲笑うかのように、スタッと人間達の目の前に降りたった。
『・・・なにがしたいんだ?』その声は怒りに満ちているように感じるが、さっき放った人喰い本来の、姿はどこにもなく、瞳の色も伸びた爪も、元に戻っていて、何故だか瞳の感情は読み取れないくらい冷たくなっている。表情というものが無くなっていた。
人間の男は、ズサァーと地面を削る音を出して、走るのを止めるしかなく、子供達を抱えたまま、地べたに腰を下ろした形になった。
「ハァハァ・・・お、お願いだ、お願いだから、私はいい!子供は、子供達だけは、殺さないでくれ!」そう言ってキツく子供達を抱き寄せ、震える唇で愛おしそうに、2人の人間の子供の頬にキスを落とす、人間の男。
ピック。ベルベットは、表情を引くつかせ、凄く不愉快だと言わんばかりの、顔を作って見せた。
「パパァ、パパァ、嫌だよォ。怖いよぉ。早く、早くお家に帰ろうよォ。」1人の子供は泣きじゃくって、人間の男を、揺さぶりながらしがみつく。
もう1人の子供はと言うと、驚く事にベルベットを睨みつけているではないか。
それを、知ってか知らずかベルベットは人間の男に、焦りもせずゆっくり近づき、目を合わせてやるために、仕方なく人間の男の前に屈んだ。
『・・・子供は、嫌いだ。それに食べたいとも思わない・・・それと・・・殺すも殺さないも、私の勝手だ。』そう言うと、合わせてやった目線を戻すように屈んでいた腰を上げ、人間の男を上から蔑むよな目で見る形になり
『人間・・・。』ふぅーと、息を吐き
『さっきから、喋りすぎだっ。』と、言い終えた途端ベルベットは、人間の男に盛大なかかと落としを食らわす。すると人間の男は、ガガガガガガガガと、奇妙な音を口から放ち、地面に自分の顔面をめり込ませた。
その光景を隣で見ていた人間の子供の1人は、うるさく、激しく泣き喚いている。
「パパァ!パパァ!パパァ!」と、人間の男を揺さぶっているが、人間の男の顔は激しく変形し、鼻や顎が潰れている。
「はぁはぁはぁ・・・ゴブッ・・早くっ・・・ここから・・・逃げっ・・・」人間の男は口であろう場所から血を吐き、子供達の心配をしている。
すると、先程から生意気にもベルベットを睨んでいた人間の子供1人が、ベルベットに向かって言い放ってきた。
「お・・・おい!人喰い!人間を弄んで楽しいかっ?こんなにも、許してくれと・・・頼んでいるのにっ。・・・助けてくれと・・・グスッ言っているのにっ。」初めは威勢がよかったのに、最後には怖くなったのか泣き出し始めた。
ベルベットは、その人間の子供に、視線を移して
『・・・?・・・目から水流して・・・楽しいか?・・・人間の子供・・・』嘲笑うかのように尋ねながら、人間の子供の言葉を無視するベルベット。
人間の子供は涙を流し続け、ベルベットの問いに普通だと言わんばかりに大声で叫んだ。
「目から水だと、ハッ。笑わせるな!涙だ!!死ぬかもしれない、パパが・・・自分が・・・。怖いし悲しいだろう・・・。グスッそれが、普通だろ!!グスッ」そう威勢よく言い終えて、自分の服で涙と鼻水を拭い、すぐさま人間の男に抱きついた。
『フッ・・・な、み、だ・・・ねぇー・・・“恐怖”ってもんは、なんとなく分かる・・人間は、いつも私を見たらそんな表情をするから・・・・・・』そう言うと、何かを思い付き右に少し口角を上げた。
『それ(目)・・・食べたら美味しいのかなぁ?』そう言うと、ベルベットは先程、元に戻した爪をまた、伸ばして人間の子供目がけて、長く伸ばした爪を振りかざした。
シュパッ。ビシャッ。伸ばした音と、何かがえぐれた音と同時に
「ギッギャアー」人間の子供が、叫び声を上げた。すると、人間の子供は自分の目を押さえて、目が痛いのか地面に転がり、足をジタバタ動かして痛さに悶えている。
すると、ずっとやり取りを見ていた、グランツが、口を開いた
「あーあ・・・だからぁ・・・人間の子供は、殺しちゃいけないってぇ・・・。」呆れかえって、やれやれとポーズを取っている。
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