いる。
漆目人鳥
いる。
Bさんが地方から関東に引っ越してきたばかりの頃。
ある日、車で自分の家の近くを走っていた時。
ある家の屋根に妙な物が乗っかっているのが見えた。
『何だろう?』
と思ったが、車の運転中だったし、とっさの事だったので確認は出来なかった。
2、3日して、家の近くでたくさんの花輪が飾られた家があった。。
葬式の花輪だった。
『あの』家だと言うことにすぐに気づいた。
なにか、妙な感じがして、それから暫く、屋根の上が気になってしょうがなかった。
それから二度ほど、近辺の屋根に影をみた。
奇妙なことに、その影を見た家は数日後に。
影をみた家は数日後に必ず葬式が執り行われると言う必然性がある事に気がつく。
『あの奇妙なものは何なのだろう?』
それが屋根の上に見えてから2、3日で葬式があると言うことは、誰かがその家で亡くなった日が、『それ』が屋根に見える日とも考えられる。
ひょっとしたら、この辺だけの風習で、人が亡くなったことを教えるために、そう言うことをするのだろうか?
そうも考えたが、引っ越してきたばかりで近所付き合いもまだ浅いBさんは、常識を知らない田舎者と馬鹿にされるのではないかと、確認することが出来ずにいた。
それならばと、今度見つけた時はよく見てやろうと決めていた、そんなある日。
屋根の上に『それ』を見つけた。
車を停めて、その家に近づき、屋根の上の物がよく見える場所まで近づく。
すると。
そこにあったのは、『お地蔵さん』だった。
お地蔵さんが屋根の上に乗っかって、空の方を見ている。
なんで、お地蔵様を屋根に乗せているのか?それに、どうやって斜めになった屋根にお地蔵様を固定しているのだろう?それにも増して。
「漆目さん……そのお地蔵さん、よく見ると変なんです……」
「変?」
「ええ……。パッと見普通のお地蔵さんだったんです、だったんですが……」
そのお地蔵さんの顔が。
「髑髏(どくろ)なんですよ……。顔だけが石の髑髏なんです」
Kさんはそれがこの世の物で無いと感じ、急いで車に逃げ帰ったのだそうです。
「それでね、漆目さん。私、思うんですよ」
Kさんは言う。
もしかしたら。
「もしかしたら。ほら、葬式が出ると回りで葬式が続くって事があるじゃないですか。
それで、私、人が死ぬと「あれ」が現れると思っていたんですけど、そうじゃなくて、「あれ」が来ると人が死ぬんじゃないんですかね?そんで、「あれ」って一回現れると、あちこち近場の屋根の上を渡り歩いているんじゃ無いですかね?」
あなたの家の屋根の上、大丈夫ですか?
いる。 漆目人鳥 @naname
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