蝉の声を聴きながら

久藤 一夏

第1話

 夏休みとは長いようで短いものだ。存分に楽しみたいのなら夏休みが始まってすぐに(なんなら始まる前から)ある程度計画を立てておかなくては夏休み最終日に恨まれることになる。

 実はこれでも学生な訳で、本業である勉学をせねばならない。

 しかし、何をどれだけやるからということを考える必要はない。

 なぜならありがたいことに例年のごとく大量の課題(いわゆる宿題)が出されるからだ。

 さらに自主的に勉強をすれば尚良いが、親が驚いて腰を抜かしてしまうので今回はやめておくことにする。


 不思議なことに宿題というものはなかなか終わらないもので、毎年やつに敗北してる記憶がある。夏休みのうちに終わるように計画を立てていても、結局最終日に頭にタオルを巻いて徹夜するのは、もはや夏の風物詩といっても過言ではないのではないだろうか。


 宿題をこなす計画を立てる上で大切なものが幾つかある。

 それは、宿題の量と難易度、宿題に取り組める日の把握、一日のうちにどれだけ宿題に時間を当てれるか、いざというときに頼るベストなフレンド、あとはやる気スイッチのonボタン。これがないと始まらない。


 部活をしている人は夏休み前半に全て終わるように計画を立てるといいだろう。

 その日の練習メニューによっては家につくなり泥のように眠ってしまう恐れがあるからだ。そんな日には妖精さんがやらない限りまず無理だ。つまりは、予定は狂う前提で立てるべきといくことだ。


 宿題を終わらすには宿題をしないと終わらない。当たり前だがこれが難しい。机に向かう気力も起きないし、いざ机に向かっても一向にペンは動かない。いつの間にかペンをくわえて虚空を見つめていることばかりというのはいつものことである。

 疲れている日などいつの間にかノートがよだれの海になっていることもしばしば。


 自分を過大評価してはならない。これは非常にたいせつな事だ。

 「明日の自分はやってくれる」とか「来週から」とかは絶対してはならない。

 なぜなら明日の自分も実は今日の自分と同じわけで、出来ないものは出来ない。

 明日に10のことをしようと思うなら、今日6、明日に4ぐらいがちょうどいい。


 準備の段階で勝敗が決まるとは良く言ったもので、宿題においてもそれは同じだ。

 宿題をやっつけるのに最も効果的な戦法がおそらく友達のノートを丸写し(助け合い)である。

 しかし、これは休みに入る前からの下準備が必須である。

 何故ならば最終日に頼ろうと思って連絡をとっても、繋がらない、こっちこそ写したい、君には見せたくない、などで出来ないことがあるからだ。

 全てを一人の友人に頼るのはあまり良くない。問題集ひとつに一人は確保しておくべきだ。

 ただ、そのくらい自分でやれ、自分でやらなければ意味がない、などのド正論(屁理屈)を言うやつもいる。

 そんなときは、じゃあ自分は問題集の前半をやってくれ、俺は難しい後半をやろうじゃないか。とでも言いといい。

 相手はころっと掌を返すことになる。

 それで無理ならその友人はただの知り合いAと認識すべきだ。


 夏休みも最終日に近づき、宿題の量が一向にへらない。

 そんなときは、宿題の提出日に注目しよう。「夏休み開け最初の授業で」回収と、「夏休み開け最初の日で」回収では天と地の差がある。

 最初の授業が、夏休み開け二日後以降のものは後回しにしよう。何故ならば学校でできるからだ。もう宿題をまとめて全部持ってきた人もいるだろう。そんなやつのノートを失敬したらいいだけの話なのだ。

 問題は最初の日に提出のものだ。最初の日に提出のものはその日にはまずできないだろう。あとは完璧という状態にしておくべきだ。


 最終手段としては「やったけど家に忘れました」がある。

 しかしこれはもう、手垢がベタベタになっているほどのベタなやつである。しかし、ほんの少しの工夫で全然変わってくるのはあまり知られていない。

 例えば、プリントが複数枚配られるものは途中の何ページかだけやって、あとは家においていく。そこでいざ提出の時にあたかも今、気が付いたように先生の目の前で慌てて見せたらいい。「すみません!途中すっこちてました!」


 現実逃避はほどほどにして、宿題にとるかかるべきだな。


 外では蝉がやかましい

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蝉の声を聴きながら 久藤 一夏 @Z_atonashi

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