食後に……
「……ノンフィクションは本当に読めないねぇ。小説のようなテンプレートは展開がわかりやすいが、飽きてしまいがちだ。フィクションもノンフィクションも人の数だけ違っていいと私は思うね」
美脚を組み、満足げに笑う。
「さて、今回は『デザート』。これにて物語はおしまいだ。ん? あれから二人がどうなったか? ……これ以上は野暮ってもんだろう? 二人は若い。きっとこれからも喧嘩をするだろう。だが、そうやって人間は成長する。人間は短い寿命の中で色々なことを学ぶ。我々のように緩やかに時間は流れていない。本当にすごいと思うよ。人間の数だけドラマがあるのだから」
後ろからぬっと細い腕が絡みつく。
「ヴァーバラぁ~♪ 」
マリーだ。
「ん? 何だい、マリー」
変わらぬ魅惑的な笑み。
「ヴァーバラはぁ、どっちの機微も勉強不足なのぉ。男の子もぉ、女の子もぉ、ちょっとしたことで変わっちゃうのよぅ? うふふ」
「今回はまだまだ序の口ってことだね」
「うん、そういうこと☆ ……でぇ、ヴァーバラ♪ 」
マリーはヴァーバラの耳元で囁く。
「そうだね。ん? 」
悪魔に使い魔の能力は通じない。
「マリー、超頑張ったでしょぉ? ご褒美はぁ? 」
今度はヴァーバラが笑みを作る。マリーの頭を引き寄せ、形の良い唇に自らの唇を重ねた。
「ん、んぅ……」
マリーもヴァーバラの首に腕を絡め、深く求める。
そんな二人の下から、むすっとしたマルクがぬっと現れる。
「……ヴァーバラ様ぁ、次は絶対俺が行きますからね! 」
ガバリと立ち上がると、ふわっと影になっている場所に飛び込み、そのまま吸い込まれるように消えた。
「……可愛いヤキモチだねぇ」
唇を離すと、笑みを深くする。
「もう! マルクってばぁ、空気も読まないんだからぁ~」
少しばかりむくれるマリー。
「……さて、次はさっぱりとした"前菜"がいいね。次の提供者は誰にしようか」
マリーの頭を撫でながら。すると、奥で扉が開く音がする。
「次の食事がきたようだ。……マルク、マリー、準備を頼むよ」
立ち上がり、狭間から人間界に繋がる『古本屋』に向かった。
おしまい
Gregory Of Storia~恋愛編~ 姫宮未調 @idumi34
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