決着からの第三部 完

 一時間以内にちくわプリンスを倒さなければ、この星が消えてしまう。

 大急ぎで決着をつけるしかない。


「俺たちの本気の本気を見せてやるぜ!」


「精々好きなように足掻いてみせろ」


「バカにするのもここまでよ! フリージングドリル!!」


 巨大な氷でできたドリルが飛んでいく。並の相手ならこれでいいのだが。


「集まれちくわよ。ちくわドリル!」


 ちくわの穴から一回り小さいちくわが現れ、それが続いてドリルのようになっていく。

 ぶつかりあった結果、氷が一方的に負けて砕けた。


「ちくわの可能性は無限だ」


「協力奥義で行くぞ! 必殺異世界チート! おでんの具!」


 俺が縦に割れ、片方が玉子に、もう片方がこんにゃくになる。

 そのまま真ん中にプリンスを挟む。

 同時にサファイアが氷の串で貫いた。


「フリージングランス!」


「くだらん。ちくわであるオレに穴を開けても無駄だぞ」


「だが挟まっているのは事実だ。このままいくぜ!」


 超高速回転を始め、天高く舞い上がっていく。

 サファイアの冷気がさらにちくわを拘束し、同時に地面を氷の棘で埋めていった。

 後は全力で叩き落とすだけ。


「チート&氷結奥義! ちくわ雪崩落とし!!」


「ぬるいな」


 確かに激突し、棘すべてを砕くどころか地面がえぐれる威力だったというのに、何の防御もせず受け切りやがった。


「ちくわ吹き矢!!」


 やつがちくわを咥えると、とてつもない風が俺たちへ飛んでくる。


「危ねえ!!」


「きゃああぁぁ!!」


 ギリギリで避けたが、振り返ると星の輝きが減っている。


「無限の肺活量とちくわの味が生み出す、新世代の吹き矢だ」


 咥えたちくわに息を吹き込んだだけだろう。だが無限のエネルギーがあるプリンスには、それで十分星を破壊できる武器となるのだ。


「なるほど、こいつは封印しないとたまったもんじゃないな」


「どうにかしてチャンスを作らないと!」


「アストラエアの姫よ。お前も封印されるがいい。ちくわ牢獄!」


 ちくわが地面から生えてきて、サファイアを囲む檻となった。


「サファイア!」


「大丈夫よ! 私だって強くなってる。こんなところで負けない! フリージングフラワー!」


 ちくわを氷漬けにしていく。これで檻を支配下に置くつもりだろう。


「愚かな。ちくわは冷めてもうまいのだ」


 串から脱出し、一瞬だがちくわに指示を送っているのが見えた。

 たちまち氷がちくわに変わっていく。


「そんな!? 私の魔法が!」


 俺も二等分されている場合じゃない。急いで合体してちくわの檻を破壊にかかる。

 檻を持ち上げ、下にそっとアルコールランプを配置した。


「点火!」


「火力しょぼ!? 無理だよこれ!!」


「そんな……最大火力だぞ!!」


「嘘つけ!! もうちょっと頑張ろうって!!」


「仕方あるまい。ちくわにはちくわだ! 必殺異世界チート! ちくわUSB!!」


 ちくわ型のUSBを檻に差し込み、ハッキングを開始。

 ちくわをデリートしていく。これでサファイアは助け出せた。

 同時にちくわのデータも手に入れたぜ。


「ありがとうマサキ様!」


「ほう、流石に足掻くか」


 USBを右耳に差し込んでインストールすれば、必勝の計算も楽勝だ。


「足掻くだけじゃない。勝つんだ! 必殺異世界チート裏奥義!」


 地面が一気に焼けていく。こいつはお前の兄弟からヒントを得たものだぜ。


「ちくわ焼畑農業!!」


「まさかこいつ!!」


「そうだ。ここはお前の使うちくわがとれる畑だ!」


「ちくわってそう取ってたの!?」


 ここで止まるわけにはいかない。畳み掛け続けるのだ。

 収穫のため農家が使う車っていうか、稲刈りとかやるあれに乗って、ガンガン残ったちくわを収穫する。


「オレのちくわが……成長する前に狩られていく!!」


「ふはははは!」


「だがすぐに新しいちくわの種を植えれば……」


「必殺お姫様奥義! 氷のマッハ田植え!!」


 何十人もの氷のおっさんが、超高速で氷の苗を植えていく。


「マサキ様、お水!」


「わかってらい! スプリンクラー発動!」


 焼畑農業で出た煙によって、上空の火災報知器が発動。これで畑に水が撒けるぜ。


「よーし! ついでにマサキ様も埋まっちゃいなさい!」


 氷の騎士団に田んぼに植えられてしまった。


「俺もかああぁぁ!!」


「愚かな。マサキを埋めてしまえば、あとは非力な姫だけだ!!」


「どうかな? 俺たちの力を見くびり過ぎだぜ」


 俺と苗たちは栄養を分け与え、受け取り、信頼を育み、協力して一本の大きな木へと育つ。


「チート&お姫様奥義! 氷の世界樹俺ドラシル!!」


 すくすく育った俺という名の木は、天空に輝くメビウスのちくわを貫き、粉微塵に破壊した。


「バカな!? 無限の力の源だぞ!!」


「私たち二人なら!」


「無限なんて超えちまえるのさ!」


「くだらん! 全ちくわが消えたわけではない! 究極ちくわ宇宙艦隊!!」


 ちくわ戦艦が大量に現れ、空を埋め尽くしていく。

 一番大きい旗艦と思われるものに、プリンスが乗っていた。


「最早アストラエアなど、いやこの世界などどうでもよい! オレの全霊をかけて、世界ごと滅してくれるわ!!」


「ならばその前にお前を倒すだけだ!!」


「いくわよマサキ様! 力を世界樹に!!」


 俺が人間に戻っても、俺ドラシルはその場に残っている。

 俺のチートパワーとサファイアの魔力があれば、世界樹をさらに大きくできるのだ。


「くだらん。今度の艦隊は、主砲で太陽すらも吹き飛ばせるぞ! 木が大きくなったからどうだというのだ!」


「木が育つ。それはつまり、木の実がなる。そういうことさ」


 美しい氷の実が、世界樹に実っていく。

 大きくなった実は花をつけ、花びらと種が艦隊に取り付いていった。


「植物の生命力ってのは、侮れないもんだぜ」


 種は根を張り、艦隊を包み込むように成長していく。


「これは……オレのちくわ戦艦が取り込まれる!?」


 やがて艦隊のエネルギーを吸収し尽くし、世界樹へとその力が送られていく。


「植物のみんな!!」


「俺たちにパワーをくれー!!」


「ありえん……ありえんぞ! オレは、オレは最強の存在だ!」


 世界樹のてっぺんに巨大な俺の顔が出現した。口に全エネルギーを集約し、


「認めん! こんなものに負けるほど、このオレは安いちくわではない!!」


「超異世界チート究極奥義! 愛と希望の灼熱砲!!」


 放たれるビームは空を切り、全艦隊を消滅させながらプリンスへと進む。


「なぜだ! ちくわが! オレが負けることなど……ありえんのだあああああああああぁぁぁ!!」


 宇宙を引き裂くほどの巨大なエネルギーは、プリンスの遥か後方にあるブラックホールまでも完全に消し去った。


「やったー!! ついに勝ったー!!」


「ふっ、まったく手間のかかるちくわだったぜ」


 今回は流石に疲れたぞ。ちくわプリンス、あまりにも強い男であった。

 しばらくこんな無茶は避けたい。


「お疲れさまでした」


 ユカリとコノハが転移してきた。


「よく頑張りましたねマサキ様、サファイアちゃん」


「やはりわたしの試練の成果ですね!」


「ありがとうございます女神様!」


「まあなんとかなってよかったよ」


「では星を元の場所へ戻しますね」


 女神の力を使えば、星の転移など容易い。一瞬の後に、見慣れた星空があった。


「はー……帰ってこれたぜ」


「今回は危なかったねー……」


 サファイアと二人でぐったりと座り込む。激戦過ぎた。長期休暇くれ。


「お二人とも無事で帰ってくるなんて、凄いことですよ」


「本当に、いつも不可能を不可解なことで可能にしていきますね」


 ユカリとコノハが褒めてくれるが、正直喜びより疲労が来る。


「俺だってもっとスマートにやれるならそれがいいさ」


 しょうがねえだろ、こんな変な力しか無いんだから。


「でもその力のおかげで、私は助けられたよ。お母様も、アストラエアも、みんな」


「そうですよ。もっと胸張っていきましょう」


「この勝利は間違いなく、お二人の功績です。誇りに思っていいのですよ」


 サファイアたちのおかげで、この力も楽しくなってきたことは事実だ。

 この先何があろうとも、俺たちなら戦える。解決できる。

 そう思わせてくれるくらいには、大切で、感謝もしているのだ。


「そうかい。なら堂々と帰ろうじゃないか。俺たちの家、アストラエアの城にな」


 これからもこの時間が続くように、俺が守っていこうと、そう誓った。


 第三部完。

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俺の最強チートが「ギャグキャラになってハジケる」だったせいで普通のファンタジー世界で1人だけボケるしかない!俺TUEEEが難しいんじゃい!! 白銀天城 @riyoudekimasenngaoosugiru

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