たったひとつの言葉を表現するために重ねる言葉たち。

かったるい男子高校生が、かったるくない女子高校生と出会うことで回り始める、「死に至る病」。
たくさんの言葉を駆使しても、この作品を正しく表現しきることは、出来ないと思う。

例えば「白」。
この作品にいくつ「白」を連想させる言葉が出てきただろう。
美しくも儚く、なのに力強いこの「白」に、何度驚かされただろう。
「白」がこれほどの影響力を持つ作品を、私は他に知らない。
このたったひとつの「白」のために重ねられた、いくつものいくつもの言葉たちが、尊い。
紗を重ねていくように、幾重にも幾重にも。
それほど、印象の強い「白」だった。


圧倒的な表現力と、練りに練り上げた構成力と、文章力に脱帽です。
鳴神さんの作品はいつも、「なにこれ悔しい!!!」と思うよりも先に、「なにこれ素晴らしい!!!」という感情の方が立って、同じ物書きとして「文章に彩を感じる人だ」と、思います。
空なら空の表現、雲なら雲の表現、男子高生なら男子高生の、女子高生なら女子高生の、「絶対的な違い」という限界を知らない表現力が、常に私を圧倒していくのです。
そして感じるのです。
「鳴神さんの瞳に映るこの世界は、一体どんな彩(いろ)なのだろう?」と。

留まるところを知らない鳴神さんの作品には、いつも驚かされます。