それはきっと、夢にまで見た幸せだった。

ショウ

プロローグ

 まず、ボクの過去の話をしようと思う。それはボクにとっての暗部であり、ボクを形作ったものである。



 ボクはいわゆる問題児であった。これはもう定められてることなのだろう。幼稚園の頃はまだやんちゃな子程度だった。


 例えば、授業をよく抜けだしたり、家から三輪車で幼稚園まで言ったり等々。まだその頃は叱られる程度だったように憶えている。だが、小学校へ上がるにつれボクの問題児さがより目立つようになった。


 小学生の頃はそれはもう酷いものであった。酷すぎて細かいことは憶えてないがまあ、忘れ物は酷いは言うことは聞かないわ宿題はやらないわでもうそれはそれは本当に酷い問題児だった。


 ボクの問題児っぷりは酷く、両親はボクを多分嫌っていただろう。今でも憶えている、母の「お前なんて産まなきゃ良かった!死んでしまえ!」という怒声や孫の手でたれる何故か第三者視点の映像。父の暴力。ある時は殴られた。ある時は蹴られた。またある時は髪を捕まれ引きずられた。また、父はボクが問題を起こすとボクを正座させ、責め立て、暴力を振るった。


 ボクは幾度となく死にたいと思った。でも、出来なかった。生きる勇気も死ぬ覚悟も無いままに、ボクは中途半端を具現化したような糞野郎となった。何時からだろう、ボクが諦めを知り、感情を殺し、偽り、自分の黒さを隠したのは。


 ボクは高専に入ってからは自分は特別でも何でもなく、ただの異常だと知り、昔よりは自分の黒さを表に出せるようになった。それはあくまで異常ならば少しくらい自分の黒さが表に出ても今更なんとも思われないだろうと考えてのことだ。それでも、まだ深い所は隠している。


 ボクは中学の頃、毎朝学校で本を読む時間が設けられていた。そしてそれは、ボクが今まで行けている理由とも言えるだろう。ボクはそこで、一つの小説を読んだ。それは当時まだご存命だった香月日輪さんの「妖怪アパートの幽雅ゆうがな日常」という作品だった。その作品はボクに物語の楽しさを教えてくれた。だが、それは同時に現実の辛さをその時は強く感じさせた。


 より現実に諦めを感じたボクは癒やしが欲しかったのかもしれない。もしくは、夜の静寂が欲しかったのかもしれない。ボクはいつしか深夜に散歩する癖が出来た。そして、しばらくしたある日、ボクは一人の少女と出会う。それがボク幸せと、その終わりの始まりだった。

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それはきっと、夢にまで見た幸せだった。 ショウ @show0611

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