046
チチチチチ・・・。
「ねた・・・なぁ・・・。」
ううーーんっと伸びをする。時間を見ると5時・・・か。俺はカーテンを開けて外をみる。ジョギングをしている年配者、犬の散歩をしている人、新聞を配っている人。そんなのを眺めながらぼーっとする。
「あれ・・・俺って、こんな風に朝から黄昏るようなキャラだったっけ?・・・ふっ。なんだろ。バカ見てぇ。」
寝汗がすごいのか、体中が気持ち悪い。少し早いけどシャワーでも浴びるか・・・。俺はベットから降りて立ち上がろうとすると、頭がクラクラとしてまともに立てない。・・・なんだ?貧血か!?俺、貧血なんて・・・初めて・・・なったな。
「ちっくしょう・・・なんだっていうんだよ。」
俺は這いつくばりながら、居間へいき、冷蔵庫を開ける。なんか食うもの・・・。うぅ、気持ち悪い・・・。俺がキッチンでフラフラとしていると、なにごとかと母さんが起きてきた。
「あんた・・・どうしたの!?・・・うわっ、顔色悪いわよ。寝る前そんなに悪かったかしら。」
母さんは俺のおでこに手をやって熱を測る。なんともなさそうなので俺に肩を貸して居間のテーブルへと連れて行ってくれた。
「俺、初めて貧血になったかも・・・。」
「まったく・・・。フフッ。少し待ってなさい。・・・貧血、貧血ね。」
母さんは冷蔵庫から色々な食材を出して、手際よく調理を始める。少しすると美味しそうな匂いがしてくる。母さんは一品を簡単に作り持ってきてくれた。
「はい、ささっと食べなさい。とりあえず、体に良さそうなもの入れておいたから。」
体に良さそうなものって、思いっきりレバーとか入ってんじゃん。俺、レバーは苦手なんだけどな・・・。だけど、まあ、朝早くから作ってくれたんだからちゃんと食べよう。・・・うぐぅ、でも、やっぱ苦手・・・。俺はなんとか無理してでも食べる。すると、父さんが起きてきた。
「なに・・・やってんだ?こんな朝、早くから・・・。」
「あら、起きたの?あなた。優太ったら顔真っ青で倒れてたから体に良いものを作ってあげてたのよ。・・・ふぁああ、私はもう少し寝るわ。・・・あなた、あとお願い・・・。」
「えええ!?お前らがうるさいから起きてきたのに。ていうか、俺のレバー食ってんじゃん。」
父さんが俺の食べている料理を見て文句を言う。俺は食べるか?みたいな仕草をしてみせる。
「ああ、いや、お前が食べろよ。・・・確かにちょっと顔色悪いな。全部食えよ。俺のレバー・・・ああ、あぁ。」
父さんはそう言いながら寝室へと戻って行った。俺は無理やり全部食べきってそのまま横になる。腹も満たされて、寝っころがっているとなんだかまた俺も眠くなってきた。このまま2度寝しちまおう。どうせ、会社とかにいくのに親もまた起きてくるだろうから、寝過ごして遅刻することはないだろう。
「おやすみぃ~。」
俺はそのまま、眠りについた。
「こら!!起きなさい!!!」
俺は急な大声に驚いて起きる。母さんも父さんも会社に行く支度が終わった状態で俺を見下ろしている。
「おい、学校行くんだろ?さっさと支度しろよー。俺はもう出るからな。じゃ、あとはよろしくー。」
そう言って父さんは足早に玄関へと向かい出て行った。
「ちょっとー、私ももう出るんだからぁ。・・・優太?具合が悪いなら休んでもいいからね。ああ、もう、行かなきゃ。じゃ、あと、よろしくー。」
母さんも急いで出て行った。今日は二人とも早い日なのか?
時間を見ると、7時過ぎか・・・。支度して学校行くか・・・。鏡で自分の顔をみたけど、親に言われるほど悪そうな感じはないし、なんだろう。頭がクラクラするのももうないな。あんなご飯を食べたくらいですぐに効果がでるもんなのかな。
「あ、念のためコンビニでも寄って、貧血に良さそうなものを買って食おう。」
俺は支度を済ませ、家を出る。・・・朝日が眩しいぜ。
そんなカッコつけるようなことを考える。ぷっ・・・なんだろ・・・幸せだなぁ。
俺はコンビニを寄ってから、適当に食べながら歩いて学校へと向かっている。なんていうか、色々あったなぁって感じている。花火の日から今日まで・・・。いやいや、たいして日にちは経ってないけど?不思議だ・・・。この数日を思い返すと一番に思い出すのはやっぱり先生の胸の感触だろう。あれは、やばいな。あの柔らかさと弾力。服の上からであんなに気持ち良いのなら直に触ったら・・・。先生って結婚してるんだっけ?あんなの毎晩揉んでる野郎がいるなんて考えたらもう。堪らないよなぁ。・・・俺も、結婚するならあーいう女性が良いなぁ。ひなたともだめになっちゃったし、また好きな人・・・できるのかなぁ?俺はひなたのことを思い出す。俺はなぜか、ひなたに告白をするチャンスを自ら放棄した。いや、放棄しただけならまだいい。お友達でいましょうとかって訳のわからないことを言っていた。どうしてそんなことになったのかは覚えていないのだが、それでも今はそのことに対してはまったく後悔がないのだ。不思議だ。結局、俺のひなたに対する気持ちなんていうのもその程度だったってことなんだろう。俺はそう納得することにしていた。
「友達同士でも・・・いいじゃん。」
「誰が・・・友達同士だって?」
木下が俺を見かけてか後ろから不意に話しかけてくる。
「ななんでもねーよ。」
「なんだよそれ。まあいいや、今日帰り・・・忘れるなよ。遊ぶからなー。」
木下は俺の背中をバシっと叩いて先に校舎へと向かっていった。そうだ・・・木下には借りがあったんだったな。今日か・・・。ま、特に予定もないし、いいか。俺は楽しみで気持ちがウキウキしてきていた。当然、部活はサボリでそのまま直行だ。
俺たちは、学校が終わるやすぐに帰宅をして、着替えて待ち合わせ場所にまで集合をした。俺がついた頃にはみんなが揃っていた。木下にひなたに結城。今回はひなたに加えて結城が参加している。結城は俺がちょっと錯乱状態だったときに俺にハンカチを貸してくれた同じクラスの女子で木下が誘ったのだ。まあ、女子がひなた一人じゃバランスも悪いし、2対2の方がなにかと都合もいいからだろう。俺は結城とはあまり関わりがなかったので、少し抵抗もあったのだが、血をつけてしまったハンカチのお詫びもかねているのですんなりと受け入れた。・・・そりゃあ、今日の遊び資金は俺持ちだから抵抗もあるだろうよ。
いつものカラオケからファストフードで軽食を挟んでからのゲーセン・・・。こりゃ、今月の小遣いなくなるな・・・。
「プリクラ撮ろうぜ!プリクラーー。」
木下がはしゃいでいる。俺たちは例によって前回と同じゲーセンに来ている。機械の場所はわかっているので俺たちは固まって移動していく。とある、クレーンゲームの前を通ると、俺はなんだか気になって、中の商品を覗いてみる。
「なんだこれ?・・・なんもはいってないや・・・。」
「えええ、相沢君?こういうの好きなんだ・・・ちょっと、意外。」
結城が若干引いている。おい、誤解だ誤解。
「相沢は前に一之瀬にお人形を取ってもらって嬉しくて号泣してたもんなぁ。はははっ。」
「うるせー。あれはただ・・・目に埃が入ってただけだよ。・・・ひなたには人形はもらったけど・・・。」
「えええ?そっかぁーー。相沢君・・・こういうの好きなんだぁ・・・。」
結城は俺とクレーンゲームの賞品一覧を見比べているようだ。そして、なんだか残念そうだ。
「しほちゃん、気になるのーー?もしかして、こういう趣味はNGなタイプ?」
「うーーん。秋葉っぽい感じまでいかなければいいけど・・・ごめん!!やっぱり無理かも。」
「はい、相沢フラれたーーー。ざーんねーん。」
「フフッ。別に結城にフラれてもなんとも思わねー。ははっ。」
「なにそれーー。相沢君ひどくなーーい?」
「ははは・・・。」
俺たちはプリクラで数枚撮って、ゲーセンで散々遊び、外も薄暗くなってきたので解散することになった。
「じゃあ、俺は結城を送って帰るから、相沢!一之瀬をちゃんと送れよーー。もうそれなりに暗くなってるんだからな。・・・じゃあなーー。」
木下と結城が家がわりと同じ方向らしいので送っていくことになったので、まあ、必然的に俺とひなたが一緒に帰ることになった。小学校からの付き合いだから家もまあ、そこそこ近いし・・・それ以前に、ひなたをこんな薄暗い時間帯に一人で歩かせるのは本当に心配だからな。
「なんか、楽しかったなーー。なんだろう。久しぶりにはしゃいだな。」
「優太君も木下君もたくさん笑ってたよね。二人って本当に仲が良いよね。」
「まあ、ね。同じ部活だし。いや、クラスは別で良かったな。あいつうるせーから。」
「フフッ。そうなんだ。・・・ねえ、優太君?」
「ん?」
ひなたは俺の横を歩きながら真っ直ぐ前を向いてそのまましゃべる。
「私達って・・・お友達・・・だよね?」
「はは・・・そうだな。もしかしたら幼馴染って言えるかもしれないな。」
「・・・幼馴染かぁ。・・・うん。そうだよね。小学校から顔を合わせているもんねー。」
「ああ、懐かしいな・・・。」
「そうね・・・・・・。」
ん?なんだ?なんか空気が重いような気がする。俺はなにかに不安になってひなたを見る。俺の視線に気づいたひなたは伸びをするように少し先を歩く。
「あの日、私も失敗しちゃったなぁーーー。」
「え?ええ?なになに?失敗?」
「教えてあーーげない。えへへっ。」
ひなたは振り向きながら言う。その姿はまるでグラビアやアイドルのPVでも見るような可愛らしい仕草を見せる。俺の胸がドキっと高鳴っていた。
「・・・ははっ。なんだよ、それ。かーわいい。」
「私達はまだ、・・・これからだもんねーー。」
「・・・そうだな。まだまだ楽しいのはこれからだ。」
俺はそう言って楽しそうに歩くひなたを見ていた。俺の人生も高校生活もまだまだこれからだ。もっともっと楽しくなっていく予感がする。ふふ、明日が楽しみだ。
俺はひなたをしっかりと家まで送り届けて自宅へと帰って行った。
ある日・・・。
俺は目を覚ますと見慣れた丘、見慣れた空、見慣れた景色を目にする。そして、そこには一人の女の子が俺のすぐ傍に座っている。その女の子はまるで異世界の少女とも思えるような服装をしていた。その服装はどこかで見た覚えがある・・・。確か・・・。なにかの魔法少女系のアニメで見たような服、だったかな?
その女の子は俺と目が合うと少し顔を赤らめて、嬉しそうに、幸せそうに可愛い笑顔で俺に向かって言う。
「おかえりなさいませ。私のユウタさま。」
・・・To Be Continued
2つの世界(仮) @taruto777
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