第8話「すべて打ち明けて」


 


 和人は今、そう言ったんだろうか。


「か、和人? 小学生の時……って?」

「なんだよ、忘れたのか? 体質のこと相談したの、三年の時だったろ?」

「それは覚えてるよ。でも……え?」


 和人の言葉に、ある可能性に思い当たり。私は困惑する。

 いや、まさか……そんなはずはない。


「体質って……もっと前からじゃないの?」

「ん? 言わなかったか? あれはちょうど九歳の誕生日だったな。あの日を境に周りの女の子の様子が変わったんだ」

「え、そんな話聞いてないよ? 本当なの?」

「本当だって。なに慌ててるんだよ?」


 慌てもするよ!

 小学校三年、九歳になった時に体質に目覚めた? その時から、15センチ以上近付くと女の子が惚れるようになった?


 和人は四月生まれ。私が相談を受けたのは六月。おかしいと思い始めてから二ヶ月後に相談してきたってことだ。なるほど? 納得できちゃうじゃない。


 ということは……え? それじゃ私は?

 幼稚園の頃から好きだった私はなんなの?


「うん? ……あれっ? ……?? えええぇぇぇ?!」

「な、なんだよ? どうした? おい、大丈夫か?」


 私の中でなにかがガラガラと崩れていく。

 思わずその場に膝を突いてしまった。だって、だって……。


 相談を受けてから八年。私はずっと自分の気持ちを隠し続けてきた。

 本当は好きなのに、体質が効いていないフリをしてきた。


 でも違ったんだ。

 私は八年間もの間……


「うそ、もうやだ……信じらんない」

「知奈……? 泣いてるのか?」


 私、泣いてるんだ。泣いてるところなんて見られたくなかったけど、もういいや。

 隠すことも、冷静ぶって気持ちを抑える必要もないんだから。


 起き上がり、和人の正面に立つ。


「大事な話があるの」

「えっ。……な、なんだ?」

「和人に15センチ以上近付くと惚れちゃうっていうけど、私には効かない話」


 これは私が、和人にすべてを打ち明けるまでの物語。


「でも効かないのなんて当たり前なんだよ。ずっとずーっと昔から、和人のことが好きなんだから」


 そして、告白をする物語だ。

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彼に15センチ以上近づくと惚れてしまうらしいけど私には効かない 告井 凪 @nagi_schier

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