なんだか懐かしい気持ちになる。不思議で、心地よいお話。
素敵な景色といたわりで紡がれた子供の頃の思い出。その中にほんの少しだけ引っかかる、わずかな感覚。この忘れられない違和感こそが、オトナになった私達が今、最も欲している感覚なのかもしれない。
田舎の親戚の叔父さんは、子どもたちにとって、謎がついてまわる存在です。 子どもは、謎を食べて生きています。 とくに夏の子どもは。 自分の思い出の中の不思議・怪奇を探してみたくなる作品です。
恐怖作品を読みたい! という方向けの作品ではあまりないと思います。 この作品の魅力は、メイン登場人物である叔父さんの人柄、『幼少期に過ごした田舎』の持つ独特の色、そしてそこに付随する少し不思議なお話といった部分であるように感じました。 幼き日の長期休暇、田んぼのある田舎、待っていてくれる優しい親戚……そんなノスタルジックな安らぎが得られる、ゆったりとした音楽を連想させる作品だったと思います。
厳格な母、親しみやすい叔父。異質なものを異質なまま受け入れる寛容さは、子供の特権なのかもしれないが、それを失わずに成人したような叔父と少年たちとの交流は、とても微笑ましいものでありながら、どこからし不思議さを帯びています。