From:"Gadget"Finder
長槍
Unboxing!
第1話 meet the "Gadget"Finder
過去について、書こうと思う。洒落じゃない。
あの一年が何の変革を意味していたのか、それはもうわからない。もう僕らは戻れないからだ。
正確さはいらないけれど、本物であったことを確かめなきゃいけない。
深い回想に入りつつあった僕の脳は、”ガジェット“による2017年の初頭までの初期化を受諾した。
僕はもう一度、かの地、かの場所かの日常に戻る。
隔絶。
“Gadget” boot at 2017:06:25:05:31:23:11(outdated)
形容しがたい音楽。僕を覚醒へ導いたアラームは単純な電子音の退屈な連なりではなく、音楽の類だ。しかしこれも聞き飽きたものだ。そうだ。いままでのは夢だったか。こっちが現実だったか。誰しも一回は夢から覚めるとき、あ、こっちが現実か、と思うことがある。特に悪夢を見たとき。でも今日はそんな気分でもない。
そうだ。悪夢じゃなかったな。そう思った時にはもう夢の内容はすっかり抜け落ちていて、でもある一部のシーンが鮮明に残っていたりして、これをふとした時に思い出すと、不可逆的な「夢」というものへの渇望を抑えきれないのだ。
そんなことを頭では考えながらも、体はベッドから起き上がり、朝のランニング用のシャツを着て、先日買い替えたばかりのスマホ(鏡面加工でやたらと指紋が目立つ)をポケットに入れ、無線接続のイヤホンの電源スイッチを長押しし、そのまま耳に宛がった。
(接続が完了しました)
毎回この音声がうるさいな、と思いつつもそれを過ぎれば今季深夜アニメで一番好きな「From:”
もう走っていた。田野は開け、車はこの時間ならまだ少なく、家の前の道路から始まる朝の1.5kmランニングコースはまさしく僕の身に開かれていた。FGFのサントラのおかげか、なぜか僕も物語の主人公のような気がしてきた。ランニング自体はそんなに時間がかからないから、気が付けばもう最後の直線に差し掛かっていた。
僕はあえてペースを下げる。そして歩いた。最後の直線はクールダウンに充てる。筋肉中に発生した乳酸を流すためだ。
しばらく歩いていると、イヤホンを伝って汗が耳の中に入ってきた。しばしばこの問題には悩まされるところだが、とりあえずイヤホン外す以外に方法はない。
その時だった。
「あの、
振り返る。そこには女子高生がいた。だが容姿は常軌を逸していた。まず髪の毛が銀髪で、なんかでっかいヘッドホン?にでっかいアンテナついてるやつを耳につけてるしで怪しさ満点だ。そんなことより!
そもそもそんなことよりなんで僕の制服着てんの?
「
「あの、どちら様かわかりませんがどうして・・あの・・まず・・なんで僕の制服を着ていらっしゃるんですか。」
しばらくの間。
「あ、すみません。着るものがなかったので・・・・すみません!・・・・・・・ダメですか?」
「いやよくないでしょ・・・・うっ」
あることに気づいて反射的に目を右上に反らした。制服のシャツによって、その、胸部の形が明瞭に・・・・とにかくまずかった。
「なんで目をそらしたんですか?」
「いや、何でもないですよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ヘンタイ」
「なんで!」
あまりにも挑発的な気がしたからこいつ殴ってやろうかと思ってこぶしに力をいれ謎の女子高生のほうを向いた。
こいつ、意外とかわいいぞ。殴るのはやめておくか。
こんな状況にもかかわらずそう思い、こぶしの力を緩めた。
「あ、そうだ、835、
「あの、まずは名前を教えてくれ、言っちゃ悪いが、怪しい人の質問には答えられない。」僕は当然の質問をする。
「それは・・・・」
その時だった。謎の女子高生の全身からゆっくりと力が抜け、こっちに倒れこんできた。僕は思わず支えるように抱えるが、脱力しているのか、もう彼女のひざは固いアスファルトの上にあった。
まずい。
僕はすばやくポケットからスマホを取り出し、緊急通報、119番をかけようとする。
彼女のわずかな声が聞こえた。
「そ・・れ。
それ、
それが
途中からそれは叫びに代わり、彼女は立ち上がった。それだけではない。僕のスマホを強奪したのだ!その時!ただでさえ金ピカな僕のスマホが光り輝き、その光筋の一つは彼女の首の脊髄のあたりに吸い込まれていた。輝きは加速的に強くなる。ついに目も開けなくなった。
「な、なんだんだお前・・・!」
「”ガジェット”ファインダーって言えばわかる・・・かな」
“ガジェット”ファインダー。今季人気アニメ
にラスボス級のキャラでそう名乗っていたヤツ・・・・いたようないなかったよな・・・と思ったころには僕の意識は飛んでいた。全くとんだ一日の始まりってやつだ。
From:"Gadget"Finder 長槍 @Long_Yari
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