第12話答え合わせ

 4月1日 俺、東雲南雲(高校2年生)の初めての登校日だ。


 Q春休みは有意義に過ごせましたか?

 Aいや、全く生きてる実感がしませんでした。


 理由は明確。

 黄金文決定戦の話を考えていたから。

 もちろんこの事は北野さんには言っていない。


 Qいい話は作れしたか?

 A作れてたら春休みは充実してました。


 はっ!笑わせるなこんな所でくたばる俺ではないだろう?まだ4月だ5月病にまだ早い!

 俺にならできる!話の鍵は見つけた。


 なんだよ話の鍵って!

 黄金文決定戦の締め切りは5月末まで。

 だから、まだ時間は十二分にある。

 名を上げた先生はベテランから新人まで20人ほどの参加となった。


 この猛者に俺が勝つにはどうしたらいい?

 答えは簡単、面白い話を書けばいい!簡単だろ?

 そう!漫画は面白ければ正義なのだ!

 って誰か言ってた気がする。


 2年生初めての登校日だ、もちろんクラス替えがある。

 俺は何組か確認する、そして俺以外にもう1人『北野美南』の名前も確認する。


 俺はー。


(2年1組か…)


 そして北野さんは…。

 1組に北野さんの名前はなかった。

 そして2組に『北野美南』の名前を見つける。


 ちょっと残念だが、ちょっと一安心(?)


「おーっす!南雲!今年も同じクラスだな!よろしくっ!」


 なんで西園とは同じなんだよ…!!!


 クラスを確認する男子たちの一部で。


「よっし!北野さんと同じクラスだ」


 などとチラホラ言っている野郎が居た。

 ここに拳銃があるなら遠慮なく銃弾をお前の頭にぶち抜いてやろうか!!


 新しいクラスは空気が違うねっ!

 なんて言えるほどこの学校に親しみがあるわけでもなく。

 ただ、今は隣の西園が鬱陶しいだけである。

 だが、友人の1人が同じクラスにいると言うのは心強いよな(精神的に)


 2年生になったからやる事がある。

 うむ…。

 勉強のレベルがクッソ上がった…!!!!


 春休みは基本的に宿題がなかった。

 だが、やる必要のない参考書とプリントが出ていて、先生からあらかじめ予習しておくように。

 と一言ある、だが俺はそんな事は春休み中眼中にない。

 だって原作書かなくちゃいけないじゃん!(書けてないけど)


 開幕の授業に完全に出遅れた俺氏。

 そして、やる事は…ただ1つ。


 俺はスマホを取り出しある人物にメールする。

 内容は決まっている…。


 夕日が沈みかける放課後。

 俺は教室をいち早く出て、学校の校門前で待機する。

 ある人を待つ。


 そして、待つ事数分。

 馴染みのあるあの優しい声、そして役2ヶ月ぶりに聞く声が俺を呼び止める。


「帰り道、そっちじゃないですよ?」


 振り向くと、あの愛らしい顔の『北野美南』の姿が見えた。


「あれ?そうだっけ?俺、帰り道わからないし」


 クスッと笑い、俺を見つめる。

 そして俺もその笑顔につられるように笑う。


「それで、今日は何の用ですか?」


「あれ?メールちゃんと見た?」


「見ましたけど…これ内容ないですよ?」


「書いてるよ、わからない君じゃないだろ?答え合わせをしよう…」


 答えを導いたのなら、答え合わせをする必要があるだろ?

 彼女に伝える必要がある、俺の答えを。


「俺、今度の黄金文決定戦に出るんだ」


「…!」


 彼女もジョーク作家の1人だ黄金文決定戦の詳細ぐらい担当から聞いてるだろう。

 だが俺が出る事は知らなかったらしい。

 だって、言ってないもの。


「有名な先生とかいっぱい出るけど…」


 淡々と俺は彼女に向け話す、真剣な眼差しで俺の言葉を聞き入れてくれる彼女。


「俺その黄金文決定戦で1番を取る…そしたら。君を『北野シンデレラ』先生を迎えに行く…そして」


 お互いの表情は変わる事はない。

 俺が感じ取った、いや気づいた答えを彼女は待っていたはずだから。


「もう一度俺と漫画本物を作ろう!」


 これが、俺。『東雲 南雲』が見つけ出した答え。

 そして、この答えが俺たち2人の本物。

 今この時間も、そしてこれからの漫画家としての時間もかけがえのない本物なのだから。


「………」


 視線の先に居た彼女の瞳からは日が暮れそうな太陽に照らされた光る涙が零れおちる。

 俺が泣かせた、それはわかってる。

 だが、2ヶ月前の偽物の流星を見た時に見せた涙とは意味が違う。


 そして彼女が出した答えは。


「はい…!東雲先生のお迎え待ってます!」


 勝負は1ヶ月後の黄金文決定戦。

 俺は『北野シンデレラ』に黄金文決定戦1位と言うガラスの靴を持ち彼女を迎えに行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

偽物の流星 Shao-しゃお @Shao_rnoge

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ