第27話


彼女の名前は【膤(ゆき)】。

名前のない彼女に、楓くんが名前をくれたらしい。


多分ここは、楓くんの潜在意識。

でも何で他人の潜在意識に僕が居るんだ?

潜在意識って、自分で造り出した世界でしょ?

他人のそれに勝手に出入り出来るもの?


頭の中全方位からハテナ?が飛び交ってる僕に、膤が話しかけてきた。


『アンタハ、何故、ドウヤッテ【ココ】ヘ来タ』


『僕は櫂。どうやって……。えぇと~、それは僕にもわからない。1つ質問なんだけど、ここって楓くんの潜在意識の中なんだよね?』


『潜在意識?』


『そそ。楓くんが造り出した意識の中の世界。』


『……意味ガワカラナイ。』


『えっ?』


『アンタガ言ウ、意識ガ造リ出シタ世界ダトシタラ、意識ヤ記憶ノナイ者ノ世界モ存在シナイダロウ……。』


『意識や記憶がない者? 楓くんて、今はどうして』


『私ガ、ココヲ封印シタ。』

僕の言葉を遮って、膤が話し始めた。





■■■■■





膤の話しを纏めると。


膤は、気がつくとここに居た。

今は、危険な雰囲気満載のここも、以前はキチンと機械やらが動いていて、【何か】を計算したり、作ったりしていたらしい。


僕が想像するなら、PCとかTVなんかの精密機械の中みたいな感じ。


膤は、ただその動く機械の中で過ごしていた。


時々、異常音や光の点滅があると、膤が近くに行くと、正常に戻ったらしい。


きっと、膤の存在自体がここのメイン。


ある日、突然全電源が落ちて、ここが暗闇に呑み込まれた時、小さな光が1つ空中から生まれて、同時に人が現れた。


それが楓くん。

そして、ここへ来て僕が見つけた小さな光が、その時生まれた小さな光らしい。


それが楓くんと膤の出会い。





■■■■■





『楓ハ、ソレカラズット私トココデ過ゴシテイタ。』


『えっ? ずっとここに居たの?』


膤が縦に首を振る。


『眠ル時モ、ズット一緒ニ居タ。』

少し頬を赤らめながら話すとこをみると、楓くんLOVEなのね膤さん。


てことはアレだっ!

もしかして、もしかすると、楓くんと合体もしちゃってたりしてんじゃね!?

羨ましいなオイッ!


僕もクロエとはぁはぁしたいっ!



…………落ち着け僕。




ずっとここに居たって……。

楓くんは、僕のように潜在意識と顕在意識を行き来してなかった?

そんな事が可能なのか?


いや、可能だとしても、僕で例えると、それってずっと眠ったままの状態って事になるよね?


『さっき【ここを封印した】って言ってたよね? 』


膤の身体が少し強張って見えた。


『封印する事は、膤さんの意思だったの? それとも、楓くんが封印してって言ったの? そんな事しちゃったら、もう楓くんと会えなくなっちゃうよね?』


『楓ハ……少シズツ身体ガ弱クナッテイッタ。 一度ダケ、ココカラ居ナクナッタ。戻ッテ来タ時ハ、マタ元気ニナッタケド、ソノ時ダケ……。』


戻った……顕在意識にって事か。


『コノママズット、ココデ私ト一緒ニ居タイト言ッテ……。 私モズット一緒ニ居タカッタ。デモ、アノママココニ居タラ、楓ハ……。』


幾筋もの涙を流して、声を震わせながら、膤は話しを続ける。


『ダカラ、モウ楓ガココヘ来レナイヨウニ、私ハココヲ封印シタ。』


どれだけの苦痛だったんだろう……。

傍に居て欲しい人なのに、ずっと一緒に居たい人なのに、自らの手でその愛しい手を振りほどくって。


本当に愛してたんだろうね、楓くんの事。


『楓くん、突然膤さんと会えなくなって、楓くんも苦しい思いしてるんじゃないかなあ……。』


唇をギュッと噛み締めた後、膤さんがとても可愛い笑顔を見せて言った。



『ソレナラ嬉シイ。』


涙で頬を濡らしながらの、最高の笑顔。


この子の強さと、優しさが、逆に僕の胸に痛く突き刺さった。









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【ダイクロイックアイ】~ 大工がロック!? ノリノリかよっ! そこから僕に訪れた世界 ~ 曼珠沙華 @pissenlit

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