第15話 らしからぬ初仕事
「ヤマウチ様ー!」
頭以外に鎧をまとった、ワニの様な顔をした魔物が僕を呼んでいた。聞けば、魔王の命令で僕を呼びに来たらしい。太陽はもう城の真上まで昇り、朝からの時間の経過を感じさせる。魔王の部屋には行った事があったので、すぐにたどり着く事ができた。ドアを3回ノックして自分が来た事を伝えると、フロウさんの入りなさいという声が聞こえた。
「失礼します。」
部屋に入ると、フロウさんはいつもと変わらない笑顔だった。どうやら大事な用事、というわけでも無さそうだ。
「やあ、ヤマウチ君。体はもう平気かい?」
優しい声で、社交辞令とも言える言葉を繰り出す。
「はい、おかげさまで。それで、どういったご用件で?」
自分でもびっくりするくらい丁寧に返した。もともと口下手な僕には、自分が言った言葉に違和感を覚える程に。
「実は、昨日から続いている戦争がちょっと長引いててね。宰相だが力がある君に出向いて欲しかったんだよ。」
結構大事な話しだった。だが、今の僕はこんな事でうろたえたりはしない。生まれて初めて負った大怪我や、恐ろしい魔物の巣窟で疲れ切った心は、全てを受け入れ始めていた。もうどうにでもなれ。そんな思いが、心の底から湧き上がっていた。
「 それと、流石の君でも1人で数百人を相手するのは疲れるだろうから、お供を付けよう。」
この悪魔(ひと)、僕が疲れなかったら1人で戦わせる気だったのか? 恐ろしい考えをする人だ。
「それで、お供とは? 軍隊でも付けてくれるんですか? 言っておきますが、僕は指揮なんて取れませんよ。」
「軍隊? 違う違う。君のお供は1人さ。」
「1人? じゃあ僕達に2人で戦えって事ですか?」
僕が疲れるかもしれないという理由で付けるお供が、代わりに戦ってくれる兵士では無く、共に戦う戦士。あくまでも早く終わらせて来いという事らしい。
「君に付けるお供はこの軍の幹部であり、最高戦力。」
幹部?それじゃあさっきの会議に出席していた中の・・・
「『曹長』フレイ・バンドルトだ。」
巡る世界を燃やす僕ら 〜業火の火種〜 ウエミヤ @uemiya
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