第2話
ペドロ・バランディンは残虐な男だ。麻薬の廃止を訴えた州議会議員や警察は彼の手によって殺されているし一般市民への残虐な拷問は絶えない。彼の手にかかって殺された者は500を超えると言われている。オーウェンは1つを除いて私怨では暗殺はしない。しかし、この時ばかりは、この男に瞬間だが殺意が湧いた。だが、その手の殺意はすぐに冷めた。代わりに、どう殺すかということがオーウェンの頭の中に入ってきたからだ。ペドロは今までの
携帯が突如鳴った。オーウェンは誰だ?と思った。この番号はオーウェンが全く知らない番号だった。内心警戒しながら携帯を取り電話に出た。
「用件は?」
いつもと同じく冷静にオーウェンは言った。
「軍人時代の同期だったミヒャエルだよ。久しぶり」
オーウェンはミヒャエルという名前を聞きすぐに思い出した。
「ミヒャエルか。久しぶりだな。」
オーウェンは殺し屋になって初めてと言っていいほど嬉しさが溢れてきた。
「ルーカスと喋るのも3年ぶりぐらいか」
グリーンバーグも電話越しでも分かるくらい嬉しそうな声で言った。
「それくらいになるのかな」
「殺し屋業は順調か?」
「それなりにね」
「それなりにしか実績上げてないのなら、そ んなに裏社会で話題にならないだろう」
オーウェンはペドロの会話に引っかかるものがあった。一般市民であれば裏社会など縁もかけらもないだろう。なぜ、裏社会で実績を上げていることを知っているのか、ミヒャエルが今何をしているのか知りたいとオーウェンは思った。
「ミヒャエル、お前は今何をしているんだ?」
「今か?コーヒーを飲んでるぞ」
「いや、そのことじゃなくて、職業のことだよ」
「あー、俺もお前と同じ殺し屋さ」
オーウェンは声に出来ないくらい驚いたが、悪魔でも冷静にオーウェンは尋ねた。
「ミヒャエルは殺し屋なのか?」
「まあ、そんなところ。ルーカスとは違って個人だけど」
グリーンバーグは一呼吸置くと言った。
「そういえば、麻薬王の暗殺依頼が来なかったかい?」
オーウェンは幾分の間頭が真っ白になった。ミヒャエルは自分達のことを監視してるのではないか、オーウェンは不覚にもそう考えてしまった。だが、悪魔でも殺し屋らしく冷然と答えた。
「来たが、それがどうかしたか?」
「それが、俺にも暗殺依頼が来たんだよ。依頼主はミチェル・セグラだろ」
この男は、何処まで知ってるんだ、そうオーウェンは心の中で呟いた。軍人の時のミヒャエルは勘が鋭い方ではなくむしろ明るく指揮を高められるムードメーカーだった。
「あぁ、そうだ」
オーウェンはもう別に隠す必要はないと思い正直に答えた。
「風の噂で聞いたんだけど、ゼグラは優秀な暗殺者に声をかけてるらしいんだ。だから、暗殺成功率100パーセントの暗殺集団にも連絡が来てるのじゃないかと思ってね。連絡した次第だよ」
オーウェンはまあ、監視されてたわけではないかとホッとした。しかし、オーウェンの心には1つの疑問が残った。
「なるほど。ところで、何故、俺の個人の連絡先を知っている?」
少し、緊迫した声で言った。自分の連絡先が流出している、そんなことが殺し屋にあってはいけないからだ。
「あぁー、そんなこと?俺とルーカスには共通の知り合いがいるんだよ」
「誰だ?」
「demonforceのメンバー、マーフィーだよ」
「マーフィって、ライアン・マーフィのことか?」
「そう。マーフィーに教えて貰った」
「あいつめ…人の連絡先はあれ程教えるなと言ったのに…」
「まあ、そんなカッカするなって。ところで、
「風の噂で、聞いた」
「まあ、猛者はそいつぐらいだと俺も思ったんだ」
その話は初耳だったので、オーウェンは少し驚いた。
「まだ、猛者がいるのか」
「あぁ。バランディンは暗殺者対策に優秀な殺し屋を雇ったんだ」
「そいつは誰なんだ」
優秀な殺し屋は世界に五万といる。それだけじゃ、オーウェンでも流石に特定は無理だった。
「そいつはディエゴ・クルーズって言う通名を使っているんだ」
ディエゴクルーズ?あぁ印象に残っている殺し屋だとオーウェンは思った。その殺し屋は顔が誰かに似てると思い印象が強かった。だから覚えている。どちらかと言うと、何故か分からないが悪い印象だ。過去に、こいつとは何かあった、そうオーウェンは確信していた。
「じゃあ、ラファエル・マルティネスって言えば分かるかな?」
オーウェンは奴との関係を思い出した。
まるで、川のように頭の中で過去の鮮明な記憶が流れだす。
三年前の事件。
物凄い速さで記憶が蘇る。
止まっていた時計のように。
「忘れもしないよな。彼こそがジラルディーを殺した犯人だからね」
オーウェンの頭の中には奴の顔と奴が起こした事件しか浮かばなかった。こいつを追って殺し屋業界に入ったのだから。
Assassinate 1 @iltusikikaname
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