第12話
そして、地元を立つ日。
天気はあいにくの雪だった。荷物を両母親にたんと持たされ、桜並木をくぐる。
「全く、ついていない」
はらはらと舞い踊る雪を見て私は言った。
「そう、綺麗じゃない?」
なぜか嫁は楽しげだ。
「そうか?」
私は首をかしげる。妻は指を桜に向けてこう言った。
「見てごらんなさいよ。まるで桜の花が咲いた様じゃない?」
雪で白く染まった桜の木を見上げると、枝の上に雪が積もり、その間から雪がはらはらと落ちてくる。その様子が満開の桜から花びらが落ちる様に見えないこともなかった。
「まるで、二人で上京した日みたい」
まあ、妻は満足そうだ。そういうことにしておこう。
満開の桜並木を二人で歩き家路につく。
冴えない男の話 @yuzuremo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます