第11話

夕食でもその後の団欒でも嫁は私とは口をきいてはくれなかった。ただ、その晩、寝る直前に「ごめん」と一言だけいい嫁は寝た。

その次の日、嫁は今までのことなんてなかったように元気になり、いつも通りの嫁に戻っていた。私のバイトはあと数日は休みを取ってある。もう少しこっちにも残っていても良かったのだが、嫁曰く「これからのことの相談もあるし、何よりお夕食の準備そのままにしてきちゃったから」とのことで、明日には地元を離れることにした。我が実家にも少し立ち寄り事の事情を説明した。我が母は「あんたは昔から女々しいからしゃーない」ととの一言で私に関することはすべて片付けられ、嫁に対して「出来損ないの息子ですがどうか、どうか、見捨てないでやってください」と深々と頭を下げていた。嫁は、はい、と行って母の頭を上げさせた。

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