第20話心の潤い

デンジタイガーを討伐し、病草を持ちガレンさんのいる店に向かった。


「ガレンさんはいるかー?依頼の病草しっかり取ってきたぞー」


すこし大きめな声で呼ぶと、


ボンっ!!!


と、奥の部屋から爆発音がした。


「大丈夫か!」


急いで3人は奥の部屋の方に走ると、そこにはとても広い部屋が広がっていた。

とても神秘的だった。部屋の壁には色んな色が混ざりあっている。床も同様。

黒色の長机が右、左、奥の3ヶ所にある。その上には、たくさんのビンが置いてあり、その中には壁と床の色をした液体が入っていた。その数はパッと見ただけでも数十個ある。

数秒見とれいてから、エプロンの様なものを着ているガレンさんが顔を煤で黒くして立っていた。


「おかえり、剣真ちゃん、シルミーちゃんにキララちゃん。帰ってきたとってことは…」


「あーしっかり取ってきたよ」


そうして、ガレンさんに病草を渡した。


「さすがだわ♪お礼にキスしてあ・げ・る♡」


「ご勘弁を〜!!」


俺はとっさにシルミーとキララの後ろに隠れた。

怖い!本気でされそうで怖すぎる!


「剣真怖がりすぎだよ。顔がデンジタイガーを目の前に怯える産まれたてのダフィみたいだよ?」


「俺の顔は魚じゃねー!」


「シルミーが言ってた通りだったけどね?」


「キララもこのやろ〜!」


「ほんと仲がいいようね。で、報酬の件についてなんだけど、ちょっと時間貰えるかしら?病草を早速使ってあるポーションを作るから」


俺はシルミーとキララそれぞれの方を向くと、2人はうなづいた。


「俺も報酬が貰えればいいから待つよ。それってどのくらい待てばいい?」


「10分くらいだから、店の商品でも見てて時間を潰しててちょうだい」


店の商品を見ているとあっという間に10分は経ち。


「お待たせ♪」


奥の部屋からエプロンを外し、いつもの姿のガレンさんはでてきた。

カバンを肩にかけていた。その中身が気になったが聞かなかった。


「申し訳ないんだけど、この後向かう場所があるんだけど、そこまで一緒に来てくれる?」


「ここまできたし、いいよ」


店から出ようとすると、ガレンさんが。


「そういえば、400万の使い道って決めた?」


「皆一応決めてあるよ」


すると、何かを隠しているような笑みを浮かべ、そーなのねとだけ、言った。






店から数分歩いき着いたのは1階立ての小さな一軒家だった。

すこし昔からあるのか、貧しい。そんな印象を与える家だった。


「すみませーん。この前、病を治すポーションを持ってくるといった店の者ですー」


すると、家のドアが開き1人の老人が出てきた。


「ガレンさんどーも。ん?そちらの方々は?」


「私の友人達です。一緒に中に入れても大丈夫ですか?」


「そうでしたか。どーぞどーぞ」


ガレンさんと家の中に入り、すぐ右のドアを開ける。

するとそこには布団の上に横たわっている小さな女の子がいた。

近づいてみると、その女の子がどんな状況なのかすぐわかった。

シルミーとキララも思わず言葉を失っていた。


「ガレンさん、これって…病ですよね…?」


「そうよ。しかも、相当厄介な病でね。感染はしないんだけど、この病になると高熱、下痢、嘔吐は当たり前、体の身体能力が著しく低下して徐々に弱っていき、最後は声すら出せない状態で死んでしまう病よ。」


俺達3人はそれを聞くと、もう1度その女の子を見る。

何か声をかければいいのか。俺達に出来ることはないのか必死に考えるが何も思い浮かばない。

シルミーが『ヒール』を何回も何回も使うが女の子は顔色一つ変えない。

すると、ガレンさんが。


「じゃあ、おじいちゃん。約束のポーションよ。これを女の子に使えばすぐにでも病は治り元気を取り戻すわよ」


俺達がその話を聞き、喜ぼうとした。

だがまたここで、ガレンさんが話し始める。


「でも、これでも元凄腕の錬金術として色んな冒険者を見てきたわ。私のポーションを使っても命を落とした者。そんな人達は五万とみてきた。そしてこのポーションをただで上げることは今までお金を払った上で、命を落とした者達に差別することになるわ」


ガレンさんは昔の凄腕錬金術の顔付きになっていた。

話し方はいつも通りだ。でも、雰囲気、圧力それが別人だった。


「わかってます。代金は命にかけてでも払います。ですから…」


「その歳で、稼ぐことなんてできるのかしら?私なら信じられないわ。今すぐじゃなきゃダメよ。400万しっかりとね」


おじいちゃんは言い返せず下を向く。

すると、同時にガレンさんは持っていたカバンの中から400万とポーションを出した。

この人は…!!


「剣真ちゃん、報酬はまだだったわね。報酬の400万よ。使い道はもう決めてあるのよね?今すぐにでも買ってきたら?」


そういうと、店を出る前に浮かべていた時と同じ笑みを浮かべ言ってきた。


「剣真…!」


俺の名前をシルミーが呼んだ。

俺がこの後、なんて言うのかもう分かっているのだろう。俺を見て…。


「剣真のしたいようにね」


すると、キララも続いて。


「こういうのも冒険者らしいよね?」


ほんとその通りだよ。

ガレンさんにも上手くやられたよ。


「じゃあ、ガレンさんの言う通り今すぐ買いますか。そのポーションを手持ちの400万で買わしてもらうよ」


下を向き、涙をも流していたおじいちゃんが顔をパッとあげた。


「冒険者さん…こんな見ず知らずの私達のために…。ありがとうございます。ありがとうござい…うぅ」


「泣くのは孫の笑顔見てからだぜ。ほら、このポーションを早く飲ましてやってくれ」


おじいちゃんは慎重にポーションを片手に女の子の首の下に手を置き、ポーションを飲みやすい体制にした。


「ほら、これを飲みなさい」


ゆっくり、ゆっくり女の子に飲ませていく。

そして、ポーションが無くなると…。


「おじいちゃん」


女の子が声を出した。久しぶりに声を出すせいか、掠れている。

だが、おじいちゃんにとってそれはどんな音よりも心を潤してくれる物だったのだろう。

おじいちゃんと女の子はお互いに、泣いていた。幸せそうな笑顔のまま。


「こんな所に長居するのも悪い帰るかっておい!」


隣では、シルミーとキララがもんのすっごい勢いで泣きながら、お互いを抱き合っていた。


「2人とも泣くなよ。俺は涙脆いだからそういうのダメなんだよ」


「「うわわわわわわんんん」」


「あーもう。ほんとに。な?1回止まってくれないと。グズ。お願いだから。グズ。うぅ」


「ほんと仲いいわね。フフ」


――――――――――――――――――――

第20話。

自分らしくない、感動回。(?)

結局400万は手に入らずでした。まあ、どっちにしろ話はかけるのですが、こっちの方が楽かな?と勝手な判断です。

最近忙しく書くペースがほんと遅いのですみません。

できるだけがんばります。

読んでいただいてありがとうございます。

ではまた!












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世界よ!俺に刮目しろ! 魔王似の勇者 @Yuno0415

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