第19話病草 後編

デンジタイガー。身長は2mほど。姿はタイガーそのもの。別名:力バカ。

別名はふざけているだろと思うだろ。

だが、その攻撃力の高さゆえに、薙ぎ払うように腕を動かせば「真空刃」が生み出される。それに当たったものは、切られたことに気づかないほど綺麗に切れる。

また、遠くから撃たれた魔法を尻尾を振り払い消した。など、その攻撃力は常軌を逸している。

それが別名の由来だ。

他のステータスが低いデンジタイガーは自分からは行かず、病すら治す、この病草をエサにして獲物を待ち構えるそうだ。


デンジタイガーは今、病草の周りをぐるぐる回りながら、獲物が近くにいないか見ていた。

茂みに身を隠れている俺達にはまだ気づいていない。

ステータスを奪える俺はやつにとって、天敵であろう。

だから、やつが回る時こちらに背を向けた瞬間、戦闘開始だ。

その前に…。


「キララはまだモンスター避けのポーションは残ってるだろ。それをシルミーとキララの2人で使っておいてくれ」


最小限の声で伝えた。

2人はコクリと頷き、ポーションを使った。


今回実際に戦闘するのは俺1人だが、もし2人が気づかれ、標的を変えられる。それが最も最悪なパターンだ。それを無くすための策だ。

これで準備は整った。

しかし、まだこの異世界にきて間もない俺は心のどこかで逃げ出したい気持ちが少なからずある。

ドクンドクンと緊張しているのがわかる。

やつが少しずつこちらに背を向けるにつれ、その音は大きくなる。

あと、少し…今だ。

心臓の音は今だ大きいまま、俺は地面をけった。



「略奪!!」


デンジタイガーがこちらを向く1秒前に俺は攻撃力だけを奪う。

デンジタイガーが腕を薙ぎ払い、「真空刃」を生み出そうとする。

しかし、何も起きない。

それに驚いてできた隙を俺は見逃さなかった。


「うおおおおおおおお」


腰からロングソード左手で抜き、そのままデンジタイガーの隣をすり抜けながら横一直線に斬る。

尾の隣まで来ると、それを余っている右手で掴み、シルミーとキララがいる茂みの逆方向に投げ飛ばす。気にぶつかるが攻撃力を奪った状態で投げ飛ばしたため、勢いが止まらずいくつもの木を折っていった。

ここまでにかかった時間は12秒。

15秒経ち腕に疲れがくる。


「やったのか…?」


倒れる木々を見て、そんな希望をもつ。

遠くからも、喜びの声が聞こえる。

しかし…。

やっぱただじゃ終わらせてくれませんか。

倒れていた木々の中で[光った]。

その後にデンジタイガーが起き上がり、こちらを睨みつける。

ゾッと悪寒がはしる。その時にフッと頭の中で、俺の首を刎ねると『直感』した。

俺はすかさず、しゃがむ。すると…。

頭の上で、何かが通った。


「なっ!」


攻撃力が戻ったデンジタイガーが「真空刃」を放ったのかと思っていた。

だが、デンジタイガーは20メートルほど離れていた距離を目の前まで詰めていた。


「遅いんじゃねーのかよ!」


つい、叫ぶ。

予想外のことが起き、冷静さがかける。

落ち着く時間はなく、次の『直感』がよぎる。真上から手を振りかざされる。

俺はすぐに横に跳ぶ。

すぐ隣でデンジタイガーの腕が通った。

次の攻撃はしっかりと見ていた。が、速すぎて目で追えていなかった。


「ッ!!」


嫌な汗をかく。

略奪はまだかと思う。だが、まだ時間は5秒ほどしか経っていなかった。

自分だけ、他の次元にいるかのように感じた。

『直感』で避けることはできる。だが、俺のステータスで体がしっかり追いつかないかもしれない。

そんなことを考えてると、次の『直感』がくる。真横からの攻撃の後に、真正面から左手で殴られる。


俺は跳ばずに前へ突っ込んだ。

賭けであった。しかし、上に跳ぶと横からの攻撃を避けても、真正面から殴られ死ぬ。

そう『直感』がいった。

だから、あえて突っ込み、懐に潜り込んだ。

あと1秒。

最後のだと思われる『直感』がくる。

懐にいる俺を、そのまま押しつぶそうと倒れてくる。

俺は『直感』がきたと同時に懐から出る。

ズドーンとさっき俺がいた位置がデンジタイガーに潰されていた。

そして、残り…0。


「略奪!!!!」


デンジタイガーから2度目の攻撃力を奪う。

すぐ目の前にある、やつの体にロングソードを刺す。


「負けるかーーーー!!!」


ロングソードを上に上げる。

大量の血が宙に舞う。


「ガアアアアアアアア」


デンジタイガーが叫ぶ。

畳み掛けるように、ロングソードを斜め上から斬る。

デンジタイガーが反撃しようと爪でひっかこうとするが、それを勢いに任せて太い指ごと切り落とす。

そして、痛みで緩んだデンジタイガーの右胸にロングソードを刺す。

そして刺したまま左にロングソードを力を込めて動かす。


「うおおおおおおおおおおお」


ロングソードがデンジタイガーの左胸の横から出る。

そして、デンジタイガーは声を上げすにぐずれ落ちる。


「はあ、はあ。今度こそやったよな」


とてつもない攻撃力を奪った反動がくる。


「剣真ーーー!!」


遠くでずっと息を潜め隠れていたシルミーとキララが走ってくる。

俺の近くにくると、同時に。


「ヒール」


シルミーが回復させてくれる。

さっきの反動が綺麗になくなり身体が軽くなる。


「他に怪我ない?」


「ああ、大丈夫だ。またせたな」


「ほんとに焦ったんだから!でも、無事でよかった」


ほんと無事でよかった。途中、デンジタイガーの攻撃は『直感』がカンストでなければ、間違いなく死んでいただろ。


「しかし、デンジタイガーは遅いんじゃねーのかよ」


「そのはずなんだよ。だから、あんな窮地に陥るはずはないと思ってたんだけど」


でも、少しだけ俺には心当たりがあった。

あの木々の中が光った時だ。その後、デンジタイガーは起き上がり、急激な速度で俺の元に来た。

あの[光]がなにか関係しているか。

でも、戦った後だし考えるのはまた今度にするか。


「じゃあ、無事にデンジタイガー倒せたし病草取って帰りますか」


「「おおーー!」」


病草はデンジタイガーが獲物をつるために欠かせないため、傷つかずに済んでいた。

そして、病草を採取を成功した。


「あのさ、まだ2人ともモンスター避けのポーションの効果残ってるよな?だから俺を間に挟んで帰らないか?残ってるポーションを使ってもいいけど、貴重だしさ」


なんの下心もなく俺は言った。

そう!下心なんかなんもない。モンスター避けポーションをとっておくために仕方なくだからな。


「下心丸出しなとこは見逃してあげるよ。ほら」


下心なんていう幻覚が見えているのであろう。そう解釈し俺は躊躇いなく2人の間に行く。


「もう少しくっついて!俺はポーション飲んでないんだか!」


「「調子のんな!!」」


そう2人に怒鳴られ、1番活躍した冒険者は帰りに一言も声出さずに依頼主のガレンの元に向かった。





ある冒険者がデンジタイガーと戦っていた場所から少し離れた位置にある女性はいた。


「魔法でデンジタイガーのステータスを上げましたが、それでも冒険者はデンジタイガーの攻撃を全て避け、勝ちました」


丸い形をした通信機で連絡をしていた。


「そうか。やはりな、面白いことになってきたな」


連絡している相手は不敵に笑う。


「引き続き監視を頼んだ。なんなら、殺ってもいいぞ」


「了解でございます。『魔王様』」


――――――――――――――――――――

第19話デース。

夏ですね。最近暑くて暑くて溶けます。

嘘です。

今回は自分的にはまだまだ書けたと思います。

でも、それをなんて言い表せばいいのか分からず。すみません。

最後はまあ、ノーコメントで。

次回はのんびりさせます。てか、させてください!

では、読んでくださりありがとうございます。


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