第18話病草 前編
親ダフィと初めて戦った日から1週間。
俺達は親ダフィのクエストを毎日のように受け、レベルとスキルの経験値を稼いでいた。
そんなある日…。
「そろそろ親ダフィのクエストじゃ飽きてきたな」
ギルドの中にある机に寝そべるような体制でつぶやく。
「だよね〜、冒険をしたいっていうか、もっとハラハラしたいっていうか」
俺のほんの一言にシルミーが返す。
「冒険者なんて、こんなもんだよ?逆に親ダフィって経験値だけじゃなくて、金銭的にも美味しいクエストだよ?贅沢言っちゃだめだよ」
キララがごもっともなことをいう。確かに、スキルは上がらないがレベルの方は少しずつあがっている。
でも、自分が想像してたのと違うからな〜。
「あら、剣真ちゃんじゃない♡ちょっと話があるんだけどいいかしら?」
ふっと、後ろから悪魔のような声が。
振り向きたくないです。逃げたいです。
「あら、無視?酷いわよ剣真ちゃ〜ん」
さすがは元凄腕の錬金術と言われるだけあって、逃げるのに10秒といらず、ギルドの隅に追い込まれた。
助けてと叫ぶが、周りの冒険者は見て見ぬ振りをし、避けていった。
そうして、あっけなくガレンさんの話を聞くことにした。
「ある薬草をとって欲しいのよ〜」
「ある薬草とは?」
ガレンさんと1番長い縁のあるキララが聞く。
「病草よ」
「病草!?!?」
キララが大きな声を上げた。
ギルド中に広がった。そのため、いろんな冒険者がキララのことを見る。
恥ずかしかったのか、キララは顔を赤くしている。
「その病草ってなんだ?そんなすごいものなのか?」
「すごいってものじゃないよ!どんな賢者でも、病は治せない。でも、その病草があればどんな病でも治せる。超レアなアイテムだよ!」
「そうなのか。それは凄すぎる。でも、なんで俺たちにそのクエストを?ガレンさんなら、腕利きの冒険者なんて、たくさん知ってるだろ?」
「いいとこつくわね剣真ちゃん。実はその病草の周りには必ず1体とんでもない攻撃力をもつモンスターがいるのよ」
「そのモンスターの名前は…?」
「デンジタイガーよ。名前の通り、虎のような姿だけど、尻尾が三つあるの。その尻尾をふり、攻撃するんだけど、もしその攻撃にあたりですれば、死ぬわ」
いま、死ぬって言ったよね…。
この異世界に来てまだしたいこといっぱいある俺に死ねって??
「じゃあなおさら…」
「なおさらよ。逆にいうとデンジタイガーは攻撃力以外は全て平均並。つまり、略奪者である剣真ちゃんが攻撃力を奪えば、ステータスがほぼ平均の剣真ちゃんが攻撃力で上回り勝てるってことよ!」
「よーし、表にでろ。いっぱつ決めてやる」
「剣真ちゃんはおもしろい冗談言うわね。いっぱつってあっち?私はか・ま・わ・な・い・け・ど♡」
「調子乗って、すいませんでしたあー!!!」
俺はすぐさま土下座をした。
元とはいえ、さすがは凄腕錬金術だった、ガレンさん。精神的にもこんな攻撃力をもっていたなんて。
そう、おびえる俺を無視し…。
「でも、なんで病草なの?ガレンならどんな回復のポーションを作れるでしょ?」
「それは病草を取ってきてたら話すわ」
すこし、暗い感じがするな?
気のせいか?
「じゃあ、報酬はどのくらい出すの?」
それにガレンさんは、にっこりとし。
「400万でどう?」
「「「400万!!?!?」」」
そうして、俺たち3人はガレンさんから、クエストを受け、病草に向け歩いていた。
ガレンさんから、病草を採取できる大まかな位置を教えてもらった。
そこは街から少し離れた樹木の奥だった。
「ほんとにモンスターに出くわさないね」
シルミーが呑気にいった。
だが、ほんとにそうなのだ。
実は、病草を取ってもらいにいくのに途中で他のモンスターと戦ったら疲れるということで、ガレンさんからモンスターよけのポーションをもらった。
冒険らしい冒険はできていないが、いまは、だ。
あと少しで、とんでもないモンスターと戦う。
ワクワクする。だが、1つ不安がある。
攻撃力、一極のデンジタイガーの攻撃力をどれだけ奪えるかだ。半分以上奪えればまだ勝機はあるが、そうでなければ最悪死んでしまう。
最近レベルがあがっているかといってもなあ〜。
「やっぱり奪える量で悩み事かな?知能が高いあたしにはだいたいわかるよ」
シルミーが顔を覗いて聞いてくる。
「そうなんだよ。今回のは俺が奪える量で成功できるか、失敗するか決まる。だから、必ず成功させるにしたいんだよ。でも、どうしてもおもいつかなくて」
「そーだね。今回は私とシルミーにできることはあくまでサポートまでだし」
キララが不安な顔でいう。
冒険者として1番経験値があるキララは、なにもできない自分に少し、苛立っていた。
「じゃあさ!奪えるステータスを2つなのを1つだけに集中して奪えば?今まで剣真はステータスを奪う時は1つ奪っても、もう1つ奪えるようにしてたでしょ?どーかな?」
前のダンジョンの時といい、シルミーの発想には驚かされる。
俺が考えてることの常に斜め上をいく。
「た、試してもいいか?」
そうして、シルミーの方を向き…。
「略奪!うおおおお!!」
シルミーのステータスの中で1番高い体力を奪った。
すごい体力だった。
どれだけ走っても今なら疲れないだろう。
そう思えるほど、シルミーから奪った体力の量は多かった。
「さすがはシルミーだな!こんだけの体力があるなんて、さすがに奪いすぎたか?」
俺はそう聞きながら、シルミーの方を向くと…。
ピンピンしてた。何事も無かったように。
「結構奪われたよ。すごいね!半分にいかないぐらいだけどね」
俺はもうこれ以上なにも言わなかった。
「じゃあ、そろそろ着くよ。剣真、奪える量は増えても時間は短い。奪った攻撃力ですぐ倒してね」
「言われなくても、わかってるよ。シルミーも大丈夫か?」
「うん、今回はサポートだけど、がんばる」
「じゃあ、いくぞ!」
――――――――――――――――――――
第18話です。
今回は久しぶりに戦闘回への話でした。
次回は剣真が大活躍する話です。
乞うご期待を!(これ言ってみたかった)
では、また!
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