第2話 魔装

グランツ・ランドルフは痛みに呻きながら、目を開けた。

(ここは・・・・・・樹の上?)

グランツ自らこの樹の上に登った記憶は無い。列車の爆発で吹き飛ばされたのだろう。

「ティル、索敵」

グランツは自らが契約している使い魔、ティルピッツを呼び出し、索敵魔法を使わせる。

「敵性反応、無し。ティル、ビスマルクの損傷個所確認」

ティルピッツ。水色の水晶で出来た躰に赤い左目と緑に輝く右目をした仔竜型の使い魔。それがビスマルクのスラスターユニットの後ろに設置してある箱の中に入る。

「損傷個所なし。ティル、待機状態」

ティルは少し寂しそうな顔をした後、すぐさま躰を丸めてビスマルクの後ろにある箱に戻っていく。

「まずは合流するべきか」

トントンっと指で樹を叩く。するとグランツの周りに生えていた木々が独りでに動きだし、緑の生い茂る枝を足場としてグランツが地上に降りるのを手助けする。

「はあ、早く帰ってアイントプフを食べたい」

~~~

「こちら、リーパー1。リーパー3、リーパー9、応答せよ!」

松本密林地帯を半場過ぎた場所で、緋乃アスカは無線機片手に憤っていた。

先程の列車の爆発により装備の大半を失いつつも、アスカは目標地点に到着した。

「なぜ応答しない」

密林に吞まれた旧市街地が一望できるその丘には8人近くの隊員が集まっていた。

魔装中隊の規定数は16人。しかしこの場にいるのはその半分のみだ。

「このままキョウトを待ち伏せする。総員、戦闘準備―――――――――」

――――――――ズドン!

丘に向けて何かが投擲された。それはすぐさま爆発し、土埃と炎を巻き上げた。

~~~

「最悪だ。何が最悪かって?そりゃこの状況全てがだ」

グランツは現在、鬼100隊に囲まれていた。

鬼。キョウト帝国の所持する生物兵器。特殊な加工をした呪装弾や、A相当の魔法攻撃でもない限り死ぬことの無い肉体強度と、軽戦車ならば片手で持ち上げられる程の力を持つ、人ならざるもの。

「まさか、列車の爆発から逃れたと思ったら鬼共に囲まれて絶体絶命とは・・・・・・本当に最悪だ!」

グランツの声に合わせて、装備されていた鎧型魔導兵装、ビスマルクが起動する。

左肩部に装備された対大型魔装用3連装魔導砲、両腰部に装備された、毎分1000発の貫通呪装弾を吐き出すフルオートリコイルガン、背部と腰部に取り付けられたスラスターをパージし、16連装誘導ミサイルと接続する。

4本の補助用副腕は近接用のスタンハンマーや固定用のアンカーパイルではなく、過収束式魔導ランチャーに切り替える。

挙げ句の果てには、一切接近戦を想定していないであろう超大型魔導加速砲『ドラゴンブレス』の片手射ち。脚部の固定用アンカーで自身を固定していなければ、反動で吹き飛び兼ねない。

「援軍など期待しない。俺一人で、生き残る!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

裏切り者達の戦争 ベクセルmk. 7 @rokuroku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ