星の輝きよりも強く強く。

おわらないしあわせを。

「みそら! 早く!」

「待ってよ、あかり!」


 二人の子供がじゃれ合うのを眺める。


「転けるなよ、二人共」

「つばさじゃあるまいしー」

「そうだそうだー」

「何をー! 生意気な餓鬼共めー!」


 鬼ごっこに加わると、きゃらきゃらと声を上げて逃げ惑う子供ら。微笑ましく、それでいて胸の内側には仄かな切なさも宿っているのが分かる。


 あれからボクは星守り人として最初から存在していたかのように改ざんされた世界で、二人が転生してくるのを待った。星守り人としての生活は厳しくも楽しいものだった。

 輝族との生活も、割かし楽に楽しめた。彼等はきちんと規律さえ守れば必要以上な干渉もしてこなかった。それに何より、人の為に星に祈る特権を得、生まれ来る命を祝福するのはボクにとっても幸福以外の何者でもなかった。

 改ざんにより御門の家も落ちぶれることもなく、ボクの元の名は「御門つばさ」となっていたが、今はその名前も失われている。


「つばさー!」


 二人の声に意識を今に戻す。


「こら、姫星きせいと呼びなさいって言ってるでしょ」

「だって姫って感じじゃないんだもん!」

「どっちかって言うとつばさは王子様だよね!」

「お前らぁ!」


 可愛らしい二人組はきゃはは、と笑って逃げていく。

 あの二人はボクが地上へ戻ってから五年後、同じ日の明け方と夜更けにそれぞれ星に守られて戻ってきた。何のしがらみもない家庭で、だが家同士の仲の良さもあって、二人は赤ん坊の時からの幼馴染みに戻れたのだ。

 二つの家庭が連れ立って星の加護を受けに星守の塔へ訪れた時には、感動の余りつい涙ぐんでしまった。命名を任されたので、元の名をそれぞれ授けてやると、二人の赤ん坊は手を握り合ってきゃっきゃっと笑った。


 それから更に五年が経った今、彼等は当たり前のように星守の塔へ遊びに訪れ、ボクを「つばさ」と呼ぶ。覚えているのかと問うたが、何も知らないという。


「ねぇみそら、もしお星さまにお祈り出来るとしたら、何をお願いする?」

「うーん。あかりが幸せでいられるようにお願いする」


 その言葉にドキリとした。が、そんなボクの心配を吹き飛ばすように、少女が少年を叱り飛ばした。


「だめでしょ! 一人の幸せなんてお願いしちゃだめなんだよ!」

「えー、じゃあどうすればいいの?」

「そんなの決まってるじゃない! ねぇ、つばさ?」


 星は巡る。同じように、命も巡る。

 覚えていなくても、憶えている。


「そうだね、簡単なことだよ」


 祈ろう。全てのしあわせを。全ての眠りと目覚めを。星よりも強く強く輝く、命の為に。

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星にねがいを。 空唄 結。 @kara_uta_musubi

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