あとあがき
“あとがき”と入力しようとしてミスりました。
なんか面白いのでこのままにしときましょう。
商都ニーヌヴのイメージは水の都ベネチアで日本なら大阪です。
王都カスタリスはフィレンツェで、日本なら京都と新宿をいっしょにしたような感じ。
“暗殺者”の話で影姫の章は大阪弁を使いたくて、3ヶ月くらいネットで調べたりメモったりしていまいした。
以下は、『顔なき影なる暗殺者――そして、無垢の影姫と賢明にして残念な王女』第2章“影姫の物語”の冒頭です。
※スプラッタにつき注意されたし。
ワレワ……レ。
自分、オレ、僕……。
コレ……コノ体。
私、あたい、あたし。
――あたしは誰?
暗い。とても暗い。
何もみえない。
うち……うちなー。
あんときからずっとな。
ずうと、恋しとんのや。
ここ……どこ?
暗い。ずっと暗い。
ずうっと、ずうっと、暗い儘。
あたし、誰?
満たされてたとおもってたのにいまは空っぽだと気づいた。
体がさむい、心がこごえる。
ピチャッ、ビチュッ。
グチャッ、グジュッ。
音がする。
何かを食べる音だ。
柔らかいけど少し苦い。
だけど甘い匂いがする。
ゾヒュッ、ズチュッ。
ぞふりと身振いするような、おぞましい快楽と罪悪感。
ああ、あたしが何か食べてるんだ。
仔猫が瞳を
しだいにものが形をなしてく。
体、屍体。倒れてる。ちぎれかけた首。
布、衣服。青い晴着、ずたぼろで。前がはだけてる。
爪、鉤爪。引き裂かれ。破れた
ぼんやりと思い出す。
うちはルシィーリア、十五歳。
商都ニーヌヴの薬種商の娘。
届け物の帰りやった。
何かに襲われたんや。
捕まり引き込まれ。
狭い路地の行き止まりみたいだ。
逢魔が時、黄昏時をすぎて、闇の落ちるのがはやい。
季節はたぶん秋の終わり。落葉の頃だ。
気に入ってた細いリボンは解けて血と泥に
仰向いた少女のそばかすのある顔。空色の瞳が硝子玉みたく虚ろに
うちの顔や。
これはあたしだ。
うちが喉を
あたしはあたしの臓物を引きずり出して
いいえちゃう、そうじゃないせやない。
じゃ、あたし誰?
商都ニーヌヴの乞食娘 壺中天 @kotyuuten
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