赤ちゃんはまず、さまざまなものを口で感じ取り、世界を知ります。主人公・諒も今、まさに次の世界の入口に立ち、それを感じ取っているところでしょうか。背伸びをした官能的な場面も、自らを取り巻く世界への苛立ちも、みずみずしく描かれている作品です。きっと主人公の性格上、何もしていないはずなのに、唇に鮮やかな赤を感じ取ってしまうのはなぜなんでしょうね。
文章からも話からも独特の色香のにじみ出る端正なお話です。母の香水、夏の熱気、縁側の風、アスファルトの匂い、そういったなんとも言えない匂いを文章から感じ取れる、胸うずくような恋のお話。――ただ、誠司さんは殴っておいていいとおもうな?
「ぼく」、が誰だかわかる時には、もうせつなさが伝わって。魅力的な母がすきだけど、あこがれだけど、でも反面自分を否定してしまう程に、眩し過ぎてしまう。自由奔放に、自分の思うがままに生きているように見えた母も実は、二人の想いを感じ取っていた。「恋の話」の最後に、この作品に出逢えたことに感謝してしまう夜。
一人称が「ぼく」の女子高生の語りで書かれていて、今時かと思いきや、どこか古風な、色気を兼ね備えた文学の香りのする作品。多感な年頃の少女が見つめる、母親、好きになった人、そして、自分……ネット小説では珍しいタイプで、縦書きの本で読んでみたい、とても雰囲気のある作品です。是非、ご一読していただき、暑さと気怠さを感じ、指の先端からも漂う色気に魅了されながら、作品世界に酔いしれてみてはいかがでしょう?
ぼくっ子女子高生の諒は、叔父さんの事が好きなのですが、好きである理由を考えているのがすっごい愛くるしいんですよ。(後ほど明かされますが)シチュエーション・キャラクター共にとっても素敵で、これを短編で収めてしまうのか!?と思ってしまいました。短編らしい、ぎゅっと詰まった面白さ。おすすめですよ〜!