10-2 エピローグ
ガラニア諸島支部の入り口には二人の男が立っていた。
「お疲れ様です」
晴一朗はそう声をかける。銭元が言っていたボディーガードなんだろう。日本人を見たのは久しぶりだがわざわざ声をかけるほどではない。晴一朗は足早にその場を去ろうとした。
「あ、セーイ!」
その時サリナが駆け寄ってくるのが見えた。晴一朗は男たち同様に
「お疲れ様です」
といって立ち去ろうとしたが、サリナは晴一朗を追いかけてきた。
「セイ、今日の夜はフェスティバルだよ、行かないの?」
「アイシャルナは昼には終わると聞いていましたが?」
「それは通常のアイシャルナの話だよ。今夜はスペシャルなんだ。みんなで島を救ったお祝い」
正直晴一朗はそんな面倒な祭りに行く気すら起きなかった。何が悲しくて今一つコミュニケーションが取れない人々とわざわざ酒を飲まないといけないのだ。
「そうだとすれば、僕がいくわけにはいきません。ことの発端は先輩が起こしたことです」
という言い訳である。
「そんなことはないよ。セイのおかげでみんな助かったって言ってるよ。セイはこの島のヒーローっていう存在になったんだよ」
「たとえ周りがどう評価しようと、その後の態度で謝罪を表します。日本人はそういものです」
そうじゃない日本人もたくさんいる。つまりそういう言い訳なのだ。
これは絶対に晴一朗はいかないなとなんとなく察したサリナは、方向を転換することにした。
「じゃあ、セイ、今日はうちにおいでよ。マザーたちに村のヒーローを紹介したいし」
「お断りします。呼ばれる道理はありませんし迷惑になります」
「えー、サリナのマザーのディナー真に美味だよ」
「そういう問題じゃないかと」
「オーケー、セイ。じゃあ今日はサリナがセイの家に夕飯をつくりに行ってあげるよ。実はジャパンのごはん勉強してたんだ」
「なんでそうなるんですか。というかサリナ、前から思ってたんですが、サリナは本当に家に連絡しているんですか? なんかそれらしいアクションがあまり見られない気がするんですが」
「あ、スイルだ。ヘーイ、スイルー!」
サリナは晴一朗の話を全然聞いてはくれない。だが晴一朗にはそれくらいの相棒の方がちょうどいいのかもしれない。
サリナの声を聞いたスイルがこちらに駆け寄ってくるのが見える。うしろにはもう一人ヒューマンフラワーがいる。
晴一朗とサリナは今後もこの島で事業開発を続けるだろう。ゴールドラッシュ改めモンスターラッシュ探しはようやく軌道に乗ったところなのだ。
モンスターラッシュ ~ビジネスチャンスはバケモノの背中に埋まっている~ 深山 浩志 @Shinzan_Kouji
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