路、此処に在り。
水無月くるみ
路、此処に在り。
彼に、二つの選択肢が与えられた。
祝福と呪い。
どちらかを必ず選ばなければならなくなった。今後一生祝福を手にするのか、呪いを手にするのか。
彼は迷った。
よく考えてみればこの選択肢には、他物に影響を与えるものなのか、それとも受動的なものなのか、はっきり示されていないのだ。
要するに、祝福を選べば、自分が祝福を得続けると同時に、他人にも祝福を与えることができる。呪いの場合も然りだ。
どっちが自分にとってメリットとなるか。
論点をそれだけに絞るなら、やはり祝福を選択した方が良いだろう、と彼は結論づけた。
呪いを採ったなら、憎いと思った人を好きなようにすることができるが、それと同じだけ自分も呪いの効果を受けてしまう。
しかし祝福を選ぶなら、自分も他人もお互いに幸せな結果が待っていることになる。
なんだ、迷う必要もないではないか。
彼は選択に迷った最初の自分に対して毒づいた。
そして。
「我に、祝福を」
彼は、択んだ。
自分が望むものを手に入れた。
しかし。
択んでしまったのだ。祝福を。
択んでしまったのだ。間違いを。
自分が導き出した答えを口にしたその瞬間、彼は息絶えてしまった。
何故か。
答えは最初から決まっていたのだ。
彼は絶対に呪いを選ぶべきだったのだ。
何故か。
彼自身が、「呪い」そのものだったのだ。
誰かを呪い、また呪われる存在が、どうして祝福を手にして良いだろうか。
それは世の摂理に全く反することだ。
だから彼は死んだ。
当然の報いを受けたのだ。
このように、世の中には祝福を選ぶことのできる者はいない。
何故なら、誰もが彼のように「呪い」そのものだからだ。
人に害を与え、憎み、嘲り、そしてそれと同じだけ自分も非難を受ける。
そして、呪いの掛け合いに耐えきれなくなった者は、祝福を追い求め、死への道を順当に突き進むことになる。
呪いの中に埋もれ、足掻きながらも生きている人の中で、自分だけ祝福を願うなど、到底許されてはいけない行為だ。
故に、その者は社会から抹殺される。
これは、彼も含め、我々が生まれた時から定められた、運命のレールなのではなかろうか。
だったら私は、敷かれているレールの上をせいぜい暴れ楽しもうではないか。
そう心に決め、今日を生きている。
路、此処に在り。 水無月くるみ @sh0un4121
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