第10話
「永久に愛することを誓います」
ウェディングドレスを身につけた彼女は、仏壇の前で白いレースの内側で微笑んでいた。
白いレースをまくりあげ、指輪の箱に手を伸ばした。淡い水色の宝石が乗った指輪をつまんで自分の左手薬指にはめこむ。
「次は誓いのキスですね、なんだか恥ずかしい」
雰囲気を楽しむため珍しく化粧を施した彼女の頬に赤みがさす。遺影を両手で包むように持って額面の彼の顔を熱い視線で見つめた。
瞼が閉じて唇を合わせる。本物の彼の唇を感じた気がして、幸せに満ちたせいか時が止まったように彼女は感じた。
唇が離れると彼女は淑やかに口を開く。
「幸せでした、あなたに出会えたことが。喜びでした、あなたの彼女なれたことが。楽しみでした、毎回のあなたとのデートが。安らぎでした、あなたの傍にいられるたげで。そして幸せです、あなたと新しい未来を歩めるから。喜びです、こうしてあなたの妻になれたから。楽しみです、毎日あなたの傍で生活できるから。安らぎです、あなたと一緒に人生の最期までいられるから……だから私はあなたを一生涯愛すると、何度でも誓います」
一息に言い終えると、遺影を胸に抱きしめた。
「いつまでも私の隣で愛し見続けてね、あなた。私もあなたの隣でいつまでも愛し見続けるから」
彼女に聞こえていなくても彼は彼女を抱きした。もう彼女に姿を認められなくても、もう彼女に言葉を告げられなくても、もう抱きしめることができないと知っていても、彼は彼女を抱きしめた。確かに愛を交わした。
「わかった。俺はいつまでもお前を愛してやるし、隣で見続ける……いや見守り続けるの方がいいか」
どんな悲劇があっても彼は彼のまま、そして彼らしい契りの言葉だった。
もしも神様がいるのなら、彼も彼女も愛を知らなかっただろう。とはいえこの結末も慰めの方便に過ぎないの、かもしれない。
死んだ恋人と愛し合うことを誓えますか? 青キング(Aoking) @112428
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