第24話 第2部 完
今回、フラキさんに「見て覚えろ」の修行をお願いしたのはお姉ちゃんだった。
そしてお姉ちゃんとフラキさんと、何とハナコ様まで組んで
私が自分で新魔法を使えるようになるために作戦を立てたらしい。
「なによそれー。私、本当に本当に悩んだのに」
力が抜けて道場の床にペチャンコ座りをした。
私の前にいる、フラキさんとお姉ちゃんを見るとニコニコ微笑んでいる。
フラキさんってそんな顔出来るんだ。
あー、騙された。
「タロウ様なんて思いっきりフラキさんの悪口言ってたのよ。なのにグルだったなんて!」
「あ、タロウくんはこの件知らないから」
「え?」
「タロウくん、多分嘘つくの下手だから。今回の件は何も知らないのよ」
という事はタロウ様の言葉は本物?だとしたら、え?ちょっとまって、確かあの特殊帷子はタロウ様がハナコ様にお願いして作ってもらったと言ってたはず。
なのに何故、フラキさんが帷子の事を知っているの?
私はその疑問をフラキさんにぶつけてみた。
「ハナコさんからサチを励ますためのものをプレゼントする提案をタロウくんに促したんだ。彼はクーパー商店のファンだろう?今、再生産になった特殊帷子の事を知ってるはずだからそれを注文したがると踏んだんだ」
「詳しいですね、タロウ様がテレビショッピングが好きな事まで知っているなんて。しかもテレビショッピングの事も詳しそう」
「俺もクーパー商店のファンだからな」
得意そうにフラキさんは言う。
ああ、そうですか。フラキさんもエレナさんのぱゆんぱゆんのお胸のファンですか。
そんな事言ってないのに、騙された腹いせに脳内でフラキさんをムッツリさんに仕立てて気を紛らわした。
「特殊帷子って何なんですか?何か特別な効果があるって事ですよね?」
「ああ、クーパー商店の特殊シリーズは願掛け商品なんだ」
「願掛け?」
「特殊シリーズの物を装着したら、目標に思っている事を達成出来るまで脱げない仕組みになっている」
「えーーー!じゃあ私が今回は、たまたま魔法が使えるようになったから良かったものの、使えないままだったら帷子を脱げなかったという事ですか?あ!だから私が昨日帰ってきて、帷子を脱げていたから魔法が使えるようになったと分かったんですね?」
「ああ、そうだ」
ひどーい。フラキさんたちはもちろん、何も知らないタロウ様まで私が魔法使えなかったらずっとあの帷子着てろって思ってたの?
私を励ましてくれた温かい心配りに感動してたのに。
「みんな、サチを信じてたのよ。タロウくんなんてきっと一番信用してたはずよ。だから私たちの思惑通り、特殊帷子を注文したんだろうし」
お姉ちゃん分かってない。タロウ様はただ、特殊シリーズが買いたかっただけよ。前のグローブは書い損ねたと言ってたしね。
私はすぐにでもタロウ様に文句を言ってやりたかったけれど
お姉ちゃんが水魔法と土魔法の種類と精密度を上げる修行を始めるというので
また私は神妙に修行モードに入る事にした。
フラキさんの笑った姿や私を騙したタネ明かしを聞くと、つい気が緩みそうになるけれど、まだ修行は終わっていない。
だから私は気合いを入れ直したのだ。
「ふぅ、サチ、それがあなたの良いところよね」
今回は、真面目過ぎるが故にみんなに助けてもらって大変だったけれど
私はやっぱり自分を律していたい。
土岐高丸の家を継いだ者だからこそ、ね。
仕上げの修行を終えたら一人前として認めてもらえる。
そうしたら私とタロウ様は、もっと本格的な依頼も受けていく事になるだろう。
さて、お姉ちゃんとの修行を頑張らなくちゃ。
第2部 完
勇者さまはテレビショッピングがお好き ピューレラ @natusiiko2
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