Arts_Resistance
まさ
プロローグ
「はぁ、、、はぁはぁ、にっ、兄ちゃん!早く!!!」
僕は兄ちゃんと2人で死にものぐるいで町の中を走っていた。
目の前に広がっているのは倒壊した家や僕と同じように必死に逃げ惑う人達だ。
そう、僕達はヤツらから逃げている。
この世のものとは到底思えない異形の生物、その名はアーツビースト。
人々が作り出したモノを吸収し自分の武器にして、町に来ては僕達人間を殺しにくる。
「アラタだけでも逃げてくれ…!俺はもう…」
「そんなのダメだよ!一緒に逃げるんだ!!」
兄ちゃんは逃げている最中に瓦礫のせいで足を怪我していた、歩くので精一杯であるにもかかわらず走っていた。
しかし、とうとう限界がきてその場に座り込んでしまった。
「兄ちゃん、、頑張れ…!あと少しで…!」
僕は兄ちゃんに肩を貸して何とか立たせて歩き始める。
兄ちゃんは大事な家族だ、事故で父と母を亡くしたその後、まだ小さかった僕の面倒をずっと見てくれてたのが兄ちゃんだ。
僕には兄ちゃんがいなきゃダメなんだ、だから…何としても生き延びるんだ。
そんな事を思いながら歩き続けるが、現実はそう甘いものではない、すぐ後ろにいるヤツらの咆哮を全身でビリビリと感じる、ダメだとわかっていてもつい振り返ってしまった。
僕達の後ろにいたのは2体の小型アーツビースト。
犬のような見た目をしているが身体からは標識と思しきものが二本腹のあたりから横に飛び出ている。
標識のポールには大きなトゲがついていて、非常に歪な形をしているために動きにくいだろうと思うがそれは僕にとっては十分な脅威だ。
逃げなければいけない状況だが、僕は恐怖から体全身が震えその場から動けなくなってしまっていた。
「ど、どうしよ……兄ちゃ…」
次の瞬間2体のアーツビーストは僕目がけて飛び交ってきたが、後ろから服を引っ張られて、数メートル派手に転がって塀にぶつかった。
「いてて、、」
多分引っ張ってくれたのは兄ちゃんだ。
間一髪助けられて僕はアーツビーストがいる方を見る。
「に、兄ちゃん……?」
「アラタ……お前だけは、、無事で……いてくれ……」
僕を庇った兄ちゃんの体にはアーツビーストから飛び出したポールが深く体に入りこんでいて、足元には大量の血溜りができて赤く染まっていた。
アーツビーストはポールから兄ちゃんを雑に払い落とし僕の方ににじり寄ってくる。
僕は目の前で起きた惨劇に混乱してパニック状態になり、さらに溢れ出す涙で視界がぼやけてまともに周りが見えなくなっていた。
もう死ぬしかないと絶望した時、黒く大きな物体がアーツビーストに直撃し、アーツビーストはよろけて体勢を崩しその場に倒れた。
突然の出来事に僕は正気に戻り、腕で涙を拭って辺りを見渡すとアーツビーストを踏みつける男1人が目の前に、そして2人の男が僕の隣に立っていた。
「もう大丈夫だ、僕達が守るからね。」
タレ目でメガネの男は僕に穏やかな口調で声をかけてきて、僕の周りにドーム状の透明なシールドを展開した。
「えー、こちら神田班、2体のアーツビーストを確認、ただちに破壊する。」
『了解』
何かしらの通信媒体からノイズ混じりに声が聞こえた後、1人が両手に刀を出現させたと思うと、地面を強く踏み込み凄まじい速さでアーツビーストに向かっていった。
アーツビーストも飛びかかったがいとも簡単に躱されて、懐に潜り込んだ男は首筋に一太刀入れた。
アーツビーストの首から小さな爆発が起きたと思った次の瞬間アーツビーストの体がまるで溶けていくかのように消えていき跡形もなくなってしまった。
アーツビーストを踏みつけていた男の方はアーツビーストの頭を手に持っていて、アーツビーストは動く気配はなく死んでいる、完全に力で制したという事がひと目でわかった。
「報告、神田班2体のアーツビーストの破壊完了、そして子供の生存者がいた。こちらで保護する。」
『了解、何としても生存者を無事にこちらまで連れてきてくれ。』
男はまたもや通信している、その時聞こえた会話からして僕は保護されるようだが、どこに連れていかれるのだろうかと少々不安になっていた。
「え、えと…ありがとうございました…でもお兄ちゃんが…」
僕はシールドを出してくれた男に礼を言う。
男は道端に転がるお兄ちゃんの亡骸をチラッと見て悲しげな表情を浮かばせる。
「君のお兄さんを助けられなくてごめんね…君のことは僕達が責任を持って保護するからそこは安心してね。」
兄ちゃんが僕を庇って犠牲となり、僕だけが生きているということに申し訳なさと唯一の家族を失った悲しみは計り知れないものとなっていた。
そして僕は今までの緊張の糸が切れて気を失って━━
□ □ □ □ □
目が覚めると僕は見知らぬ部屋のソファに横たわっていた。
「あれ、、僕はいったい…」
「良かったぁ、やっと目を覚ました…いきなり気を失うもんだからビックリしちゃったよ。」
僕のそばにいたのは、あの時助けてくれたあのメガネの人だった。
「ここはどこなんですか、、そしてあなたは?」
「アーツレジスタンスの本部さ、ここは安全だからもう怖がる必要はないよ、あと僕の名前はカオル、アーツレジスタンス神田班の1人さ」
「アーツレジスタンス……」
「そう!アーツレジスタンス、これ以上地球から人が住む場所を奪われないようにヤツらと戦って世界中の人達を助けているんだよ。」
僕はアーツビーストにお兄ちゃんを殺されて心に深い傷を負った、できることならこんな悲劇は繰り返されるべきではない、ほかの人が悲しむ事がないようにと、そう感じていた。
「カオルさん…ぼ、僕も……」
「ん?どうしたんだい?」
うつむきながら言っている僕の顔を覗き込んで様子を伺ってくるカオル。
「僕も……」
アーツレジスタンスになれますか?━━
Arts_Resistance まさ @mssndayo
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