帰りのバスにて

帰りのバスに乗り込む。

「じゃあみんな揃ったね。今からバスは出発します。眠いと思うけど、最後バタバタでまとめられなかったから三年生から一言ずつ話をさせて下さい。」

小林先輩

「ますは皆さんお疲れ様でした。正直、今回は自分がやってきた3年間の中で一番キツかったです。でもこの経験はいつか糧になると思ってます。一年生は信じられないくらい頑張ってついてきてくれて、凄く成長したと思います。二年生は貫禄すら出てきて、闇雲に頑張るだけじゃなくてどこに意識をおくか、といった発展的な練習の仕方が出来ていたと思います。合宿が終わっても休む間もなく公演に向けて練習が始まるし、辛いかもしれないけどみんなで乗り気っていきましょう。ありがとうございました。」

伊藤先輩

「皆さんお疲れ様でした。あまりかっこいい事は言えないので手短に。1年生・2年生の後輩達、3年生の同期全員がこんだけの練習が出来たんだから今後も同じレベルの練習が出来るということだと思います。慢心することなくやっていきましょう。最高でした!」

三井先輩

「お疲れ様でした。正直私は三年生と言いながらダメダメで‥苦しくてキツくてやらなきゃいけないと分かってるのに全然出来なくて‥いっそ来なかった方が迷惑をかけずに済んだんじゃないかとか考えて‥でもみんな見捨てないでくれて。励ましてくれて。こんな私についてきてくれて。素敵なメンバーに囲まれたとしみじみ実感しました。本当にありがとうございました。こんな私ですが、公演もよろしくお願いします。」

氷川先輩

「お疲れ様でした。私は公演に出られないし、これから先のイベントも出られないと思うので、これが最後の大きなイベントかなって思ってます。正直、めちゃくちゃキツくて来なきゃ良かったって思ったし、一年生は辛すぎてみんな辞めちゃうんじゃないかって思いました。でも最後の学年ごとの発表を見ていて、全員が真剣に逃げずに向き合って練習したことが伝わってきて涙が止まらなかったし、あんなにキツかったはずの合宿の時間がもっと続けって思うようになりました。もちろん実際に続くのは別問題だけどね笑。けどこの最高の仲間達と最高の時間を過ごせたことは一生の思い出になるし、これから進もうとしてる道で頑張れそうです。ありがとうございました!」

添島先輩

「みんなお疲れ様でした。今回は佐伯のドS根性が凄まじくてとっても大変でした。でも下級生もみんなついてきた。それって同じ方向を向けていたって事だと思うんです。様々な環境で育った人達がつながりをもって同じ方向を向くって奇跡的だと思います。この経験を忘れずに次のステップ次の目標に向かって進んでいきたいです。ありがとうございました。」

皆川先輩

「全員で甘やかすのもなんなので私はあえて厳しい事を言わせてもらいます。今回見に染みたと思うけど、上手くなるって大変な事です。基礎を固めて身体の動かし方を覚えつつ、実践でそれを活かせるだけの身体作りと頭を鍛えなければなりません。それは生半可な事ではないと分かったと思います。それでも途中で妥協したり手を抜いたりした人はいたはずです。その人達は自分で分かってるはずです。ちゃんとやっていた人に差をつけられていることを自覚した方が良いです。サークルなんだからって考え方もあると思いますが、やるからにはちゃんとやって良かったなと思えるようになって欲しいです。だからあえて言います。まだまだやれる、まだまだ頑張れる。ありがとうございました。」

優子先輩

「皆川の後やりづらー。みんなお疲れ様でしたー。私は全員が全員持てる力を振り絞って頑張ったと思ってます。だけどついてこれなかった人もいると思います。その人達は次は同じメニューをこなせるレベルに、出来た人達はさらにキツくなってもこなせるレベルにこれからステップアップしていきましょう。一・二年生はまだまだ先は長いです、一緒に頑張りましょう。」

真島副代表

「お疲れ様でした。今回は身体を鍛えているようで、心を鍛えていたんだと思います。自分がしんどくなった時にどう頑張るか。どう鼓舞していくか。自分の力だけで頑張れる人もいたと思います。周りに引っ張られて頑張れた人もいたと思います。言い訳して頑張れなかった人もいたと思います。でもしんどくなった時に自分がどういう反応をするのかは全員学んだと思います。精神的にキツいって事はこれから先もずっと続くと思います。その時に自分をどういう風に保っていくかを今回の経験を活かして考えて貰えたら嬉しいです。今日はゆっくり休んで、明日から次に向けて取り組んでいきましょう。お疲れ様でした。」

佐伯先輩

「みんな眠いと思うので手短にー。3年生のみんなが言った事が全てです。それぞれ響いた言葉、響かない言葉、納得出来た事、納得出来ない事あると思います。それぞれの感受性に任せて、明日以降の練習に活かして下さい。合宿だけ頑張って明日から元通りでは何の意味もありません。是非次につなげて下さい。では、おやすみなさい!」

寝られる訳がなかった。涙が止まらなかった。先輩達はこんなにたくさんの事を考えていたのに、自分はちょっとついていけたくらいで調子に乗っていた。先輩達に近づけたつもりでいた。でもまだまだ信じられないくらいの差があった。自分達が三年になった時にあんなかっこいい事言えるのだろうか。先はまだまだ長いなぁ。

ふと山本と目が合った。

山本も泣いていた。

山本が凄く愛しく思えた。

山本に向けて思わず手を伸ばした。

そこには15cmの距離があった。

僕はまだ山本に触れる資格なんてない。

恋愛はいつだってフリーダムなのに。

─公演編に続く─

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フリーダム @sera

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る