第11話 主役?(エドワードクリーン)

「で、エドワードクリーン。お前はその事件を調べて何がしたい?」エスカフの表情はさっきよりも邪悪だった。そしていまだに私を殺すつもりでいるのだろう。ちらちら協会の後ろの窓から何かが反射していた。たぶんライフルか飛び道具で私を狙っているのだろう。


「・・・・・・・・・私はこの案件はこの国アガサドールにもいつか脅威になると感じております。そして最終的にはエスカフ様の脅威にもなるかもしれません」


そういうと、エスカフはまるで馬鹿らしいと感じているのか、にやにや笑ってきたのである。

「お前はそのたかだか低級の国民の殺人事件がこの世界の王の中の王であるわたしの脅威になると考えておるのか?馬鹿らしい、なんてばからしいものだ。なあ、エドワードクリーン。私は一応お前を評価している。だからこそ私の直々の推薦でこの国の住民になれたのだぞ。この国は良いところだろう。なんでもある。働かなくてもいくらでも食事もあり、服もあり、寝る場所もいくらでもある。そしていくらでも女も抱ける。どうだ、エドワード。何かこの国に不満はあるか?ないだろう!ならばそんなくだらない事件なんかほっといて私の指示通りに監査していればよい。そんな殺人事件は私は興味もない」そう言うとエスカフはそのまま娘のミランと一緒に別棟に行ってしまった。


「良かったですね殺されなくて」私の背後から大臣が話しかけてきた。

「死ぬかと思いました」

「でしょうね、私もエドワードクリーンさんのお墓の手配をしようと準備しておりましたが、どうやらそれはしなくてよさそうですね」そう言うと大臣は「少し私の部屋に来てもらえませんか?」と言ってきた。


そういわれてエドワードクリーンと大臣は城の3階に行き、大臣の部屋に行った。


「少し待っていてください」そう言って大臣はエドワードクリーンにコーヒーを出した。

「いただきます」

「どうぞ」大臣の部屋はたくさんの蔵書や写真が飾られていた。そこにはシンソウに関連する本、マイトクラスに関連する本、サイハテンに関連する本、ソクラテスに関連する本が置いてあった

「・・・・・すごいですね」

「そうでしょう、私はもともとソクラテスの人間で学者だったのですよ」

「はあー、ソクラテスの人間だったのですか。それはやはり賢いのですね」

「そんなことはないですよ。ただ人よりも探求心が強かったのであなたみたいにエスカフ様に推薦されるほどの功績は残せましたが」


「どのような学問をしていたのですか?」

「心理学ですよ」

「心理学ですか。それはまた難しい学問ですね。確か心理学はまだ学問としては成り立ったばかりのはずですが」

「そうですね。まだまだ人の心理は未知の分野が多いですね」


「私はですね、この分野こそ世界で一番面白い学問だと思っています」大臣は身を乗り出すように私に言ってきた。

「そうなんですか。あいにく私は芸術のほうばかりなので学問にはどうも疎いもので、その、学問の何が楽しいのか面白いのかがよくわからなくて」


「そうですか?学問は楽しいですよ。私はこれほど面白いものは今まで出会ったことがないですから」

「そうですか・・・・・で、それでなぜ今回私を部屋まで呼んだのですか?」そう言うと大臣の表情が険しく深刻な表情になった。

「私はですね、エドワードさん。今回の事件は何かしらの人の心理が働いていると思っているんですよ。それは無意識の領域に近いものかの知れません」


「無意識ですか‥‥ユングやフロイトぐらいなら読んだことはあるのでそこらへんは何となくわかりますが。無意識と今回の連続殺人はそんなに関係ありますか?」


「そうですね。私はこの事件は何か裏で誰かが糸を引いているような気がして仕方がないんです。そしてその人はきっとこの世界の経済、いや世界そのものを憎んでいるんでしょう。今回の事件はまだ実験段階なのかもしれません。そしてこれからエドワードさんが言っているように世界中がパニックになるのかもしれません」

大臣は恐ろしい表情?もしくは興味を持っているのか?その表情は奇妙は表情だった。


「大袈裟ですよ。私はただ知り合いが巻き込まれたからそれを何とかしたいと思っていただけです。実際エスカフ様に言ったのはほんとにそんなことはないと思っています」


「そうですか、ですが私個人今回の事件は興味があります。ですので、私直々に今回あなたに監査を依頼したいと思っております。私直々ならばエスカフ様も反対はされないでしょう。どうでしょうか?」


エドワードクリーンにとっては予想外の返答だった。だが、願ってもない頼みだった。

「お願いします」エドワードクリーンはその返答に答えた。かくして彼はこれから4つの国の中に行くことになる。昔の友人と知人に会いに。






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