第4話 予想外の救済者の巻

 ワンダフルマンが電車から降りてから二時間が経過しようとしていた。ワンダフルマンはホームのベンチに腰掛け、電車の往来をボーっと眺めていた。そのとき、アナウンスが入りその直後ホームに電車が入ってきて、やがて停車した。電車から二人降りてきたのをワンダフルマンは横目で確認する。

 白髪交じりのおじさんとその娘と思しき女性。ワンダフルマンは二人の行方をなんとなく見ていた。後姿が誰かに似ている気がした。

 ワンダフルマンが二人の存在に気づいたときには二人は既にホームから姿を消していた。ワンダフルマンは急いで二人の後を追った。


 「すいません」

 二人の姿を認め、声をかける。

 「何じゃ?」

 おじさんは振り返ると不思議そうにワンダフルマンを見つめる。

 特徴のある下膨れの顔に鼻の下の白髪交じりの髭。

 「ジャムおじさんですよね・・・。すいませんが助けてもらえませんか」

 迷惑は百も承知であったが、アンパンマンの作中で見た聖人のようなジャムおじさんであるならワンダフルマンを助けてくれると期待をしていた。

 「ハッハッハッ、これで何度目かの」

 おじさんは急に笑い出した。 

 「残念ながら、ワシはジャムおじさんではないんじゃ。ジャムおじさんに乗っかったマーガリンおじさんじゃ」

 「・・・」

 二人の間に沈黙が訪れる。

 沈黙を破ったのは、マーガリンおじさんだった。

 「お困りなんじゃろ?困った人をほっとくわけにはいかないな。そうじゃろ、ジャム子」

 マーガリンおじさんの隣に立つバタ子さんそっくりの女性はコクリと頷く。

 「ウルトラ街に行きたいんじゃろ?」

 核心を突かれてぎょっとするワンダフルマン。その様子を気にも留めずマーガリンおじさんは話を続ける。

 「ワシの息子もオーディションに向かったから知っているんじゃ。どうじゃ、正解じゃろ?」

 「その通りです」

 「なら、話は早い。ワシについて来るといい」

 マーガリンおじさんはそう言うと駅を出て、駐車場へと向かった。


 ワンダフルマンは車に揺られていた。

 マーガリンおじさんの好意でウルトラ街まで連れて行ってくれることになった。ウルトラ街まではそれほどかからないらしい。

 「本当にありがとうございます。このままオーディションを受けずに帰ろうと思っていたところで・・・」

 「気にせんでいい。ワシも若いころはヒーローを目指したものだから、気持ちは分かる。若い芽は摘みたくないしの」

 「絶対にヒーローになります。このご恩をいつか返しに行きます」

 「そうか、それは楽しみにしておくよ。ワシの息子ともどうか仲良くしておくれ」

 「はい、分かりました」

 ワンダフルマンは外の景色に目を向けた。さっきより都会らしい風景になっていることに気づいた。

 「もうすぐウルトラ街に着くからの」

 マーガリンおじさんはマーガリン号のハンドルをギュッと掴み直した。


 30分もしないうちにマーガリン号は停車した。

 「ここから会場まではあるいて直ぐじゃ。頑張るんじゃぞ」

 「ありがとうございます」

 「あとこれを持って行くんじゃ」

 マーガリンおじさんの手にはお守りが握られていた。ワンダフルマンは再びありがとうございますと言うと、お守りを受け取り、車を後にした。

 

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MANS 神父SON @emina12

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