第3話 ヒーローオーディションへの巻

 仮面マンが街中を走り回り、オーディション会場を聞き出したときには既に日が暮れていた。場所はワンダフルマンがいる街ーヒコウ町から東に100kmほどいった場所にあるヒーロー星第二の都市でありウルトラ財閥の本拠地がある街ーウルトラ街で行われるそうだ。

 ヒコウ街からは急いで移動しても一日はかかる。オーディション開催日は二日後であり、日程に余裕はない。


 「仮面マン、準備は出来たか?」

 「俺のヒーロースーツがここに置いてあったはずなのに見当たらない」

 仮面マンが指差したそこには大量の雑誌が積み上げられている。

 「その服装で十分だろう。急がないと間に合わないぞ」

 「こんな汚い服装で受けても、受かるものも受からないぞ。お前も一緒に探してくれよ」

 確かによく見ると仮面マンの服には黒い染みなどが散見される。

 「そもそも下水道にそんな大事なもの置いておくからだろう」

 ワンダフルマンの言うとおりである。仮面マンは積み上げられている一番上の雑誌を手に取り、下水道の壁に投げつける。

 「おいおい、そんなに怒ることないだろう」

 ワンダフルマンは急な仮面マンの感情の変化に驚きを隠せなかった。

 「先に行ってくれ。俺はここでヒーロースーツを見つけてから向かう」

 「そんなこと言ったて、時間もないんだぞ」

 「分かってるよ!」

 仮面マンの叫びが下水道に反響していった。ワンダフルマンもそれ以上言うまいと下水道の梯子へと手をかけて、外へと出た。

 

 時刻は午後11時を回り、普段ならば町も眠りだす頃だったが今日はいつもとは雰囲気が異なっていた。ヒコウ町唯一の駅にはウルトラ街に行く『MANS』で溢れかえっていた。ワンダフルマンも彼らと同じ目的地を目指す。ここにいる『MANS』だけでも軽く300近くいる。ヒーロー星中から集まることを考えると・・・想像もしたくない。


 ワンダフルマンは電車の席に座ると、一日の疲れからか寝てしまった。起きると見たこともない景色が広がっていた。乗客は自分ひとりで他には車掌さんがいるだけであった。

 時計に目を向けると朝の10時を指している。12時間近く眠ってしまっていたことになる。

 「すいません。ここどこですか?」

 車掌さんに急いで尋ねると、聞いたこともない地名が返ってきてワンダフルマンの視界は真っ白になった。

 「大丈夫ですか?」

 ワンダフルマンの様子を察したのか、車掌さんは声をかけてきたがその声がワンダフルマンに届くことはなかった。

 

 ワンダフルマンはとりあえず次の停車駅で降りることにした。ヒコウ町まで引き返そう。やっぱり俺にはヒーローなんて無理だったんだとワンダフルマンは肩を落とし、自分が元々座っていた座席へと戻った。

 

 電車は5分もしないうちに次の駅へと停車した。降りていく乗客はワンダフルマン唯一人だった。

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