第2話 ヒーロー候補生、一発逆転の巻

 ウルトラマンの雑用業務が終わった後、路地裏に戻ったワンダフルマンはマンホールの蓋を開け自分の家である下水道の中に入り、その場に転がるダンボールを布団代わりにして寝ていた。


 「号外!!号外!!」

 メインストリートから聞こえる声で無理矢理起こされたワンダフルマンは、仮面マンを叩き起こして、マンホールの蓋を開け地上に顔を出す。その瞬間、仮面ライダー電王に登場する新幹線型の列車ーデンライナーが頭上を通過していく。

 「危ない、危ない・・・後少し出てたら頭吹っ飛んでたぞ」

 叩き起こされた仮面マンが眠そうに呟く。二人は下水道から出ると、メインストリートへ向かった。


 「何だよ。号外って」

 ワンダフルマンがヒーロー新聞の号外に目を落とすと大きな見出しで「新ヒーロー急募」と書かれていた。その見出しの下には『ウルトラ財閥』と記されていた。

 ワンダフルマンはウルトラ財閥のことが心底嫌いだった。彼は絶望し、ヒーロー新聞を投げようとしたときだった。街中にノイズが鳴り響いた。壊れかけのスピーカーから流れ出したノイズは周囲の者達の顔を歪めさせるには十分すぎる威力だった。

 「諸君、号外を見てくれたかな?これは救いの手だ。君達『MANS』を泥の中から救い出してあげようというわけだ。ウルトラ財閥が諸君を売り出すために完全にバックアップをするつもりだ。しかし、ヒーローになれるのはオーディションを勝ちあがった唯一人。オーディションの場所は・・・」

 壊れかけのスピーカーは再びノイズを撒き散らし、肝心な部分を聞き取れない。

 「・・・以上だ」

 ノイズが途切れたときにはアナウンスも終わっており、その場にいたヒーロー候補生達ー通称『MANS』はざわつき始めた。周囲は興奮している者や号外をもう一度読み直すもの、聞き逃したオーディション場所を尋ねる者など様々だったが、皆がヒーローオーディションに参加しようとしているのは一目瞭然だった。


 「参加するよな?」

 仮面マンが不安げな表情でワンダフルマンを見つめる。ワンダフルマンとウルトラマンとの深い遺恨があるのを知っているため、仮面マンはあまり強く言えなかった。

 「確かにこのチャンスを逃したら、当分似たチャンスは巡って来ないだろうな。でも・・・」

 と言い掛けて、ワンダフルマンは口をつぐんだ。視線は号外の『ウルトラ財閥』へと向けられている。

 「俺は正直ウルトラマンが嫌いだ。だからと言って、このチャンスを逃す言い訳には出来ないよな」

 仮面マンの表情がパッと明るくなる。

 「じゃあ、俺は聞き取れなかったオーディション場所を皆に聞きまわってみるよ」

 仮面マンはワンダフルマンに背を向けると人混みへと駆けていった。

 ワンダフルマンは深いため息をつくと、晴れ渡った空を見上げた。

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