最終話
年も明けて第三学期の始業式が終わり、教室に集まる見知ったクラスメイト。二年になればこのメンツも入れ替わってしまう。担任教師が教室に入って来ると、仲の良い仲間同士で固まっていたものが、
二ヶ月にも満たない彼との関わりは、私にとって決して小さいものではなかったのだと思い知らされた。何かにつけて「あんこちゃん」と呼んだ彼はもういない。私を襲う虚無感。今でも耳の奥底に彼の声が残っていて、前を向く私の右隣りから聞こえてきそうだった。
悲しいというよりは、とても寂しい気持ち。これが恋心なのかどうかは、今の私には分からないけれど、少なくても彼に好意を抱いていたのは確かだと思う。一目惚れだと言ってくれた彼にもう一度会って、自分のこの気持ちが恋心なのかを確認したいと思った。
***
明けましておめでとうございます。
あんこちゃん元気にしていますか?
新しい学校でも胸に七つの傷をやりましたが、相変わらずウケが悪いです。なんでかなあ、面白いと思うんだけどなあ。
***
二月に入ろうとしていたときに届いた、かなり遅い年賀状。差出人のところには彼らしい名前が書かれていた。
それにしても、毎回同じ挨拶をしているのだろうかと思う。あんなものがウケるわけないのは当たり前でしょう。と、彼がこの学校に転校してきた初日の風景を思い出し可笑しくなった。あれを面白いと思っているのは、おそらく彼だけだ。でも、それでいいのかもしれない。そんな根拠のないものが私の脳裏に浮かんできた。
追伸:今度、近くに行きます。会ってもらえますか?
私はハガキを胸に抱き、会いたいという気持ちでいっぱいになった。その時には私の身長があと二センチ高くなっていればいいなと思った。
あんこ 本栖川かおる @chesona
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