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図書館の中はとても静かで、本棚がたくさん並び、本がたくさん置かれている。
そして……
本が、浮いて動いていた。
うおおおおお!
本が浮いてる!!
こういうのってやっぱり異世界って感じがするよね!!
キョロキョロといろんなところを見ながら、歩いていく。
外観ではあまりわからなかったけど、ここって意外と広くて大きいな…。
天井まで本棚ついてるけど、天井たっか!!
なに? 魔法でとるの? 庶民は魔法使えないんだよ?
どうやって取れっていうの?
あ、梯子はしごがあった…。
……
さて、まずは小説でも探そっかな!
んーっと……
あたりを見回して、小説の本棚を探す。
あっ、ここだ!
へぇ、いろんな小説が揃ってるんだなぁ
あっ!
この小説面白そう!
でも、たっかいなぁ…
まあ梯子があるんだけど…
バランスが崩れないように、ゆっくり上っていく。
そして、小説の方へと手を伸ばす。
…あれ、梯子を遠くしたせいでちょっと届かない。
ぐぐぐ…
あと、ちょっと…
もうすぐでとれる、という時、その本が動いた。
「へ?」
私はその動いている本を見つめて、やがて、その本を手に持った男が目に入った。
ジッと、その男を見る。
その顔はどこかで見たことがあった。
多分、町の友達か何かだろ……
「大丈夫か?」
……あれ?
確かに見たことはある。
でも私が見たのは、もっと成長した姿だ。
……え?
待って待って待って。
え? なんで? どういうこと? はい? ちょっと待って? うそでしょ? 幻覚? 幻聴?
……
私はこの人を、知っている。
それも、成長した姿を。
この人……
攻略ヒロインの一人、レイン・カルディだ。
え? なんでいるの?
ファンブックには確かに勉強家の読書好きとは書いてあった。だけどね?
まさかこんなところで会うとは思わないでしょう!?
「? おい、大丈夫か?」
怪訝な顔をされ、私はハッとする。
「え、ええ、大丈夫……です。どうもありがとう……ございます」
貴族の子爵様なので、一応敬語を使う。
学院では使ってなかったけど、今はそれは関係ない。
とりあえず、そっと降りて目線を合わせる。
「これを取りたかったんだろう?」
はい、と何の表情もなく渡される。
「え、あ、ありがとうございます」
差し出された本を受け取り、チラリとレインを見た。
あー、かっこいいなぁ。もう子供の時からキリッとしてて、でもまだ愛想が足りないなぁ。もうちょっと経ったら出てくるのかなぁ?でもクールな感じの方がいいなぁ、かっこいい…。
「俺の顔になにかついてるか?」
顔を少し顰めながら、私にそう言った。
「あっ、すみません…」
結構な時間見ていたんだろう。私はあわてて顔をそらし、素直に謝った。
……ああ、やばい…。
もう、かっこよすぎなんですけどおお!!!
イケメンだから? イケメンだからなの? 顔を顰めてもなおかっこいいって!!
声もいいし、もうキュンキュンするよお!!
「…その本、読むのか?」
私の子心の中を何も知らないレインが、私にそう聞いた。
「あ、はい。面白そうだなと思って……」
話しかける感じなの!? この会話続く!? 続くの!?
「そうか……俺は、今日初めてここに来たんだ」
「え、あ、はい」
んん? なんだなんだ?
「この地も、初めてだ」
「そ、そうなんですか」
おお? これはまさかのまさかか?
「いろいろ、教えてほしい」
やっぱりーーーーー!
あれ? なんか展開早くない!?
どうしてこうなるの!?
死亡フラグ確立してないよね? 大丈夫なんだよね?
「え……っと、私もここは初めて、です。この地は、少しならわかります」
断れる? 断れるか? 遠まわしに? 単刀直入に?
どっちだ? どっちがいいんだ?
「教えることは、ない、と思い、ます」
これで、どうする?
断れる?
「そうか……じゃあ、一緒に頑張ろう」
そう来る? そう来るの?
「あ……はい」
真剣に言われたら断れないっ!
私はNOと言えない元日本人なのです。
……後悔なんて言葉、私は知りません。
それに…
私がはい、って言った瞬間のレインの顔が! 嬉しそうに顔をほころばせた顔が!
すっごくかわいすぎて!
ギャップ萌えが!!
「この図書館は、閉まらないそうだ。あっちには机もあった。俺は、この本を読んでみようと思う」
嬉しそうにレインは言う。
くっ!!
これがイケメンパワーなのか!!
炎に焼かれてもいいとさえ思ってしまうなんて!!
落ち着け、落ち着け私。
今は画面越しではないんだ。死んだら終わり。セーブもロードもない、リアルな世界…。
それを考えた瞬間、体に水をかけられたような感覚に陥った。
ここは、ゲームの世界。
でも、リアルの世界。
死ぬわけには、いかない。
「そうなんですか、じゃああっちで読んでみましょうか」
笑って私はそう言った。
席に着くと、あ、とレインは小さく声を上げた。
私は首をかしげながら、レインの方を見る。
「…名前を、聞いていなかったな」
…ああ、私も知らない設定だった。
「あー、そうですね。私はマリーナ・アディソンです」
「俺はレイン・カルディだ」
はい、知ってます。
「よ、よろしくお願いします」
もうどうにでもなれ、だ。
「ああ、よろしく…ってお前何歳なんだ?」
え? 同い年ですけど?
「…10歳ですよ?」
「同い年じゃないか。なぜ敬語だ」
いや、貴族だからに決まってるじゃないか。
「…年上に見えたもので」
目をそらしながらそう言った。
「そうか。じゃあこれからはタメでいい」
「え、いやです」
即答した瞬間、一瞬にして顔を顰められた。
おっと、無意識だった。
「なぜだ」
「えーっと……だって、見るからに貴族様じゃないですか」
レインのいまの恰好は、いかにも高級そうな、なんていうか……
「成金の坊ちゃんみたいな…」
っあ、また無意識…!
あわてて口を覆い、そーっとレインの顔を伺う。
「なりきん?なんだそれ」
わー、分かってなかったー。
よかったー
「かっこよすぎて、かしこまっちゃうって意味です」
成金の意味じゃないけど、まあ理由の一部ではあるからそういうことにしておこう、うん。
「へぇ……貴族には変わりないが、かしこまる必要はない。ここは民間の図書館。気軽に話してくれ」
…すごい何気なく言ってますけど顔が少し赤いですよ、レインさん。
「…わか、った。じゃあ、よろしく、レインさん」
「さん付けもしなくていい」
即答で言われ、ギョッとしながらも、
「え、あ、れ、レイン」
アタフタしながら私はそう言った。
それを聞いて、レインはうん、と満足そうに頷いた。
ああ、可愛いっ!
ヤンデレ乙女ゲームに転生した!…しかも主人公!? yuki @yuki525syosetu
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