影の韻文

大澤めぐみ

母の手帳


 なるべくなにもせずに家でゴロゴロしてのんびりダラダラと生きていきたいな~と思っていたら、父親と母親が事故でいっぺんに死んでしまってその保険金が入ってきて、本当になにもせずに家でゴロゴロしているだけで当分は生きていける感じになってしまった。


 そんなわけで、わたしは今日も特になにをするでもなく家でゴロゴロとしている。


 テレビもつけないし音楽も流さないから、ときどき家が鳴る以外はとても静かだ。でも、そのせいで突然に家が鳴るとついついギョッとしてしまう。父が残してくれた二階建ての一軒家はちょっと古びた木造だし、木は湿気を吸って膨らんだり乾いて縮んだりするものだから、軋んで音が鳴ることがあるのは知っているけれど、家が鳴るといつもなんとなく、身を固くして音が鳴ったほうにじっと意識を集中してしまう。


 なんだ、やっぱりただの家鳴りか、自然現象かと納得するまでにしばらくの時間がかかる。


 いったいどこが鳴っているのだろうと静かに耳をすませている時には家鳴りはおこらなくて、いつも油断しているときに不意にどこかでピシッと音がするから、音の出処はなかなか見つからない。


 両親のお葬式は母方の祖母が出してくれた。父親と駆け落ち同然で家を出てきた母のことを祖母は快く思っていなかったようだけれど、それにしたって自分の実の娘なのだから、死んでしまった後ぐらいはそれぐらいのことはするのだろう。父に関しては母方の親族が葬式を出してやる義理もないのだけれど、なにしろいっぺんに死んでしまったものだから、片方の葬式をやって片方はほったらかしというのも随分と体面が悪い。そんなわけで、母方の祖母は不承不承という感じで父の葬式もついでにやってくれた。


 わたしは母方の祖母とは両親の葬儀ではじめて会った。もう80もまわろうかという歳のはずなのに、背筋がシャキッと真っ直ぐ伸びていて、とても厳しそうな表情で、なにがどうというわけではないのだけれど直感的に、どこか嫌な感じのする人だった。


 きっと、わたしがのんべんだらりとした人間だからだろう。そういう厳しそうな人には生理的に苦手意識を持ってしまう。一緒に生活していたら随分と息苦しい思いをすることになりそうだなと感じた。


 たぶん、母は父のことを愛していたから駆け落ちしたのではなく、この人のことを嫌って逃げ出すために掛け落ちしたのだろうなと、なんとなく思った。本当のところはどうだか分からないけれど、たぶんそういうことだったのだろうとわたしは勝手に納得している。


 いつの間にか母方の祖母の手配で北向きの和室に仏壇が運び込まれていて、そこに両親の位牌が納められていた。たぶん、ほんとうはお線香をあげたりしないといけないのだろうけれど、毎日なにもせずにひとりで家でゴロゴロを満喫しているわたしはなるべくならなにもせずにゴロゴロしていたいので、そういったことも滞りがちだ。


 平日の昼間からリビングのカーペットに直接寝ころんで仰向けで文庫本を読んでいたら、またどこかで家鳴りがした。わたしは文庫本のページを開いたまま伏せて、むっくりと起き上がる。

 

 ピシリ、ピシリ。

 また、どこかで鳴っている。


 わたしはノロノロと立ち上がって、音の出処を探ってみる。家鳴りはまるでわたしを呼ぶかのように、少しずつ移動しながらだいたい一定のペースでピシリ、ピシリと鳴っている。


 ピシリ、ピシリ。

 まるで、目に見えない誰かが家の中を歩き回っているみたいに。


 家鳴りは、両親の仏壇が置かれた北向きの和室の中に消えていったように、わたしには思えた。もう何日も締めきったままだった襖に手をかけてみると、取っ手のところがヒヤッとしていて、なんだか冷たい。


 ガタガタと、襖を横に引く。随分と戸の動きが重くなってしまったような気がする。ここの襖はこんなにも建て付けが悪かっただろうか。


 襖を開くと、和室の中からはなんだか嫌な臭いがした。埃っぽいような、湿っぽいような、これはカビの匂いだろうか。


 畳の上に一歩足を踏み出して、わたしは「ひゃっ!」と声を上げてしまう。靴下をはいた足の裏が冷たかった。足を上げて見てみると、靴下の裏側が湿気てしまって黒っぽく色が変わっている。畳が濡れているのだ。


「やだ……なにこれ」


 ちょっと湿気ているなんていうものではなく、畳は台所のシンクの食器用スポンジみたいにじっとりと濡れていて、踏むとじわっと水分が溢れてくるほどだ。いつの間にこんなことになってしまっていたのだろう。


 襖の室内側は襖紙が波打ってしまっていて、下のほうの角からくるくるとまくれ上がってしまっている。紙が剥がれてむき出しになってしまった内側の木材は黒ずんでいて、ひょっとしたらここにもカビが繁殖してしまっているのかもしれない。


 この部屋の湿気を木材が吸ったり乾いたりして膨張と収縮を繰り返し、それでパキパキと家鳴りがしていたのだろう。わたしは今さらながら少しでも風を通そうと思って、つま先歩きで湿気た畳を踏みながら部屋の奥まで行き窓を開けた。風は外から部屋の中に向かって吹き込んでくるようで、かえってこの部屋の黴くささが家全体に広がってしまったようにも感じられた。


 二~三日、窓も襖も開けっ放しにしておいたけれど、すっかり濡れそぼってしまった畳が乾く気配はなく、カビはますますその勢力を拡大していくようだった。さすがにこのままにはしておけないと思って、わたしは電話帳で調べて近くの畳屋さんに連絡する。


「あの、畳の交換をお願いしたいんですけれど」

「あ~、はいはい。大丈夫ですよ」

「えっと、すいませんけど、畳って一枚どれくらいの値段がするものなんでしょうか?」

「どうですかね~、それはちょっと一度拝見してみないと、なんとも言えませんね~」

「だいたいでもいいんですけれど、だいたいいくらぐらいとか」

「それもまちまちですんでね~、一度拝見してみないとですね~」


 近々見積もりに伺いますので、という返事だけもらって電話を切った。

 畳っていくらぐらいするものなのだろう? 特になにもせずに家でゴロゴロしてばかりだったから、わたしはそんなことも全然知らない。でも、たぶん安くはないような気がする。両親の保険金でまとまったお金が入ったとはいえ、減っていくばっかりで増えるアテはないのだから、あまりお金がかかるようだと困ってしまう。


 でも、これはもう業者にお願いしてなんとかしてもらうしかないだろう。このまま放っておいたら湿気とカビは家中に拡がって、そのうちこの家じたいが壊れてしまうかもしれない。そんなことになったらさすがに困る。


 それから二日経っても、三日経っても、畳屋さんは一向に見積もりにこなかった。ひょっとしたらなにか他の用件で忙しいのかもしれないけれど、近々見にくると言っていたのに三日も音沙汰がないのはどうなのだろうか。


 世間一般での近々というのは何日ぐらいまでを指すものなのだろう。そんなことも、わたしはよく分からないのだ。全然、なにも知らない。自分でも呆れてしまうほどに。


 部屋のカビはどんどんとひどくなっていくので、あまり放っておくわけにもいかず、五日目に意を決してもう一度畳屋さんに電話をしてみた。2コールで畳屋さんが電話を取る。


「あの、五日ほどまえに見積もりをお願いしていたものなんですけれど」

「ああ~、はいはい。分かります。いえ、忘れていたわけではないんですよ。ちょっと別件のほうが重なってしまいましてね。ええ、近々かならずお伺いしますから」

「えっと、近々というのはいつぐらいになりますでしょうか?」

「あ~っと、そうですね~。今日……はもうダメだから、明日か~、明後日には、はい」

「そうですか」


 二日経っても畳屋さんはこなかった。和室のカビはどんどんひどくなっていくし、風を通しているはずなのに、畳の湿気もよりひどくなっていくような気がする。今いる湿気とカビが、どんどん次の湿気とカビを呼び込んでいるかのように。


 三日目にもう一度電話して、今度はすこし強い口調で言ってみた。

「あの、お見積りに来ていただけないのでしたら他にお願いしますので、もう結構ですから」

「あ~いえいえ、はい、大丈夫ですよ。ただちにお見積りに伺いますからね」


 そう言って電話を切って、本当に畳屋はそれから5分くらいですぐにたずねてきた。お店がすぐそこなのだと言う。それだったら、どうしてちょっと見にくるぐらいのことでこんなに何日もかかったのかと思うけれども、とりあえず見にはきてくれたのだし、これ以上あまり強く言ってもややこしいことになりそうな気がして、わたしは特になにも言わずに北向きの和室に畳屋を通した。


「あ~、これはもうダメですね~」

「ぜんぶ交換ですか?」

「交換してもダメかもしれないね~。部屋が北向きだから、ちゃんと毎日風を入れてあげないと湿気ちゃうんですよ。これだけ湿気を吸っちゃうと、新しい畳を入れてもすぐにダメになってしまうんでね~」

「あの、どうすればいいんでしょうか?」

「え? だからダメだって言ってるじゃないの。こういう北向きの和室はちゃんと毎日風を入れてやらないとすぐに湿気ちゃうの」

「ですから、湿気てしまった場合はどうすれば」

「湿気ちゃうともうダメだよね~。なんで湿気させちゃったの? 風を入れるぐらいそんな手間でもないだろうに、忙しかったの? 仕事はなにをしてるの」


 なぜだか急に畳屋の人が怒りはじめて、わたしは委縮してしまう。

「いえ、特になにも……」

「なにもってなに? 学生さんかなにか?」

「いえ、なにもしてないんです。毎日、家にいるだけです」

「毎日なにもしないで家にいるだけなのに、なんでこんなに畳を湿気させちゃうの。窓を開けて風を入れるぐらいなんでもないでしょ。毎日家にいてなにもしてないなら」

「すいません……、知らなかったもので」


 ああもうダメだダメだ、こうなっちゃったらもうダメだよと言うばっかりで、畳屋さんは一向にどうすればいいのかも値段のこともなにも教えてくれない。

「あの、ダメなのはもう分かりましたから。それで、畳が湿気た場合はどうすればいいんですか?」

 わたしが少し語気を強めてそう言うと、畳屋さんはまた急に態度を軟化させて「あ~はいはい、大丈夫ですよ。一回全部剥して、土台のところからやり直せばなんとかね」と、ようやく話を先に進めてくれる。


「おいくらぐらいかかるんでしょうか……?」

 土台からやり直す、というのが具体的にどういう作業なのかは皆目見当がつかないけれど、言葉の響きてきに大変なことのような感じがするし、かなりお金がかかりそうな雰囲気である。もっとも、いくらだったら高くていくらなら安いのかとか、そんなこともわたしにはよく分からないのだけど。


「いくら……いくらねぇ~……」と言って、畳屋さんはジッと湿気た畳を睨んで、そのまま黙り込んでしまう。わたしが黙って待っていても、そのままなにも言わないで延々ジッと畳みを睨んだままだ。


「あの、高くなりますか?」

 痺れを切らしてわたしはそう声を掛けると、畳屋さんはやっとこちらに顔を向けて。


 ニヤッと笑った。


「いやいや、お金はね、この際いいですよ。こんなに湿気た畳、土台からやり直すとなっちゃあ大事だ。お嬢さん、今はなにもしてないんでしょう? あんまりお金が掛かるようだと、困っちゃうもんね~」


 嫌だ、と思う。この人は、なんだか怖い。


「あの、お金はいいってどういうことなんでしょうか……?」

「お金はいいっていうのは、お金はいらないってことですよお嬢さぁ~ん。お金はいりませんけど、その代わりにね」

 唐突に、跡がつきそうなほど強くガッチリと畳屋さんに手首を掴まれて、その痛みにわたしは顔をしかめる。畳屋さんの手首に、特徴的なリストバンドが見えた。

「わかりますよね~、お嬢さん」


 わたしの記憶の端に、なにかが引っかかる。

 わたしはこの男を知っている!!


「そのリストバンド! そのねちっこい声! お前は、コンダクター流水!!」


 ドン☆


 変幻自在の地獄の案内人、コンダクター流水。過去に全国大会二位の成績を残している実力派のデュエリスト。確か大会の紹介でも、普段の職業は畳屋になっていたけれど、まさかこんな形で出会うことになるなんて。


「ふふふ、わかりましたか~? 分かりますよね、お嬢さん。自分がいったいどうすればいいのか。わたしはデュエリストで、そしてお嬢さん、あなたもデュエリストだ。デュエリストがふたり出会ってしまったら、やることなんてひとつしかないじゃぁありませんか」


「……デュエル……ですか……」


 デュエリストとデュエリストは引かれ合う。こうなってしまっては、もう戦いは避けようがない。いいわぜ流水! お前の挑戦、受けてやるわぜ!! ドン☆


 流水の顔が喜色に染まり、歪む。そうやって笑っていられるのも今のうちわぜ!

「あなたが勝ったら、今回の工賃はなしにしましょう。ですが、わたしが勝ったらあなたのデッキの中のカードを一枚、いただく。それでよろしいでしょうか?」

「ああ、いいわぜ! だけど、あなたは後悔することになるでしょう。おとなしく工賃の見積もりを出さなかったことをね!」 ドドン☆☆


「お父さん、お母さん、わたしを守ってね……」

 わたしはデッキを額に近づけ、祈りを捧げる。

「わたしを楽しませてくださいねぇ~~!!」

 流水がデッキをシャッフルする。


 デッキから初手の三枚ドロー。悪くない手札だ。わたしは当分出番のないコスト重めのカードを一枚デッキに返し、引きなおす。流水は引き直さない。良い手札を引いたのか。


 先攻は……コンダクター流水!!

「さぁ~、いきますよお嬢さん!」

「返り討ちにしてやるわぜ! 流水!!」

「「デュエル!!」」 ドドン☆


 ~ENEMY TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「では、わたしの先攻! ドロー! まずは様子見、猫の軍神キドク・ヒルズバックを召喚」

『我こそは荒れ狂うギロッポンの猫(意味深)!!』にゃお~ん☆

「くっ、序盤から2/3の守護持ちは地味に邪魔だわぜ!」

「さあ~、どうでますぅお嬢さぁ~ん」


~YOUR TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「しかし甘いわぜ流水! わたしのターン! ドロー! わたしはスペルカード、7回忌の法事をプレイ! 場のフォロワー一体に3のダメージを与える! 猫の軍神キドク・ヒルズバックを破壊するわぜ!」 ドン☆

『うぅ……! ち〇〇が抑え切れん……!!』(バフゥ~ン)

「くっ、なかなかやりますねぇお嬢さん」


~ENEMY TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「これでお互いに振り出しですねぇ。さあ、ドローです! ……おっと、これは……。ふっふっふ、ではわたしは次に復讐のウサギを場に召喚!」

『俺は復讐する……、カクヨム運営にな!!』ぴょわ~ん☆

「くっ、序盤から4/4のスタッツはかなり強いわぜ! でも復讐のウサギは復讐状態にならないと行動できないのわぜ!」

「もちろんそんなことは百も承知ですよぉ~、お嬢さぁ~ん!」

「この余裕……さては、お前のデッキは敢えて自らライフを削り序盤からの復讐状態で一気に畳みかけるのを狙う、復讐ヴァンパイア!?」 ドドン☆


~YOUR TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「わたしのターン! ドロー! ……くっ! 流水のデッキが復讐ヴァンパイアだとするならば、次のターンでは確実に復讐状態にもってくるはずだわぜ! 手堅く復讐のウサギを除去しておきたけれど、でも手持ちでは4/4を1ターンで除去できるカードがない……どうすれば」

「うっふっふ、どうしましたぁ? お嬢さん。もしかして、もう打つ手なしですかぁ?」

「いいえ、流水! わたしはこのアミュレットに賭ける!! アミュレットカード母の手帳をプレイ! 母の手帳は2ターンの間、ランダムなフォロワーを場に召喚してこれを破壊する!! 母の手帳から母方の祖父を召喚!」

『勉強なんぞしてる暇があったら畑を手伝わんか!!』ドロンッ☆

「母の手帳の効果で召喚した母方の祖父を破壊!!」

『うお~っ!! 節子ぉ! 節子どこだぁ!!』 (バフ~ンッ!)

「母方の祖父のラストワード発動! 母方の祖母、節子を召喚!」 

『女が大学になぞ、遊びに行っているだけではありませんか……』 ドドン☆

「くっ……、なんて闇の深そうなアミュレットを……しかしそのカード、ほしいですねぇ……!!」


~ENEMY TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「わたしのターン! ドローです! わたしはレジェンドカード、ケツバットクイーンを場に出します!」

『血を流せ……進捗せよ……!』 ドドドン☆

「ケツバットクイーンのファンファーレ効果、わたしはデッキからカードを二枚引きます! さらにケツバットクイーンの追加効果でわたしのライフは10に! 復讐状態に入ります!」

『お前を見ているぞ!!』(スパーン!!)

「ごっふっ!!」

「なんかめちゃくちゃ痛そうだったけど大丈夫なのわぜ!?」

「ふっふっふ、お優しいですねぇ……しかし、余裕をかましている場合ではありませんよ! 復讐状態に入ったことで復讐のウサギが行動可能になりました。復讐のウサギで、母方の祖母、節子に攻撃します!」

『俺は強い! 強い!! 強い~~~!!!!』(バコ~ンッ!!)

「くっ、復讐のウサギと母方の祖母節子は共に4/4。両方とも破壊されて場を離れるわぜ!」

『ナロウデ、マッテイルゾ……』(バフ~ンッ!)

『なにがあってもこの土地は手放しませんよ……』(バフ~ンッ!)


~YOUR TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「わたしのターン! ドロー! 流水! 自らライフを削り復讐状態に入ったことを後悔するがいいわぜ!」ドドン☆

「なんですって!?」

「さらに母の手帳をもうひとつ場に出すわぜ! 母の手帳から母方の祖父を召喚! これを破壊! 母方の祖父のラストワードで母方の祖母、節子を召喚!」

『節子ぉ~!!』(バフ~ンッ!)

『その年になって繕いものもロクにできないのですか……』

「さらに母の手帳からニートのいとこを召喚!」

『僕は自由人。なにものにも縛られないのさ……』

「これを破壊!」

『僕はまだ本気出していないだけ……』(バフ~ンッ!)

「ニートのいとこのラストワードで母方の祖母、節子を召喚!」

『美和子さん、畳の目地に埃がのこってますよ……』

「さらに母方の祖母節子に進化権を使用!」

『華族の誇りをお忘れになりましたか……』(ビュワーンッ!)

「ケツバットクイーンを攻撃! 破壊する!」

『先祖代々の土地、渡しはしませんよ……』(バコーン!!)

『進捗に終わりはない……』(バフゥ~ン!)

「くっ、進化後の節子のスタッツは6/6、ケツバットクイーンと交戦しても残り6/2、盤面を取られましたか……」

「これで終わりじゃあないのわぜ流水!」

「なんだと!?」

「わたしはスペルカード、お母さんハウルをプレイ! ネクロマンス:1、場が上限になるまでお母さんを召喚する!!」

『実家を許さない!!』『古臭い男尊女卑を許さない!!』『カビ臭い田舎の価値観を許さない!!』

「なんと! なんて闇の深いカードを!!」

「行け! お母さん!! 流水にフェイス攻撃だわぜ!!」 ドドン☆

『ああ~! 実家が憎い!!』『金はないくせにプライドだけは高い両親が憎い!』『理解のない夫が憎い!!!』(バシーン!)(バシーン!)(バシーン!)

「ぐおおっ!! しかし、まだわたしのライフは7残っています! ここからですよ!」


~ENEMY TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「場に母方の祖母がふたり残っているのはマズイ……。まずはスペルカード! 死の盆踊りで進化後の節子をひとつ除去です!」

『この土地は渡しませんよ……』(バフ~ンッ!)

「体勢を立て直すために時間が必要ですね、さらに守護の悪魔ボンゴレ☆ビガンゴ卿を二枚場に出します!!」

『ぱおぱおぱお~ん!!』『ぱおぱおぱお~ん!!』

「ふっ! ビガンゴ卿は守りの堅い1/4の守護持ち。しかし、その程度でわたしの攻撃をしのぎ切れるかしらわぜ!」

「なんですって!?」

「一気に決めるわぜ! 流水!」 ドドン☆


~YOUR TURN!~ (ブワ~ンッ!!)


「わたしのターン! 行け! 魔将軍お父さん!!」

『いや~、まあ美和子も美和子でいろいろと大変なわけでして……』(ヒョロンッ)

「魔将軍お父さんのファンファーレ効果! ネクロマンス3:場が上限になるまでお母さんを召喚し、お母さんは突進を持つ!!」

『やたらと多い親族が憎い!!!』『毎年のようにある誰かの法事が憎い!!』『強制参加の自治体のお祭りが憎い!!!』

「さらに魔将軍お父さんは場の全てのフォロワーを+2/+0する!」(ボフーンッ!!)

「なんとっ!!」

「魔将軍お父さんのバフ効果で全てのお母さんのスタッツは4/2に! 行け! お母さん! ビガンゴ卿を破壊しろ!!」

『消防団の宴会の準備が憎い!!』『週に一回まわってくるゴミ収集場所の立ち番が憎い!!』(バシーンッ!)(バシーンッ!)

『ぱおぱおぱお~ん!!』『ぱおぱおぱお~ん!!』(ボフ~ンッ!)(ボフ~ンッ!)

「しまった! ビガンゴ卿の壁が破られてしまった! これでは丸裸です!!」

「覚悟するわぜ流水! 母方の祖母、節子を進化!!」

『美和子さん、PTAの役員仕事は率先してなさってください……』(ビュワーンッ!)

「魔将軍お父さんのバフ効果と合わせて進化後の節子のスタッツは8/6!! 行け! 母方の祖母節子! 流水にとどめだわぜ!!」 ドドドン☆

『親族とはかくも素晴らしいものですね……』(ドカーンッ!!)

「ぐわあああっ!!」


 ティロリティロリピーン!

 流水、ライフ0。勝者、わたし!(テレーンッ!)


「やったぁ! 勝ったよ~!!」

「あなたの実力を認めねばなりませんね……」(ボシューンッ!)


 お母さんの恨み手帳のおかげで辛くもコンダクター流水を打ち破ったわたし! しかし、戦いはまだまだ続く!!

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