人を見た目で…というのはよく聞く話ですがじゃあ、『誰かの "本当" を知るのは どうしたらいいのですか?』という問いに答えられる人は、案外、少ないのではないでしょうか。登場人物の魅力は、柳の木のそれに例えられるかもしれません。『優しい気持ち』 の在り方を考える、一歩進んだ視点がとても柔らかく、またそれ故に、意欲的な作品だと思います。
登場人物の情景を細かく描き出す文体はとても丁寧で繊細です。物語の構成と相まって、気づけば主人公に感情移入していました。読み手の個人的な経験は、物語に様々な彩りを加えていきますが、本作品のラストは本当に色彩鮮やかでした。テーマとしてはおそらく、とてもデリケートな主題なんでしょうけど、読み終わったあと、なんだか幸せな気持ちになりました。それはきっと、供に希望を探そうとする主人公の、ひた向きで純粋な想いに触れられたからかもしれません。