覆したい。覆せない。——限りなく美しくかなしい、二人の痛み。

自分自身の結婚が決まり、相手の家族と会う前日。
恵子は、自分が生まれ育った家の実の娘ではなく、養女だったという事実を父から知らされる。

心から慕い——いつしか深い愛情へと変わった、兄の秀一郎への思い。
叶わぬその想いを振り切ろうとしていた実の兄が、本当は血の繋がりのない人だった——それを知った恵子の衝撃。
そして……その事実を知りながらも、自分を受け入れてくれなかった秀一郎への、複雑な感情。

妹の、兄への深く熱い想いが、季節ごとの花々や情景の描写とともに、溢れ出すように美しく、切々と綴られます。

この物語は、秀一郎と恵子の深まる想いとその結末を綴った作者の作品『君想フ銀ノ雨 君慕フ金ノ庭』のスピンオフ作品です。嫁ぐ直前の恵子の、秀一郎への叶わない想いの深さと痛みが、読む者の心を掴み、ぐらぐらと揺さぶります。
是非本編と合わせて味わっていただきたい、美しく切ない物語です。

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