第3話「秘密結社の絆」

ジョン、ジョン、ジョン、ジョンと書いて丸で囲み、それらを矢印で結んで注釈を加えていく。

伝言だからって文だけで伝えようとするからややこしいのだ。

そう気付いた僕は伝言の横に人物の相関図を書いていた。


「よし、相関図は完成だ。これで一目で……ぬう、なぜだ!分からん!」


「戻ったぞー、ジョン!」


ドアが開くなり男が入ってきた。大柄な黒人だ。


ジョンじゃなかった。

いや、この大男もまたジョンかもしれない。

この時の僕はすでに疑心暗ジョンといってもいい状態だった。

とにかく、入って来たのはトイレのジョンではなかった。


「ん?キミは?日本人か?」


「はい日本人です。新入りのジョンです。」


もうやけくそだ。とりあえず握手を求めてみた。


「ああよろしく!ジョセフ・ランディだ。」


いるじゃないか!ジョンじゃないメンバー!

ジョセフ・ランディ、僕はお前に会えて嬉しいぞ!


「ジョンでいいぞ、兄弟。」


ですよね。


「あ、はい。」


「で、ジョンよ、ジョンのやつはどこに行ったんだ?」

「ああ、ジョンさんならいまトイレに行ってます。

 早ければあと10分くらいで戻ってくると思います。」


さらっと対応できてる自分が嫌だ。


「そうか行ったか。ジョン一人ではさすがに荷が重かったようだな。

 ジョンが来てくれなかったらここも危なかった。礼を言うよ。」


そうとうモジモジしてたからな。

なんか今「ここも」って言ったよな。

気になるが聞かない方がいいだろうな。


「そういや時間過ぎてるじゃねーか。ジョン、電話来なかったか?」

「ジョンさんからの定時連絡ならついさっき来ました。

 非常事態だから応援をよこしてくれって。」

「なんだと?!他にはなんて?」

「ジョンさんはこれから電波の入らないエリアに行くそうで、

 詳しい話と応援を送る場所はジョンに聞いてくれ、とのことです。」

「そうかわかった。さっそく電話して聞いてみよう。」


へぇ、このジョンには今のでちゃんと通じてるんだな。

すごいな、感動だ。これが秘密結社の絆か。固い絆だ。


受話器をとったジョンの動きが止まる。


「……なぁジョン、そのジョンってどのジョンだろうな。」


すごいな、感動だ。これが秘密結社の絆か。ゴミだな。

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鹿棚井八太郎と秘密結社のジョン 浮遊僧 @operation_water_bubble

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