第13話 最後の仕上げ
★ ティア目線
さて、最後の仕上げだ、そろそろ最初に入った奴らが仕掛けに引っかかる頃だろう。
丘の上に登り、森の中から逃げ出してくる奴を始末するために鉄砲隊を準備する。
もう皆んな腕をあげるのも辛いので、鉄騎兵の奴らに
ズッドンンンン
腹を突き上げるような地響きと、森の奥の方から火炎が吹き上がる。
最初の火炎の後、仕掛けていた他の爆薬が連鎖的に吹き飛び、黒い煙と炎が上がる。
アンフォ爆弾だ。
油とアレやコレを、冷やしたり、温めたり色々と少々イジって爆薬と化合させて作るテロリスト御用達のやつだ。
私は、化学工場時代と高校時代の知識を使って、この世界でパンドラの箱を開けてしまっている。
過去に私の左手に火傷を作った、爆薬の応用版である。
私の開いたパンドラの箱は、あっという間に炎は森の中を走り、中にいる教皇から皇帝、そして各国の王族や国の首脳達、それに名もない兵士まで、地位に一切関係なく平等に消し炭に変えていく。
上空に大きく上がる黒煙が風向きのせいで、私達のところまで黒い煤を降らせている。
森の中から炎を逃れてくる奴がいたら、全部撃ち倒さなければいけない。
「出て来る奴らは、絶対に逃がすなよ」
私が、兵士達に指示を出した。
と、その時、誰か森から出てきた。
バンッバババーン
鉄砲隊が射撃をする。
……ってあれ?
「あ、うあわわわ、辞めろ、射撃を中止ー中止」
ベックの奴を忘れてた。
あーあ、ドワーフの奴ら全員ズボンの前を濡らしてるじゃん。
私? 私が悪いの?
あーどうしよ、ちょっと褒めて誤魔化すしかないか。
「姫様、撃たないって言ってたじゃないですか、グスン」
あーあ、泣いてるよもう、やっちゃった。
一人ずつ抱きしめながら褒めてやったら、皆んな喜んでたな。
一人調子に乗って胸を鷲掴みにしてきた奴がいたから、バックドロップで投げたがまあいい、多分こいつらが居なかったら、私の心はとっくに潰れてる。
★決戦当日 夜 丘の上 ベック視点
僕は、姫様に投げられた時にできたタンコブをさすりながら、森の炎をみている。
あそこで燃えてしまった偉い人達が居なくなっても、国は変わらない事ぐらい僕でも分かる。
王様の次はいくらでもいるんだから。
だけど、姫様は『新しい価値観の苗木を植えるために必要な肥料だった』と言ってる。『この世界は今日、絶対に変わらないと思っていた事が起きたのを目撃した、だから時間はかかるが、苗木は勝手に育っていくだろう』って言ってた。
僕には、難しすぎて分からない。
姫様は、あんなに戦争が大好きだったのに、もう戦争はやらないと言っている。すぐに向こうから恐怖で講和をしてくるだろうから、踏んだくれるだけふんだくって、ついでに不平等条約結んで貿易を始めるそうだ。
そのお金で魔獣や魔物がいる外の世界を開拓するから、お前の仕事はこれからまだあるぞって言われた。
僕も、僕の部下も、横領で縛首だと思っていたのに、どうやら助かったみたいだ。
……また贅沢できるのかな? オッパイを揉ませてくれるお嫁さんが欲しいし、お給料もらえる技官を続けようかな? ……うん、やっぱり、鍛冶屋に戻るのはもう少し後にしよう。
僕は、今日始めて触った右手の感触の記憶をじんわり思い出しながら、未来を考えていた。
お終い
この物語は、ここまでです。
「ドワーフ戦記」は、幼女は科学の力で世界を復活させる(旧題:復活の女王 の、スピンオフ作品でした。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881725720
元々は、上の本編のラストのつもりで書いていたのですが、本編の途中から主人公のティアが勝手に動き出して、最初に予定していた話から、大きく外れたので、この作品は世界線を超えた別の物語の最後です。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
ドワーフ戦記 アリス&テレス @aliceandtelos
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