第12話 敵中突破

 僕たちは、必死で走りました。

 馬ってフルプレートアーマーを着て走ると泡を吹くんですね、ちょっと可哀想な事をしています。


 丘の上まで登りきると、大声を出して兵士達を集めようと頑張ってる人がいます。僕達はそのおじさんの近くを通りながら。

「無駄だー敵の大砲が来るぞー」

「鬼が来るぞー、鬼だーあいつは鬼だー」

「森の中に逃げ込めば追いつかれない、全部捨てて森に逃げろ」


 これ見よがしに真横を通り抜けたら、集まっていた歩兵のほとんどが走り出しました。

 それを見た騎士達も自分達の主人を説得して逃げようとしています。


 僕達ははそのまま森の中へ逃げこみました。

 急いで馬を止めて降りたら、馬がフラフラと歩いてそのまま倒れてしまい、次は自分達が死んじゃわないよう、慌ててプレートアーマーを脱ぎ捨て、岩かげや藪の中にかくれました。



 すぐに歩兵達が追いついて森に走りこみます。

 僕たちが脱ぎ捨てたフルプレートアーマーを見て、自分達も次々と防具を脱ぎ捨てて軽くなって走り込んで行きました。


 その後すぐ、物凄い地鳴りが聞こえて、さっきの騎士達が森に走り込んできました。

 騎士の人達は、横着して馬から降りようとしなかったので、森の木の枝に首を引っ掛けて地面に叩きつけられています。


 僕はあまりに面白すぎて思わず笑いそうになりましたが、バレたら確実に嬲り殺しにされるので我慢しました。


 だって今まで僕ら亜人をバカにしたり、気に入らないって理由で近所の優しかったオバさんを斬り殺しちゃってた騎士達が、大慌てでコントみたいな事やってるんですよ。

 嬉しくて嬉しくて、今日初めてこの特等席を用意してくれた姫様に心から感謝をしています。


 騎士のコントを見ていたら、何だか凄く偉い人達が徒歩の兵士達に守られて森の中に入ってきました。

 よく見たら、今朝姫様に連れられてご挨拶に行った敵の偉い人がいます。


 あの時に見た若々しさとは違って、こんなお爺ちゃんでしたっけって何度も見直してしまいました。


 大変ですね。


 その後も下の戦場から逃げ込んできた兵士達が続いて森に入っていき、もう誰も来なそうってなってきたので、外に出ることにしました。



「おい、皆んな、そっちはどうだ? 大丈夫かそうか? もう敵は上がってきてなさそうか?」

「こっちは大丈夫でーす」「左もいけます」


「よーし、森から出るぞ、姫様は俺たちのドワーフのヒゲで見分けがつくから味方に撃たれないって言ってた。でもそーっと出るぞ」

……


 皆んなの沈黙が痛いほど突き刺さってきます。


 森の切れ目からゆっくりと明るい所まで出てきたら、近くの丘の上まで姫様達の鉄砲隊が上がってきているじゃないですか。


 あ、よかった。

「ひめs……」


ドオオオーーーーーン!

ドドドオオオオオオン!


 いきなり物凄い地響きがして空気が揺れます。


 え、何が起きたの?


 はっ、そうだ味方に撃たれちゃいけないから大声で呼びながら出て行かなきゃ。


「おードドドオオオオオオンー撃たないドオオオーーーーーンでくれー」


 声が聞こえないほどの地響きです。

 しょうがないので、ゆっくりと外に出てきました。


 あ、姫様と目が合った、良かった。

ヒュンっ!


 え?


ピュン、ピュン。

 うわったっった、撃たれてる


「撃たれてる撃たれてる、皆んな伏せろ」


 姫様ドワーフだから撃たれないって言ったじゃないですか。


 あ、射撃辞めてくれたみたいです。

 フェイ副官が『もう撃たないから出ておいでー』って言ってます。


 僕らはズボンの前をグショグショに濡らして出てきました。

 屈辱ですよ。これは、後で抗議します。


 姫様の所まで走って出てきたら、



「よく生きてたな」と一人一人抱きしめてくれました。

 僕はもう一度オッパイを揉みたかったので手を出したら、バックドロップと言う技で投げられました。


 理不尽です。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る