第11話 おっぱい
「ううう、怖いよお」
姫様に命じられてとんでもない作戦をしなくてはいけないのです。
あの姫様はちょっとおかしい所が昔からあって、僕は色々と疑ってはいたのですが、とうとうこの命を差し出さなくてはいけなくなったようです。
今目の前の箱を開けると、ピカピカの騎士様の鎧が入ってるじゃないですか。
「いいかい、ベック、一度しか言わないからよく聞きな。敵から目隠しできるように、端っこに矢盾の大きな板を置いている場所がある。今からそこに馬に乗って行って、箱の中の物に着替えな。合図をしたら川の中を迂回して戦場のど真ん中を走り抜けるんだ」
……姫様は僕に騎士様の仕事をやれと言っているのでしょうか? 僕は技官ですよ。
「おや、不安そうだね。でも大丈夫。槍も剣も持たせないから戦わなくていいんだよ」
……武器なしで敵中突破ですか、そうですか。
「何か勘違いしているようだが、あんたの戦闘力に期待はしてない。ドワーフの大声に用事があるんだよ。もうすぐ敵本陣をうちの鉄騎兵が襲って壊滅させる。そうすると前線で戦っている騎士も慌てて浮き足立つだろう。で、お前達の出番だ」
……何をさせる気なんでしょうか。
「敵騎士の真似をして敵中で『俺たちは負けたー、もうダメだー』って走ってこい」
……この人怖いよお。
「一番大事な事を伝える。敵中で煽るだけ煽ったら『もうダメだ、森だ森に逃げ込まないと死ぬぞ』って叫んで上の敵本陣へ駆け込んでそこでも同じ事を叫べ」
「…はい」
僕に拒否権はない。
「それからな、上まで行ったらそのまま森に一番に走り込めよ。正体がバレないように止まるな、森に入ったらさっさと鎧は捨てて森の入り口付近に隠れていろ。敵が通り過ぎたら出てきていいぞ」
「……敵が森に入った後に、森から出てきたら、もしかして味方の鉄砲に撃たれませんかね?」
姫様がキョトンとした顔をしている。これは気がついてなかったね。
「ふふふ、大丈夫だ、それもちゃんと考えている…えーっと…お前達はドワーフだから見ただけですぐ分かる。しんぱいするな。行ってこい」
これで心配するなと言うのですね。
もう何もかもがやる気無くなってしまいます。どうせ死んじゃうんだから。
……
僕が死にそうな顔をしていると、前に立ってる姫様が困った顔になっていました。
「んー、しょうがないね」
突然、姫様が自分の革鎧の胸元の紐を解いたかと思うと、僕の右手を掴んで、革鎧の胸元に僕の右手を突っ込みオッパイを揉ませたのです。
「なーーーー」
周りの護衛も副官のフェイも目を剥いてます。
僕は突然すぎて何が起きたのか分からなくなっていたら。
「お、ちょっと元気出てきたな。やっぱり男はオッパイだな。ほれ、行って仕事してこい」
僕がそんな事ぐらいで元気になるだなんて、安く見られたもんです。
それにしても以前、フランソワの服の上からなら揉んだ事はあるのですが、生オッパイは初めてでした。
こう、なんて言うのか、フンワリとしていてそれでいて吸い付くような素敵なものですね。オッパイ。
僕がスキップしながら現場に向かっていると、姫様の護衛が『実はわたくしも元気がなくて…』『お前嫁がいるだろうが、ボケッ』
そのまま鉄拳制裁をされていました。
僕が左翼の端っこに着くとドワーフの部下達がいます。彼らはみんな青い顔をしていますが『大丈夫大丈夫、俺がついてるからな』って言ったらジト目で睨まれました。
僕も早速着替えて馬の準備をしていたら、丘の上にある敵本陣から煙が上がっているじゃないですか。
正直信用していなかったのですが、本当だったのですね、姫様さすがです。
さて、準備もできたので合図を待ちます。
横に立っていた武官の人が僕に行けと言っていますが、馬が言う事を聞かず動いてくれません。
僕は産まれて初めて馬に感謝してたら、武官の人が馬の尻を剣のヒラで叩いて飛び出して行きました。
「うわわわわわああああ」
叫びながら頭の中が真っ白です。
まっすぐ走っていたら、後ろから追いついて来た部下達に呼ばれてようやく自分の役割を思い出しました。
「方向転換、敵のど真ん中に突っ込んで作戦を開始する」
カッコイイ、きまったな僕。
慌てて方向転換をして敵のど真ん中に突っ込もうとしてたら、何か変な音が聞こえます。
ピュン、ピ、ピュン
あ、味方の鉄砲から撃たれてませんかね?
うそーん。
姫様全然そんな事説明なかったじゃないですか。
それにしても銃口を横切る形で走り抜けていたら、中々当たらないものですね。
泣きながら敵に突入して僕たちは叫びます。
「負けたー、俺たちの本陣が燃やされてる、早く逃げないと皆殺しにされるぞー、急いで森に逃げるんだー、森に逃げたら助かるぞ」
味方から撃たれたらシャレにならないので、さっさと中から出て上の森へと走り出しました。
後ろを振り返ると、敵騎士達が総崩れになっています。
前に出ようとするイノシシ騎士と、後ろに逃げようとする騎士で身動きできないようですね。
敵さんの傭兵団の生き残り達はさっさと走り出しています。
僕は彼らに大声で森に逃げろと叫んで走って行きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます