繚華の人名録 第Ⅱ版

<旅の仲間>

クロイツ……

 18歳。男性。本作品の主人公。真龍たるアリシアの龍戦師。ホローン・アルトゥーン出身。父はアーガス(故人)、母はシャム。兄が1人、傭兵として遠方に就業中。

 恵まれた体格と群を抜く戦闘感覚で、武術学校では学年次席の座を占めていた。卒業生対抗仕合では最終日まで全勝を上げて、同じく全勝のロアークと決勝戦となる。だが、奮戦するも、ロアークが優勝するよう審判の買収まで仕組まれた出来仕合を崩せず、判定負けとなってしまった。直後に、正体を現した真龍のアリシアの要請により、彼女の龍戦師となった。

 武術学校を即時卒業となったことにより、アリシアの計画に従い、王都へ上って傭兵団を組織することに。しかし、市長夫人の策略により一家が市中で孤立。そのうえ、領主であるエスクァルディン伯の娘を王都へ送り届けるという名目で、町を追い立てられることになってしまった。

 母とコーリンを伴ってビギナダートへの途上、ホローン・アルトゥーンが魍魎の軍勢に襲撃されたことを知り急行するも、駆けつけた目の前でサーシャが殺されてしまう。怒りと絶望の中、市街戦にて龍の力が切れるまで多数の魍魎を討ち取り、本復の眠りについた。

 今巻では前巻と打って変わって、旅に明け暮れます。哀しみを引きずったまま。


アリシア……

 年齢不詳。女性。真龍。体毛は赤。人間体の時は、20歳前後の落ち着いた風情を見せる細身の女性。だが奔放な性格から、たまに奇矯な言動に走り、クロイツたちを悩ます。

 『ホローン・アルトゥーンに召使の口を探しに来たクロイツの従姉』という触れ込みで、遠く離れたフェックネル村からやってきた。クロイツの部屋に同居していたのだが、寝る間際にクロイツの寝姿を衝立の陰から凝視するなど不思議な言動を取るようになる。その正体は、イラストリアの神々が作り出した魔神封印のための生命体、真龍の1体であった。

 彼女の龍戦師となったクロイツとともにビギナダートへ向かう途上、ホローン・アルトゥーンが魍魎の軍勢に襲撃されたことを知り急行。魍魎を攻撃しつつサーシャの行方を捜すが、彼女が致命傷を負った現場に間に合わず、涙を流すことになった。その後はクロイツの魍魎討伐を支援し、本復の眠りについた彼を担いで旅を再開した。

 今巻でも相変わらず。しかし、正体を明かしたゆえの指導者的立場からの発言が多めです。


ティア・エスクァルディン……

 15歳。女性。エスクァルディン伯女で、3男1女の長女。華章はニゲラ。王都にある王立女学校の生徒。生まれは王都だが、居城であるビギナダートで育っている。

 赤毛のポニーテールが特徴的な美人。大人びて見えるのは、貧乏貴族ゆえの世知辛さゆえか。

 ホローン・アルトゥーンへ武術学校の卒業生対抗仕合を観戦に訪れ、準優勝したクロイツに賞を授ける役として邂逅している。

 帰省していた彼女を王都まで護衛するのが、クロイツとアリシアの初仕事ということになります。すんなりいくはずもないんですが。


ウォレス……

 61歳。男性。エスクァルディン伯の家臣で、ティアのお守り役。高齢ゆえ戦闘では後方で荷物番が多いが、それ以外では世知に長けたお人。

 前巻ではメルロイド卿の裏事情を知っているなど、渋い役回りを見せてくれました。今巻は少し茶目っ気を出すようです。


<ヴァンディーノ公家>

メイ・クラウス・ヴァンディーノ……

 19歳。女性。ヴァンディーノ公の長女でクトルブルク大伯。真龍たるベリウスの龍戦師。公領の都たるヘキサダート出身。2男1女の真ん中。華章はルクリア。

 やや細身ながら均整のとれた体躯を持つ武人。顔立ちは整っているが、やや童顔のきらいがあり、本人は気にしている。そしてなにより群を抜く高身長で、いい意味でも悪い意味でも人目を引く女性である。


ベリウス……

 年齢未詳。男性。イラストリアの主神たるキラカヴィア大神おおみかみらが創り出した真龍の1体。体毛は黒。人間体を取る時は、初老の男性の姿となる。武家貴族の一員を龍戦師とすることで、速やかな戦力化を図ることを信条としている。


ゴート・ザマツカヤ……

 46歳。男性。リーガハン伯。ヴァンディーノ公の直臣で、メイに与力として付けられている。堅実な部隊運用で、家中でも一目置かれている。


バーガイン・ミコセッシタイン……

 25歳。男性。メイの直臣。とある伯家の三男坊で、自慢の剣の腕を試すためと称して剣闘士になり、親に勘当された過去を持つ。もっとも、小さな所領の伯家に三男坊の居場所など無かったのではあるが。


サレ・イエルマ……

 55歳。女性。アルガリブ伯。メイが率いる軍勢の歩兵隊を率いる貴族。


クーリッシ・メテツィ……

 48歳。男性。ニルアーマ伯。メイが率いる軍勢の歩兵隊を率いる貴族。


ボナーラ・メテツィ……

 14歳。女性。クーリッシの末娘で、メイに貴族見習いのため従卒として付けられている。


ヴァンディーノ公……

 51歳。男性。王国の北方を統括する公家の長。病が癒えたものの、まだ体調は優れない。


ヴァンディーノ公妃……

 44歳。女性。なにかと口を挟むことが性分のうるさ方。それが実を結んでいるかどうかは、これまでの平穏な時期ならさほど問題とはされなかっただろう……


<ランブリッシュ公家>


アマリエ・ミーム・ランブリッシュ……

 20歳。女性。ランブリッシュ女公の妹。華章はフヨウ。やや小柄ながら魅惑的な外見の持ち主。読書家の域に収まらない知識人で、その目は涼やかだが、人によっては冷ややかでもある。

 姉から、クベルネス伯領を化粧料としてあてがわれている。

 ……という微妙な表現がどういう意味を持つのかは、次巻で明らかになるでしょう。


クロヴィア・ユーグ・ランブリッシュ……

 28歳。女性。ランブリッシュ公。王国の西方を統括する公家の長で、5年前に夫に先立たれて以来、一族の補佐を受けながら公家を切り盛りしている。直系であるため異を唱える者はいないが、その代わりの再婚催促に悩まされている。作中の台詞では無いが、王侯貴族にとって結婚は政治なのだ。

 今巻は顔見せのみ。


<エスクァルディン伯家>


エスクァルディン伯……

 50歳。男性。ホローン・アルトゥーンを含む所領を有するが、領内にこれといった産業がなく、貴族としての体裁をかろうじて保てる程度の貧乏に甘んじている。それゆえか、人や時流を見抜き、将来を見据える目は確かである。


<戦闘者たち>


ヴァクエル……

 42歳。男性。王都在住の傭兵。ティジェルンの異母兄。やや細身の長身で、豊かな髭を蓄える隻腕の男。


ティジェルン……

 40歳。男性。王都在住の傭兵。ヴァクエルの異母弟。兄より少し低い身長と、彼より豊かな横幅の体格の持ち主。大剣を使う。ウォレスとは別の分野で世知に長けている。


レパント……

 21歳。女性。とある傭兵団所属の傭兵。バリバリの武闘派。


ルーウェン……

 34歳。男性。ゴッレム守備隊の隊員。温厚で頭も回る人柄を買われて、クロイツたちの仕事に目付として任命される。


ドリムーラ……

 31歳。女性。ユポレスク候が持つ歩兵隊の隊員。目も鼻も口も大振りな、醜女とも言えず美女とも言えない派手な顔、それを縁取る赤い髪と、なにかと目立つ存在。もちろん戦闘者としての資質、経験ともに十分である。


レバレージ……

 29歳。男性。ゲッティキル伯の歩兵隊員。精悍な顔立ちを無精髭が台無しにしている、頑健そうな体つきの男。


シュトク……

 62歳。男性。舟橋の架橋現場でクロイツたちが出会う、流れの傭兵。以下の7人をまとめている。過去のいきさつから酒浸りだが、腕は確か。


ラジル……

 41歳。男性。流れの傭兵。やや小柄な固太り。戦闘におけるしぶとさは、シュトクの率いる集団の中でも群を抜く。


アルティーナ……

 38歳。女性。流れの傭兵。左頬の剣傷が目を引く、いかにも戦闘者という雰囲気の女性。


ベネズ……

 38歳。男性。流れの傭兵。自称・槍の名手。金稼ぎに執着を持つ。同年のアルティーナとはなにやら因縁があるらしい。


コスタ……

 39歳。男性。流れの傭兵。隻眼の男。この集団の全員に共通のことであるが、彼もまた隻眼となった過去を語ることはない。


ラグアイヤ……

 47歳。女性。流れの傭兵。シュトクの補佐役的立場を担っている。そのため、一部の人間には煙たがられている節もある。


チリデリカ……

 36歳。男性。流れの傭兵。細面。集団の財布番として、シュトクの酒ねだりと戦う日々である。


リナム……

 16歳。女性。流れの傭兵。小柄で細身。彼女のみ、集団の他の人間と齢が離れているが、特に気にすることもなく過ごしている。自らを傷つけられることに過敏で、それゆえシュトク組以外の人間と会話を交わすことすら稀である。


<ホローン・アルトゥーンの住人たち 今後物語に関わってくる巻で、履歴復活>


サーシャ……

 20歳。女性。本作品のメインヒロイン。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。3男4女の末っ子。クロイツ、コーリンとは幼いころよりの遊び仲間。

 武術学校に入学した経緯が経緯だけに危ぶまれたが、主任教官曰く「驚異的」な速度で課題を克服して、学年でも上位の実力に育ちつつあった。幼馴染のクロイツに想いを寄せ、クロイツもそれに応えて、短いあいだながらも恋人であったといえるだろう。

 だが、御側衆ニカラの率いる魍魎の軍勢が街を襲撃。その混乱のさなか、旅立ったばかりのクロイツが戻ってくると確信した彼女は東門へと向かうのだが、あと少しのところで魍魎の不意打ちに遭い、殺されてしまう。その身を抱きかかえて懸命に呼びかけるクロイツに遺言を残し、息絶えた。


ケビン……

 18歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。市街戦のさなか、婚約者であるミリアを救いに学校を飛び出し、彼女共々アリシアに助けられた。その後の消息は不明。


ミリア……

 16歳。女性。ホローン・アルトゥーン在住の元武術学校生。市街戦のさなか、婚約者であるケビン共々アリシアに助けられる。その後の消息不明。


キリル……

 18歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。市庁舎防衛戦における学生隊指揮官。その後の消息不明。


ネーニャ……

 19歳。女性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。市庁舎防衛戦で奮闘していた。その後の消息不明。


シール……

 19歳。女性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。市庁舎防衛戦で涙にくれつつ奮闘していた。その後の消息不明。


ボード……

 18歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。市庁舎防衛戦に参加できたどうかも含めて、その後の消息不明。


コーリン……

 15歳。女性。デメティアの元侍女。1男5女の3女で、口減らしも兼ねてディバッサ家に女中奉公に出されていた。クロイツ、サーシャとは幼馴染。

 市長夫人の策略で、クロイツを嵌める罠に使われるも、アリシアたちはそういった攻撃が来ることを予期していたため頓挫。彼女はアリシアに保護され、一時的にシャルリ教官にかくまわれた後、クロイツの母の移住に同行することとなった。


キアボ……

 50歳。男性。ホローン・アルトゥーン市長兼商人頭。ロアークの父。市街戦を市庁舎の塔で迎えるが、自身の屋敷が魍魎に襲撃されていることを知り、昏倒した。


ミチェリア……

 48歳。女性。キアボの妻、ロアークの母。市街戦を夫とともに迎えたが、相変わらずのロアーク贔屓ぶりに、夫を鼻白ませた。


サトリフ……

 56歳。男性。武術学校の主任教官。市庁舎防衛戦における指揮官キリルを支え、また演説によって防衛隊の士気を鼓舞した。その後の消息は不明。


キーマル……

 30歳。男性。武術学校の教官。龍戦師となったクロイツに、我が家の秘伝と称する剣の奥義を授けた。市庁舎防衛戦に参加できたどうかも含めて、その後の消息不明。


シャルリ……

 37歳。女性。武術学校の教官。龍戦師となったクロイツに、女性との付き合い方などについて講釈を授けた。魍魎の襲撃時、1年生を率いて市の北門から脱出する役目を担った。その後の消息不明。


守備隊長……

 55歳。女性。読んで字のとおり、町の守備隊を指揮統括する隊長。魍魎の襲撃初動において南門で指示をしていたが、それ以降の市街戦はおろか市庁舎防衛戦にも姿を確認できず。その後の消息は不明。


副隊長……46歳。男性。魍魎の襲撃初動において南門で迎撃の指揮をしていたが、逃げ来るロアーク一味の保護を優先した守備隊長の指示により南門を閉鎖できず、魍魎に門の突破を許してしまう。守備隊員に守備隊本部への退却を指示して自らは殿となり、奮戦の末戦死。


<ユポレスク候家>


ユポレスク候……

 32歳。男性。他者と会話が成立するだけましな、凡庸と言うもおこがましい肥満体。家政が回るのは家宰のおかげであり、家勢が衰えつつあるのは側近の跳梁を許す候の不明による。


リース……

 55歳。男性。バミナム伯にして、ユポレスク候を支える切れ者の家宰。いや、支えているのは候領そのものであり、かの愚鈍候ではない。


<ロアーク一味>


ロアーク…

 18歳。男性。ユポレスク候の家士。ホローン・アルトゥーン出身。父は市長兼商人頭のキアボ、母はミチェリア。2人兄弟の弟だが、兄を早くに亡くしている。

 長身に爽やかで端麗な面立ち、弁舌もいたって闊達。戦闘者としての才能はクロイツに勝るとも劣らず、また幼少よりの(母親からの溺愛込みの)英才教育で文才も併せ持つため、武術学校の成績は学年首席であった。にもかかわらず、身内から寄せられる以外の人望がないという人物。ゆえに父親は、卒業生対抗仕合の褒賞である『候爵家家士への取立て』を果たすべく、策動していた。

 自らと張り合う形となったクロイツに対して、いきり立つ取り巻きを鷹揚な態度でいなすなど、大物感を漂わせていた。が、実際は実力を認めつつも生まれから来る優越感から見下すなど、複雑な一面も見せている。

 そのクロイツとは卒業生対抗仕合最終日に全勝同士で対決。仕合前、クロイツを愚弄するような小芝居を(本人にその自覚があったかどうかは疑わしいが)演じて彼の怒りを買う。その激情をそのまま乗せた長槍による殴打の嵐をかろうじてしのぎ、父親が仕組んだ出来仕合の台本どおり(これも本人が知っていたかは不明)、勝利と家士への立身を獲得した。

 その後、連日の祝宴の気晴らしに出かけた狩りで御側衆ニカラの軍勢と遭遇し、街の南門を閉鎖させないための囮に使われる。そのまま市庁舎に逃げ込み、口だけは勇壮なことをほざいていた。

 今巻では、彼にとって衝撃的な展開が訪れます。大した紙数は割きませんが。


デメティア……

 18歳。女性。父は副商人頭のディバッサ。3男2女の長女。ロアークの恋人であり、クロイツが密かに想いを寄せている女の子であったが、卒業生対抗仕合の最終戦前に行われたロアークからの求婚に応えた。現在はボンティダート市内の屋敷でロアークと同居中。

 今巻では、その思考の奥深さと浅さを見せてくれます。悪気はまったくないんですけどね、この人の場合。


ティボル……

 17歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。槍職人の息子でロアークの取り巻き。


メルク……

 18歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。小間物屋の息子でロアークの取り巻き。


ゲータ……

 18歳。男性。ホローン・アルトゥーン在住の武術学校生。仕立て屋の息子でロアークの取り巻き。

 自称知恵者。卒業生対抗仕合の最終戦前に行われたロアークの小芝居で、デメティアに求婚させる筋書きを書いた。それはクロイツに精神的な打撃を与えようとしたゲータの小細工であったが、クロイツは望み薄であることを薄々自覚しており、また既にサーシャから好意を寄せられていたこともあって利かず、逆に未練を断ち切らせる結果となった。

 面倒だからここにまとめて書きますが、上記3人、どいつもこいつも戦闘者としてはケビン以上ミリア以下です。見た目とても元気溌剌爽やかさんなんですが。

 そして今巻でもまとめて、まったくもって使えねぇ……


ギュス……

 51歳。男性。ロアーク付きの奴隷。ロアークの剣指南であり、また副業として街の子たちを集めて郊外で剣を教えていた(クロイツもその教え子の一人であった)。主に従ってボンティダートに移住している。

 この人とデメティアしか駒がいない、ロアーク一味の明日はどっちでしょうね……



○長さの単位について

 文章中では現地の単位のあとに括弧書きでこちらの単位に直して表記しています。一応、下記に表記します。

1バイラル(=約2.2センチメートル)

10バイラル=1キュビト(=約0.22メートル)

100キュビト=1テトラルク(=約22メートル)

100テトラルク=1ペネタ(=約2200メートル)


○通貨の単位について

 これは日本円での括弧書き表記はしません。揚げパンが5コペタということで、お察しください。

1小銅貨「コペタ」

1大銅貨「マニュスタ」=10小銅貨

1銀貨「シルカ」=50大銅貨

1小金貨「アウルド」=10銀貨

1大金貨「グラン・アウルド」100銀貨

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

繚華の人名録 タオ・タシ @tao_tashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る