ふるさとカフェ

御手紙 葉

ふるさとカフェ

 私は額を流れる汗を拭うことも忘れて、ただその畦道を歩き続けていた。周囲には一面に田んぼが広がっており、近くの山からけたたましいほどの蝉の鳴き声が反響していた。本当に夏真っ盛りと言うような景色が広がっていた。

 私はスーツケースを引いて、ずっと足を踏み出していたが、そこでこの村を離れた日のことを思い返してしまう。

 ――こんな家、潰れてしまえばいい!

 ――私だって、あんたの大事な物を奪ってやるよ!

 あの時、罵倒の声を吐き出した自分は本当に若く、今では少し罪の意識もあった。だが、この村を出たことを後悔はしていなかった。あの当時、私にはどうしても譲れない想いがあったのだ。それを否定されるのは、もちろん今だって嫌なのだ。

 そうして畦道から坂を上がり、鬱蒼と生え渡る木々の間を抜けていくと、やがて視界が開けた見渡しのいい場所へと辿り着いた。

 ようやく村への入り口に来たか、と私はハンカチを取り出して額の汗を拭いた。だが、そこで顔を上げ、私は思わず「え」と声を漏らしてしまった。

 十年前にはなかったその店が、入り口に建っていたのだ。それは一見ログハウスのような造りをしていたが、まだぴかぴかと輝くように新しかった。

 なんでどうしてこんなところに……と私は思わず立ち尽くしてその店をじっと見つめた。屋根から小さな窓が一つ覗いた、どこか異国の雰囲気を醸し出した建物だった。一階にはテラスがあり、テーブルがいくつか配されていた。

 こんな田舎に喫茶店があるとは信じられず、私は思わずスーツケースを引いて店先まで近づいていた。店の前にはブラックボードが置かれていて、喫茶店『ミューズ』と書かれていた。

 ジャズ喫茶か、クラシック喫茶か、と私は興味を惹かれたが、そこでふと足を止めた。この店に働く人が、もしかしたら昔の知り合いかもしれないのだ。

 村に帰郷したのだから、知り合いに会うのは全く当然のことなのだが、それでも顔を合わせるのは気が引けた。私には元々友達もおらず、この村ではいつも一人で行動していたのだ。ただ、一人だけ仲良くなろうとしてくれた女の子がいたことも確かで、彼女は今どうしているのだろう、とふと思った。

 こうして逡巡していてもしょうがないと思い、私はそっとスーツケースを引いて、店内に入ることにした。ガラス張りのドアを開いた瞬間、その透明感のある音色が聞こえてきた。

 それは、モーツァルトのピアノソナタ ハ長調 K545 第2楽章だった。クラシック好きの私はその選曲にこの店が好きになってしまった。BGMだけでなく、その店内の様子がとても落ち着いていて、私好みだったのだ。

 私がドアを潜った瞬間、カウンターの奥で何か作業していた男性がこちらへと振り向き、「いらっしゃいませ!」と挨拶してきた。

 私は彼が知り合いなのではないか、と身構えてしまったが、スーツケースを引きながら店内に入ってくる際にその顔を見ても、知っている顔ではなかったのだ。

 短髪の艶やかなその細身の男性は、エプロンを着けてカウンターを拭いているようだったけれど、私が歩み寄ってくると、すぐにカウンターを回って側に立った。

 なかなか背がすらりと高く、顔も端正だった。どう見ても二十代後半ぐらいに見えるその男性は、「お好きな席へどうぞ」と店内へと手を差し向けた。

 私は周囲を改めて見渡してみたが、七色のランタンが淡い光をカウンターに落としており、壁には踊り子の絵が掲げられていた。ゆったりと間隔を置いてテーブルが配されていた。

 私は少し逡巡した後、テラスに続くドアへと振り向き、「そちら、いいですか?」と首を傾げてみせた。「とても見晴らしのいい場所みたいで、ちょっとゆっくりしてみたいんです」

「えっと、暑い場所かもしれませんが、よろしいですか?」

 男性がその人の良さそうな笑顔を少しだけ困ったように変えて、言った。私は頷き、テラスへと続くドアを開いた。

 その瞬間、ふわりと柔らかい風が吹き付けてきて、私の長い髪を浮き上がらせた。いい風、と思わずつぶやきながら私はテラスへと足を踏み出したが、そこで「いらっしゃいませ!」と明るい声が聞こえてきた。

 すると、カウンターの奥の厨房から一人の女性が歩いてきて、彼女はウェイトレスの服装をしており、弾むような足取りで近づいてきた。

 私は彼女の顔を見つめて、その花が咲いたような笑顔に目が惹き付けられるのを感じた。濃いブラウンの髪を黒いゴムで結わえていて、その房はきらきらと照明の光に煌いた。

 オーナーの男性と並んでも、そう変わらないほど背が高く、スカートから下には、とても美しい足が覗いていた。私は彼女へとそっと振り向き、頭を下げた。

「お邪魔しています」

「テラス席、ですね。今窓を開けて、冷たい風が当たるようにしますので」

 ウェイトレスはそう言って、すぐにテラス側の大きな窓を開けて、店内の冷房の効いた風が吹いてくるようにした。私は彼女の細やかな気配りに、とても優しい人だな、と思った。

 単なる店員としての配慮だけではなく、人に対する深い思いやりを感じたのだ。私はテラスの中央の席に腰を下ろして、脇にスーツケースを置いた。

 目の前に小さな柵があり、その向こうはもう感嘆してしまうほどに美しい景色が広がっていた。なだらかな山々の稜線は鮮やかなグラデーションを描いて美しく、先程私が歩いてきた畦道は一面の緑で囲まれていた。

 何よりも素晴らしいのは、この丘の上から見える景色がどんな障害もなく、一面に見渡せるものだということだった。私は魂を奪われそうになるほど見惚れてしまった。

 そこでウェイトレスの女性がメニューを持ってきて、私に差し出した。ちらりとコーヒーの欄を見て、すぐに「マンデリンで」と言った。「それと、マンデリンに合う甘いデザートを……ショートケーキを一つで」

「かしこまりました。準備が済むまで、ゆっくりと景色を堪能してくださいね」

 ウェイトレスはそう言って丁寧な礼をすると、すぐに店内へと戻っていった。私はその後姿をじっと見つめて、本当に自然な客への応対に心地よく感じ、とてもいい人だな、と思った。そうして、彼女が知り合いではないことに、ほっとしている自分がいた。

 私は再び視線を山麓の風景へと向け、じっとそれを眺めながら色々と当時のことを思い出して、懐かしく感じた。まさか、吐き気がするほどに嫌いだったこの景色が、何物にも代え難い貴重な財産であると感じるなど、自分は本当に変わったのだな、と思った。

 雲一つない青空の下で、緑が微風に揺れ、優しく流動していた。その田舎の景色は、都会で長年暮らしていた私の心を、瞬時にほぐして癒してくれた。

 なんて素敵な場所なのだろう、と心から思った。そして、こんなにもこの故郷を好きになろうとしているのはどうしてだろう、と私は考えた。

 そこでふと「失礼します」と背後から声が聞こえて振り向くと、ウェイトレスの女性が満面の笑みで立っていた。「マンデリンとショートケーキをお持ちしました」

 私は小さくうなずき、そっと乗り出した上半身を引いて、彼女がテーブルにカップとソーサ、ショートケーキの皿を置きやすいようにと気を遣った。

 ウェイトレスはテーブルの上に配し終えると、こちらへとまっすぐ顔を向け、そして明るい声で言葉を続けた。

「この店にはレコードとCDのコレクションがたくさんあるのですが、何かリクエストはありますか? 常連のお客様が来るまでの間なのですが、店内に音楽をかけさせていただきます」

 私はそのとても嬉しい配慮に、思わず口元を緩ませ、うなずいた。「じゃあ、デヴィッド・ボウイのハンキー・ドリーのアルバムをお願いします」

 ウェイトレスは「かしこまりました」とうなずき、すぐに店内へと戻っていった。私は木製の椅子に深く身を沈ませ、大きく、大きく息を吐き出した。

 そして、自然に体を溶け込ませるように全身の力を抜いて、ただひたすらリラックスした心地でその景色を眺め続けた。丘から背の高い木々が続いており、それはちょうど柵の向こうに見下ろせる位置にあった。

 田園風景のずっと先に、小さく駅が見えて、そのさらに先にはどこまでもどこまでも山々がなだらかなラインを描いて続いていた。

 そうした景色を見つめていると、自分が故郷を離れていく時のことをどうしても思い出してしまった。ちょうど私はあの畦道をリュック一つで駆け抜けていって、駅へと飛び込んだのだ。そうして、振り返ることなく、そのまま列車に乗って都会を目指し、旅を続けたのだった。

 私がデザイナーを目指したいと思ったのは、たぶん中学生の時にとある雑誌を近くに住んでいた家族から譲ってもらったからだ。私はその都会的な内容の雑誌を見るうちに、初めてデザイナーという仕事を知った。そして、あっという間にそのお洒落な響きに心奪われたのだ。

 私、デザイナーになりたいんだ。

 そう両親に打ち明けた時、彼らは私が都会に出ることに猛反対した。家業である農業の仕事があったし、二人ともこの村の出身で都会に出たことがなかったので、それは最も敬遠すべき選択肢だったのだ。

 そうして私は両親と喧嘩を重ね、この村に対する自分の見方が次第に変わっていくのを感じた。この自然に囲まれた環境がただただ嫌で、私は何とかして都会に出て自分の夢を叶えたかった。

 そうしてとうとう高校三年の夏、私は両親と大喧嘩をして、家を出る決心を固めたのだ。

 私は父親と取っ組み合いの喧嘩をして、そして髪を乱れさせながら唾を吐き散らして叫び、最後に父親の大好きなイーグルスのコレクションへと手をかけた。そして、こう叫んだのだ。

 ――こんな家、潰れてしまえばいい!

 ――私だって、あんたの大事な物を奪ってやるよ!

 そうして私はその棚を思い切り床に叩きつけ、そのCDをめちゃくちゃにしたのだ。ケースの破片が散乱し、中のCDが飛び出して割れた。

 私はそれを見て、胸の奥で何か大切なものがひび割れてしまった気がした。だが、もう後戻りできないところまで来ていた私は、そのまま近くにあったリュックを手に取り、家を飛び出したのだ。

 最後に視界をよぎった父親の顔はただ歪んで青ざめていた。髪には白いものが全く混じっていなかったが、その髪は汗で額へとべったりと張り付き、唇をずっと噛み締めていた。口を開け閉めするが、頭が真っ白になって、声を出すこともままならなかったらしかった。

 それが最後となって私は都会へと出ていき、今の今まで故郷に一度も帰ったことがなかったのだ。都会での私の生活は本当にいつ死んでもおかしくないほどに過酷なものだったが、それでも私は夢に向かって奔走した。

 どんなに苦しくても、夢があったから生きてこれたのだ。ある意味、私のそうした人生は幸せなものだったのかもしれない。

 だが、取り残された両親はどうだったのだろう。たった一人の娘を失い、その人生はどんなに苦しくて歪なものだっただろう。

 去り際に、父親の大切なコレクションを壊したことは、明らかにやりすぎだったと反省している。なんであんなことをしてしまったのだろう、と今でも思い出す度に拳を握ってしまう。私がしたことが、どれほど父を傷つけたのだろうか、と。

 当時のことを長い間、私はじっと考え続けていた。だが、そんな回想は、突然彼女の言葉で遮られたのだ。

「コーヒー、熱いうちにお飲みくださいね」

 私はようやく我に返り、背後へと振り返った。すると、ウェイトレスの女性がその場から立ち去ることなく、ただ私を静かに見つめていた。

 私は彼女のそのどこか深い感情の篭った眼差しに、前にもどこかで感じたような懐かしさを覚えた。

 私が彼女をじっと見返して何か言葉を絞り出そうとしていると、ウェイトレスはにっこりと笑顔を浮かべて言った。

「あの、私のこと覚えていますか?」

 私はじっと彼女を見つめた。だが、その美しい細面の顔を見ても、記憶が呼び起こされることはなかった。

 私は彼女を知っているのだろうか、と心臓がドクンと鳴ったが、彼女は首を傾けて、ふ、と軽く息を吐き出して笑い声を零した。

「私、清水香織と言います。本当に覚えていませんか? あなたのこと、とてもよく知っていますよ」

 彼女の言葉を聞いた瞬間、ようやく記憶の扉が開き、そこから私の青春時代の思い出が呼び起こされた。彼女の顔を改めて見つめ、脳裏に浮かんだ学生の頃のその面影と重なったのだ。

 今の今まで全く気づかなかった。そう、友人のいない私にとって、唯一彼女だけが屈託なく話しかけてきてくれた知り合いだったのだ。

 だが、彼女とはあまり懇意ではなかったはずだ。彼女もたまに話しかけるだけで、私の事情など知らなかったのだと思うのだが。

 そこで、清水さんの目に唐突に涙が浮かんだ。それは瞬く間に溢れ出して、彼女の滑らかな頬を伝い、テラスの床へと染み込んでいった。

 私は思わず彼女の顔を食い入るように見つめ、彼女が何かを言い出すのを待った。

「私、あなたと会えて、本当に嬉しくて……突然泣いたりしてごめんなさいね」

 彼女の髪へと涙は吸い込まれていき、やがて彼女は顔を上げて目を細め、笑った。

「私、本当は千草さんともっともっと仲良くなりたかったんです。でも、思い切ってあなたと話したいと思っても、あなたがこの村を出たと聞いて……」

 おそらく私に何度か話しかけてくれたのも、彼女なりの気遣いだったのかもしれない。だが、当時私は夢を追うことに必死で、細かな配慮に返す言葉など出てこなかったのだ。

「それで、千草さんが去ってしまった後に、私はあなたのご両親と色々なことを話すようになって……仲良くなったんです。それで本当に、本当にたくさんの話を聞きました。それで私さっきは、あなたのことを『よく知っている』なんて言ったんです」

 私がこの村を捨て、一人都会に出て奔走している間に、そんなことがあったなんて全く想像もしなかった。私はいつも自分のことに精一杯で、誰かを思いやる余裕なんてなかったのかもしれない。

 それでも、私が両親にしたことは彼らを傷つけた最低の選択だったに違いない。私は強く自分のブラウスを握った。今頃になって罪の意識がふつふつと蘇ってきたのだ。

 私は清水さんが見守っている中で、少し冷めてしまったコーヒーを飲み、ショートケーキを食べた。マンデリンはコクがあって酸味が少なく、ケーキとの愛称が抜群だった。

 そうして心がとろけてしまいそうな、とても安らかな気分を味わいつつも、もう先程までのようなリラックスした気持ちはどこかへ去ってしまっていた。

 私はケーキを食べ終えて、そっと皿の上にスプーンを置くと、お絞りで口を拭いた。そして、改めて前方の景色を見つめた。

 視界を覆い尽くすその緑色のカーペットは先程と変わらずに同じ方向にゆっくりと流動していたが、その鮮やかなグラデーションが今の私の心には焼き付くように強い印象を残した。いつまでもこの景色を忘れまい、と私は強く思った。

 そっと椅子から腰を上げ、そして清水さんへと振り向いた。

「そろそろ行きます。コーヒーとケーキ、ごちそうさまでした」

 すると、清水さんの優しげな微笑みが少しだけ困った表情へと変わり、すぐに彼女は私に手を差し出して、その席に留まるように合図してきた。

「こんなことを言うのも恐縮なんですが、もう少しだけここにいたらいかがでしょうか。本当に久しぶりで、私も話したいのもありますし、それに……」

 彼女は何かを言いかけて、そしてすぐに拳をぎゅっと握った。私が所在なげに中腰のまま彼女を見つめると、清水さんは髪を左右に振って、そして穏やかな笑顔を浮かべて言った。

「あと数分だけ……ちょっとだけでいいですから、ここにいた方が、あなたも落ち着くと思うんです」

 私が彼女へと視線を向け、その言葉の意味を問おうとした時、突然店内に流れていたデヴィッド・ボウイの『フィル ユア ハート』が途切れた。

 すると、清水さんが髪の毛を跳ね上げるようにして背後へと振り向き、そして表情から戸惑いが抜けて、途端に立ち上がった。

 その瞬間、店内にその有名なギターの音色が響きだした。その音楽の響きに呼応するように私の心と全身が反応して心臓が大きく、本当に大きく震えた。

 その美しいイントロが始まると、私が生まれてから一度だって忘れたことがない、その記憶が殻を破って脳裏に広がった。

 あれだけ嫌っていた両親との思い出が、何故か次々と走馬灯のように駆け抜けた。私は目を見開き、そしてその音楽に耳を澄ませ、ただ凍りついていた。

 誰もが知っているそのカントリー・ロックの代名詞である名曲は、私の父親が大好きなイーグルスの代表曲だった。私があの時壊した棚の中に入っていたCDの冒頭の一曲だ。

 何故このタイミングで、父の好きな曲が店内に流れたのだろう、と思って振り向いたが、そこで私はどんな言葉も漏れてこなくなった。

 オーナーの男性がカウンターから出て、入り口に向かって礼をし、そしてドアベルが店内に響いて彼は叫んだ。

「いらっしゃいませ! 常連さんがご来店しました!」

 私が座っている席はちょうど入り口からまっすぐ伸びた場所にあり、ドアの前に立っているその二人の姿が見えたのだ。

 私がこの村にいた頃、何度も罵倒した相手だ。何度も取っ組み合いをして殴られ、それでも今故郷に帰ってきて話そうと思った相手だ。

 私は呆然と、父さん母さん、とつぶやいた。

 両親は私がテラスにいることに気づき、最初は赤の他人だと思ったらしかったが、すぐにその顔色が変わり、様々な表情が現れては消えていった。

 そして、二人の目に涙が浮かんだ。彼らは私の名前を呼ぶことも駆け寄ることもせず、その場にただ佇んでいた。

 この数十年で、本当にその姿も変わってしまった。髪には白いものが混じり、母についてはもう見紛うことのないような純粋な白だった。

 彼らはスーツを着て綺麗な身なりをしており、その物腰には柔らかさがあった。父の顔は相変わらず日焼けして浅黒かったが、その漲るような意志は今でも残っていた。

 そして、母のその笑顔は、いつもと変わらぬ優しいものだった。私は二人のその顔を見て、自然と目に何か熱いものが溢れ出すのを感じた。

 傍らにいた清水さんがそっと私の背中に手を置き、「ほら」と促してきた。私は小さく頷き、頬を伝う涙を拭うこともせずに、立ち上がった。

 そこでようやく父と母も体を縛っていた緊張が解けたように歩き出した。私達はお互いに見つめあい、そして何か言葉をつぶやこうとする。

 その田舎の片隅にある喫茶店には、自然に溶け込む優しい音楽が流れ続けていたのだった。


 時が経ってしまっても、変わらぬ想いがある。それは砂の中に埋もれていても、時が経ってやがて自然と浮き彫りになってくるのだ。

 私は二人との再会から、故郷という変わらぬ場所があることにただ涙を流して感謝していた。こんなにも、この故郷の景色が美しいと感じるなんて、何もかもが――本当に何もかもが輝いて見えたのだ。

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