孤独
夕日が綺麗に映っている土手を自転車で走る。
寒くなってきたこの時期の夕日は蒼く澄んでいて好きだ。
河原を見ながら自転車を漕いでいると人影が見えた。
いつもなら人がいるのは気にしないが今回は何か変だ。
河原にいる人──女の子だろう。
自分と歳も変わらないような子が1人で川に入っていた。
この時期は川遊びをするのには寒すぎる。
考えている間にも彼女はじゃぶじゃぶと川の中に入っていく。
そうなると僕の頭の中に浮かんでくるのは、不吉な二文字
自殺
「────ぁぁあっ!もう!」
自転車を投げ捨て急斜面を駆け下りる。
「君!何してんの!?」
大声でそう呼びかけると、彼女はびくりと身体を震わせ振り返った。
僕を見ると、苦々しげに睨み、
「……探し物を探してるの」
と、小さい綺麗な低音で答えた。
僕は久しぶりに話す女子との会話に、今頃緊張をしだしていた。
「あ、僕も手伝うよ!」
靴を脱ぎ川の中へ入っていくと、彼女は驚いた様子でこちらを見ていた。
「なんで入ってきたの?私手伝ってなんて言って無いんだけど」
意味不明きもいみたいな目で僕を見ている……。
「て、手伝ってって言われて無くても1人で困ってる女の子を見捨てれないから!」
「キモイ」
──女の子はそう吐き捨ててまた川の中へ入っていく。僕はほとんど戦意喪失していた。
「あ、あの…何を探してるんですか?」
ピタリ、と女の子の動きが止まる。
「………お守り」
少しの間を開けて放たれた言葉はどこか寂しそうで、無くしたお守りがどれだけ大切なものなのかが痛いほど分かった。
「ここで無くしたの?その、お守り…」
頭を小さく縦に振るのを見て、僕は口を開く。
「─じゃあ、やっぱり僕も探す。1人より二人の方が早く見つかるから…」
女の子は一瞬動きを止めたが、決意したようにこっちを向き、
「─ありがとう」
と言った。
凄く、可愛い顔をした女の子だった。
冬の夜 らうぶ @nenegyo
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