現実11-2

 燃えている。

 家が燃えている。

 目の前で起きているというのに、現実感はない。

 もう過ぎたことなのだから。私の家は失われ、晴美の家も失われた。

 けれどこの温かさだけは忘れない。

 鳥が、

 涙が流れている。

 両の目から、しっかりと、けれどゆっくりと。

 それは忘れないことの証。

 鳥が、

 何年経っても変わらないこと。

「おい、火事だぞ」

「消防車呼べ」

 二階の窓に立ち、私は私を見下ろす。覚めた目で、まるですべてを見透かして。

 私は笑った。

 笑うことで、精神を保とうとした。

「そんな近くにいると危ないよ」

 誰かの手が、私の体を引き寄せる。

 ああ、健太の手だ。

 けれど、私はその手を振りほどく、自らを由とするために。

 どこか遠くで、家が燃えている。

 燃えている。


 鳥が、

 舞っているよ。



















                  赤い

















                   赤い

                 赤い赤い赤い

                   赤い



















                    赤い

                   赤い赤い

                 赤い赤い赤い赤い

                   赤い赤い

                    赤い

            

















           染みが、

                           広がる。


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白い部屋、赤い染み、黒き鳥 なつ @Natuaik

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