白銀の猫
青原 匠
第1話
ミケが死んだ。朝起きたらミケが横たわりながら死んでいた。
ミケは俺が一人暮らしを始めた時に両親が寂しくないようにと買い与えてくれた猫でもうかれこれ15年は生きていた。猫なのにオムライスとオレンジジュースが好きで、銀の毛並みが綺麗で、泳ぎが得意だった。そんなミケが死んだ。俺は頭が真っ白になり、会社をさぼり、行くあてもなく外を歩いていた。
足が疲れ、しかたなく近くのカフェに入ることにした。入ってすぐ、銀髪の少年に唐突に話しかけられた。
「おい、こっち来いよ!」
正直意味不明だったが、知り合いだったら失礼だと思い、少年の目の前の席に着いた。少年はオムライスとオレンジジュースを頼んでいて、俺はコーヒーを頼んだ。
話すこともなく、しばらくの間沈黙が続いた。少年が食べ終わるとこれまた唐突に
「おい、プール行こうぜ!」
と話しかけてきた。俺は意味がわからず、
「は?行くわけないだろ!」
と子供じみた回答をした。すると、
「もしかして泳げないのか?」
と挑発してきた。俺はたまらず
「は?そんなわけないだろ!」
とまた子供じみた回答をしてしまった。すると、
「じゃあ行こう!」
と言われ、結局行くことになった。
少年の泳ぎはとにかく綺麗だった。体はまるで猫のようにしなやかで、銀髪の髪が美しく輝いた。俺はそんな少年に着いて行くのに必死だった。
しばらくするとまた唐突に少年が
「疲れたから帰るわ!楽しかったぜ!」
と言ってきた。ただ、不思議とうざったらしさはなく、心は洗浄されたかのようにスッキリとしていた。
そして、前に進もう、そう強く感じた。
白銀の猫 青原 匠 @abt
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます