ハードウェア?ソフトウェア?
皆様、おはようございます。燕曽野です。
ところでこの「おはようございます」という挨拶、音楽界隈ではこれがデフォルトです。朝であろうと昼であろうと、或いは夜であろうとその日最初に出会ったのなら「おはようございます」と言います。でもこれって、割といろんな業界で使われていたりしますよね?勿論「俺は部活動民なんだけど」って人とかは普通の挨拶でいいですよ。自分の環境に合った挨拶をしましょう。
今回はトランペットと始めるにあたり、楽器と自分との関係の考え方や基本的な原理とか吹き方を知っちゃおうというお話です。
まず、第二話のタイトル「ハードウェア?ソフトウェア?」について。これは言ってしまえば、楽器と自分の体の関係です。
皆さん、唇を閉じ合わせて「ブルブル」ってできますか?多分できない人はあまりいないと思いますが、できなくてもトランペットは吹けますのでご安心を。あくまで分かりやすく解説するための一例です。
あのブルブルってやつをやる時は唇の間全体から息が漏れていると思いますが、その状態で唇の両端に力を入れてみてください。空気の通り道が真ん中に寄ってくるイメージで。すると、ちょっぴり音みたいになります。小学生がよくやる「オナラの音」みたいな、そんな感じです。
これを突き詰めていって、唇の振動を細かくしたのが、トランペットの音になります。ちなみにこれは吹き方ではなく、ただの理屈です。今さっき説明した過程を踏んでトランペットを吹こうとすると、高確率で唇を怪我しちゃうので気をつけましょう。
回りくどい言い方をしてしまいましたが、要するにトランペットの音を作り出すのは自分の唇です。
次に皆さん、周りを見てみましょう。貴方のご家族やご友人、はたまた全く知らない赤の他人もいるかもしれません。その人達の唇、少し観察してみてください。ガン見はダメですよ、通報されたら元も子もありません。
同じ形の唇を持っている人は一人もいませんよね。だから、例えば今この世にいる人が一斉にトランペットを吹いたとしても、完全に同じ音を出せる人はいないのです。まあこれは倍音がどうとかっていう複雑な話なので、ここでは省略。
同じ形の唇を持っている人が存在しないことは、トランペットを作っている人達もよく分かっています。なので、できればトランペットを吹く個人個人に、オーダーメイドで楽器とか作ってあげたいんです。でもそんなことできるわけないですよね。
ですが彼らはもう一つ、知っていることがあるのです。それは「似た形の唇を持っている人は存在する」ということ。ですからトランペット本体と唇をつなぐ「マウスピース」という部品は様々なニーズに応えられるよう、楽器本体よりも沢山種類があります。
――説明が長くなりましたね。ではここまで書いたところで、改めて今回の題意を。
これは楽器とマウスピースと自分の体をゲーム機に例えちゃった結果です。ゲームは、プレイステーシ○ンやニンテン○ースイッチといったハードウェアと、ポ○モンやマリオ○ートといったソフトウェアに分けることができます。
では、先に上げた三つの中で、どれがハードウェアでどれがソフトウェアなのでしょうか。
ハードウェアはズバリ、体です。当然です。だって替えが利きませんから。自分の唇は他人のものではないし、他人の肺は自分のものではありません。
ではソフトウェアは一体何なのか。勿論、ハードウェアに合ったソフトでないと、プレイできませんよね。それが楽器。持ってみたら自分の手のサイズにフィットしていたり、息を入れた時の感覚が心地よかったり、といった感覚は貴方というハードに合っている証拠です。
あれ、じゃあマウスピースはのけ者か。いえいえ、そんな扱い方をしたら空から槍の代わりにマウスピースが降ってきますよ。マウスピースは言うなれば、コントローラーなんです。
何言ってんだこいつ、って思うでしょう。でもね、これが一番大事なんですよ。ゲーム上手くなりたいって思っても、自分に合わない操作方法だと中々上達しないものです。本当はBボタンのほうが攻撃しやすいけど、元々の設定だったから仕方なくYボタンでやっているなんて、かわいそうですしスコアはそこで止まっちゃいます。
さて、こんな感じで楽器達と自分を関係づけたわけですが、じゃあ何を基準に選べばいいのってことですよ。
先に簡単な方から。簡単なのは楽器です。最初はとにかく何でもいいと思います。楽器屋さんのカタログを見て「説明の欄に愉快なことを書いておるな」ぐらいの気持ちで選びましょう。楽器というのは消耗品でもありますから、続けていくのだとしたら今後の人生で二、三本は買うことを覚悟しましょう。部活動から入る人は学校にあるもので全然大丈夫です。ただ、次に買う時は「吹きやすさ」と「音の好み」、それから「楽器の鳴り具合」で決めましょう。
吹きやすさと音の好みは、多分楽器購入の時に試し吹きしてみればわかると思います。ただ問題なのは楽器の鳴り具合。
楽器というのは機械である程度作っているものもあれば、完全ハンドメイドというものもあります。要するに、個体差が激しいんですよ。ハンドメイドだと全く同じものは作れない。トランペットの内部が触っても分からないくらいザラザラしているだけで、息が入りづらいなんてことはよくあります。
楽器の鳴り具合っていうのはその一つで、いい楽器だとある程度息を入れて音を出した時、大きく響く音が出やすかったり、分かりやすいところで言えば楽器そのものがビリビリと振動したりします。これが「楽器の鳴り具合」というやつです。多分これが一番大事だと思います。
さあ皆さんお待ちかね、次はマウスピースです。恐らくここで悩んでいる中高生が滅茶苦茶多い。大半がこの悩みにぶつかります。
マウスピースの選び方、でもこれって実は一分で終わるのです。嘘だと思ったそこの貴方は耳かっぽじってよく聞いてください。ちなみにこのエッセイ、音声は流れません。
ではマウスピース選びのイカれた手順を紹介するぜ!
①唇を閉じ、唇周辺の力を完全に抜きます。よく言われる「シャンプーの『ン』って言っている時の唇」ですね。
②そこに、マウスピースを当てます。この時注意するのは、上唇の赤いところと鼻の下の肌色の境目がマウスピースの外側に出ないことです。その山になっているところがマウスピースに収まるように当ててください。
③「あ、このマウスピース、当てた感じがなんかいい」って思ったものをキープ。
④キープしたものを楽器(できれば自分がいつも使っているやつ)に装着して吹いてみる。で、一番吹きやすかったり音が好みだったりを選ぶ。コントローラーも沢山種類があって、このソフトはこのコントローラーの方がプレイしやすいというのがありますからね。
ね?簡単でしょう?マウスピースはこれで良いんです。プロの方々には「上達するほど大きいマウスピースが欲しくなってくる」と言う方もいらっしゃいますが、要は自分が心地よく吹けることが一番だと私は思います。まあ、私もマウスピースがだんだんデカくなりましたが。今は吹きやすいと思ってるので満足です。
あと、マウスピースはむやみに替えない方が良いです。いくら自分に合ったコントローラーでも慣れる時間が必要ですから、一回決めたマウスピースは使いましょう。
この選び方でイロモノを選んでしまった、または学校の先生に「変なものを使わなくていいから普通のを使いなさい」などと言われましたら、私に一報を入れて頂ければ、首都圏内であれば直談判しに行きます。
あと今回書くことといえば、基本的な吹き方ですかね。
でもこれはさっき言いました。マウスピース選びの時にこっそり。
②を見てください。これが真理だと思っています。トランペットというのは基本的に上唇を震わせて音を出す楽器です。この上唇を全部マウスピース内に入れてあげなかったり、変に力を入れて薄くしたりしちゃうと良くない。ずっと金属が当たっているわけですから、ちゃんと上唇全体で支えないと唇が悲鳴を上げますし、それにいい音も出ない。
だからまず唇を閉じて、力を抜く。これでナチュラルな、力の入っていない上唇が形成されます。そこに、上唇がはみ出ないようにマウスピースを置く。マウスピースと楽器は合体させておいてください。それから上下の唇はくっつけたままですよ。あとはマウスピースの外側の、唇の両端から息が漏れないように意識して、吸った息を吹き込む。多分これで普通に音が出ちゃいます。もし出ないのだとしたら、ちょっとだけマウスピースを当てる角度を変えてみてください、出ないことはまずないです。
唇の両端については、多くの方が「力を入れて閉じる」という説明をされます。これは間違いではありません。間違いではないのですが、唇の繊細なコントロールに慣れていないアマチュアの方々は、両端に力を入れようとしてマウスピース内部の唇にまで力が入ってしまうことがよくあります。固くなった唇は震えてくれません。ですからこの場合「息が漏れないように意識する」くらいが丁度良いと思います。というかプロでも息の圧力が強すぎて漏れたりする人がいます。がっつり力を入れているわけではない証拠ですね。
そしてマウスピースを当てる角度の話。さっき「音が出る角度がある」みたいなことを言いました。それが貴方の基準になります。楽器の角度も人それぞれです。超絶下向きの人もいれば、おいおいそんなに上を向くかって人もいます。ただ全員に共通しているのは、自分が吹きやすい角度で吹いているということです。
これで大体の吹き方は話したかな……おっと、一番大事なことを忘れていました。一番大事なことを。
ここまでの話で何度も登場した「息」。これがトランペットを吹く上で一番大事なことです。正直、上で話していた内容は二の次です。最も意識すべきことが息なのです。
腹式呼吸という言葉は聞いたことがあると思います。腹式呼吸というのは横隔膜が押し下げられることにより腹部が膨張し、その息を押し出す際に丹田という筋肉を使って勢いをつけ……なんて長ったらしい。そんなことをダラダラ語られても誰も分からんわ。
簡単に言っちゃうと、肺の下の方にちゃんと空気が入れば、膨らんだ肺の下部分が内臓やらをグーッと下に押し下げちゃうから、お腹が膨らんできますよ、と。で、吐く時に膨らんだお腹を筋肉で絞ってあげれば、膨らんでいた肺の下部分がキューッと絞られて勢い良く息を吐けますよ、と。あれ、あんまり簡単になっていないかも。
腹式呼吸が楽器演奏で重要視される理由は、勿論その息のスピードにも関係があるのですが、一番は吸える量だと考えています。
息を吸ってもお腹が膨らまないということは、肺の下の方に息が入って居ないということです。上の方にしか空気が溜まっていない。でもこれってつまり、人間誰でも肺の上の方に空気を入れることはできるというわけです。
じゃあ肺の下の方にも空気が入れられるようになったらどうなるか。肺はフルで膨らみます。最強モード。これで勝てる。
――それって腹が膨らむ必要ある?いっぱい吸えたらよくね?
すみません、その通りなんです。だから腹式呼吸をむやみやたらに意識する必要はないと思います。というよりいっぱい吸えてたら自然と肺の下の方に入って腹も膨らみます。
これは私の大学の先生が仰っていたのですが、肺は風船のようなものらしいです。風船って、パンパンに膨らませてから口のところを離すと、すんごい音を立てて中の空気が出ていきますよね。でもちょっと膨らませただけじゃ、空気が出ていったかも分からない。それと一緒で、人間も息を吸えば吸うほど、肺の下の空気が肺の上の空気を押し出すパワーを分けてくれます。上手い人が小さい音を出す時にもたくさん息を吸うのは、吐き出した息の量が少なくても音を出すための勢いを付けてあげるためなんですね。
原理と吹き方、関係性を長々と綴ってまいりました。ちょいと長いかもしれない。でもこれ、トランペットを楽しむアマチュアの方に伝えたいと思っていた内容なので、多分この記事を書き始めて一時間位で完成してしまいました。それくらい重要です。ここを誤解したままでは、この先書いていく具体的な上達法をいくら実践しても上達は訪れないかもしれません。
というわけで、今回はここまでとさせて頂きます。
次回は私の小学生時代の思い出と、そこから出てくる様々な問題点やその解決策を記します。あまりいい思い出ではないかもしれませんが、ご期待下さい。ん、人の思い出は期待するようなものでもないか。
では、またお会いしましょう。
――ああ、忘れてました!
私のプロフィール欄にメールアドレスを記載しておきますので、トランペットやその他楽器、音楽というものについての疑問や相談等ございましたら、ご連絡ください。大学の環境上、他の管楽器のこともある程度は答えられると思います。
それでは次回お会いしましょう!
トランペットへようこそ! 燕曽野 狩輝 @chlorine_kalk
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