トランペットへようこそ!
燕曽野 狩輝
まず、トランペットという楽器について
皆様はじめまして。そうでない人は……恐らくいらっしゃいませんね。
燕曽野 狩輝(エンソノ カルキ)と申します。
名前の由来はそうですね、何か面白いものにしようと考えていて目に留まったのが元素の周期表だったわけです。そういう、化学的なことに興味を持っていたりします。また私は短期記憶が得意でして、大学に入って勉強がおろそかになった今でも元素の名前と記号くらいは暗唱できます。これは自慢なので聞き流しましょう。
――何の話をしていたんでしたっけ。まあ何はともあれ、まずはこの文章のタイトルについてお話ししましょう。
「トランペットへようこそ!」という題を付けました。これは昨今の楽器ブーム(と私が勝手に呼んでいる、というか最早私の妄想かもしれない)に乗じて、では楽器を始めるなら何が良いか、という疑問に私がトランペットを推薦していくというだけのしょうもない内容です。
世間ではけい○ん!とかバ○ドリとか、軽音楽をテーマにした作品が増えつつある一方で、響け!何とかニアムみたいな吹奏楽主題の作品もあったりするわけです。
ユーフォニアム?素晴らしい楽器ですよ、私は大好きです。あの響きを強烈に含んだまろやかな音色、あんなのでキリスト教系音楽の旋律とか吹かれたら、私だったらメロメロになって卒倒しちゃいます。まあ多分そんなことはあまりないと思いますが。
さて、私はユーフォニアムをPRしたいわけではなかったと思い出し、早速本題であるトランペットのことについてここから話します。
第一話の副題は「まず、トランペットという楽器について」です。最初にこれを目にした皆様、どんな内容を想像しましたか?形、或いはその歴史など、それは多岐にわたることでしょう。
ですから先に声を大にして言います。説明などしません。もう一度言います。説明など、しません。
歴史なんて、今この文章を見ているそのインターネットブラウザで検索すれば、こんな駄文など読まなくても学べるし、形とか、口で説明されるより実物を見た方が早いでしょう。
私がこの第一話で語るのは、私が十年ほどトランペットを演奏してきて感じた魅力とか、どんな場面で使われるかとか、そういったことです。まあ正直、こんな若造が言うことなど説得力がなくて、読んでいる途中で「つまんね」って思う人、多いと思います。そういった場合は急いで手元のブラウザバックボタンをクリック、またはタップしましょう。そして「Sergei Nakariakov」と画像検索しましょう。こんなイケメンがプロのトランぺッターなのかと驚いた人は、この文章を最後まで読まなければならないという罰ゲームです。
では、トランペットの魅力を。
やはり何といっても、その華やかさじゃないでしょうか。音がキラキラしている。勿論、他の楽器の音もとても魅力的ですし、美しいです。しかしトランペットの音色というのはその中でも飛び抜けて華やかで、スピード感があり、まるで雲を裂いて飛ぶジェット機のような、そういった雄大さがあります。
そう、あの突き抜けていく感じ。トランペットは我儘な王様です。出番が来ると「儂の出番なんじゃから、雑兵は黙っとれ!」と言わんばかりの存在感を示してくれます。あ、吹いてる人もみんなそんな感じってことじゃないですよ?
オーケストラとかではトランペットと一緒に、トロンボーンなんかも「おっしゃ行ったるぜ!」とか言ってついてきてくれて、二人でドカンと前に出るわけです。
それに対してクラリネットとかフルートとか、オーボエやファゴットもそうですね、彼女らはいわゆる、高貴な姫様なんです。王宮で舞うに相応しい着飾りとそのおしとやかな振る舞い。「私めの音を聞いてくださいませ」って感じの、静かだけど主張が強い楽器です。
そんな王様と姫様じゃ、衝突しますよね。ええ、しまくりです。でもそれでも国を一つにまとめなきゃいけない。そんなときに登場するのが、仲介役のホルンさん。
ホルンさんは、控えめな姫様をがみがみと叱るトランペットとトロンボーンに「まあまあ、ちょっと落ち着きましょうよ」と助言したり、逆に姫様が控えめすぎると「もっと楽しくいきましょう、踊りますか?」なんてカッコよくシャルウィーダンスしちゃう、超大人な役回り。
でも彼ら、ここぞというときにリミッターが外れで「んじゃ俺もう王様でいいでしょ!」みたいな感じで高らかに旋律を奏でるのです。ああ、カッコいい。惚れちゃう。
あれ?って思った方、多いかな。少ないかもしれない。
そういや、オーケストラで前にいっぱいいるバイオリンとかチェロとか、そういう弦楽器はどのポジションなの?って。あの人達は国民ですよ。あと建物。王宮もそうだし、城下町にある庶民の家だってぜーんぶ彼ら。
なんか王様とか姫様に比べて身分が低い、とか思ってないですか?甘い甘い、彼らこそオーケストラという国を国たらしめている、大所帯なんです。だってほら、王宮どころか民も建物もない土地の王様と姫様なんて、ただの独りよがりのクソじじいとクソばばあですから。まあそれでも、王族連盟的団体の吹奏楽というのがあるのですが。
コントラバスが大地を作って、チェロが柱を立てる。ヴィオラが壁張って、最後にバイオリンが屋根付けるんです。これいっぱいやったら、それだけでかなり賑やかじゃないですか。だから彼らの存在は必須なんです。
でも、コントラバスが作った大地には家だけじゃなくて、王様や姫様もずけずけと入ってくるわけですから、さすがにちょっときついときがあります。
そんな時「やれやれ」と言いながら仕方なさげな表情で彼らを助けるラノベ主人公、それがチューバです。チューバ達は「響くし・力強いし・でかい」なんて化け物じみたチート重低音でコントラバスを助け、ありがとうと言われても「別に、気が向いただけなんで」と言ってどこかへ去っていく、ただの主人公です。もう奴らがメインでいいんじゃないかな(出番少ないとか言わないの!)。
ここまできてしまえば王都は大賑わいです。ただ、何か足りません?そう、旗とかパレードとか、空を飛ぶ飛行機隊とか、そういった国の豊かさを誇示するための華美な装飾とかが足りませんね。それをやりすぎなくらいまでにやっちゃうのが、打楽器のみなさん。いい仕事しますよね、どんなものでもでっかく見せちゃうなんて。羨ましいのは秘密です。
ちょっと話題が逸れたような気もしますが、じゃあオーケストラの役割を語って一体何が言いたかったのかと。
ではここで皆さんに質問。この国で一番偉くて、一番目立っちゃうのは誰でしょう。
多分トランペットをやる理由って、これに尽きるんじゃないかなと思ってしまうほどです。当然ながら、吹奏楽やジャズの世界など、トランペットのポジションなんて実に多彩です。ただ、クラシックでトランペットをやるならまずこの為って言っても差し支えないと思います。
というか、あれだけ大人数いるオーケストラで飛び抜けて目立っちゃうんですよ?吹奏楽とかジャズで、目立たないわけないじゃないですか。
はっきり言って、エレキギターより目立ちます。
別に私はエレキギターが嫌いなわけじゃありません、寧ろ好きな方で、暇なときは家でギターとかベースも弾きます。ただ、トランペットはそれよりもずっと出しゃばってきますよ。
テレビでやってる音楽番組、バンドの出演数とか年々増えてると思います。なぜかというと、今時の人間が好んで聴くジャンルの音楽を、バンドならそのメンバーだけで生演奏だってできるわけです。アイドルの曲とかは電子音がいっぱい使われてるから、演奏者で生再現っていうのがすごく難しい。
でも、あるときふとJ-POPを聴くと分かると思います。そういう再現できないような音楽って、実はちゃっかりトランペットがいたりするんですよね。要するに軽音楽器の方が目立つように見えるというのは、軽音楽器の方がメディアに露出しているからなんです。
あと、これは私情を挟まず客観的に判断を下していると一言添えた上で話しますが、単純な歴史の違いがあります。
ギターみたいに弦をはじく楽器のご先祖様はとてつもなく昔に生まれたんですが、何せエレキギターっていうのはどう頑張っても歴史が浅い。でもトランペットは、宮廷音楽に使われる楽器だった頃もあるわけでして、まあその差は少しなのかもしれませんが、それでも古いのです。
だから、その歴史をなぞる形で演奏できる。それも一つの強みなんじゃないでしょうか。これは他の管楽器にも言えたりすることですが。
ここまで長々とトランペットのことについて書きました。というより他の楽器との比較みたいになってしまって、その方面の人にとっては癪に障る内容だったと思います。私はどんな楽器も好きです。やってみたいとさえ思います。ただ、私が長年やってきたトランペットには一体どんな魅了の魔法がかけられているのか、それを具体的に示す為であったことをご了承くだされば幸いです。
その方面でない人、この文章を読んで何を思ったでしょう。「トランペット、面白そうだな」とか、または「いいや、絶対○○の方が演奏してて楽しいしカッコいい」と言ったところでしょうか。
前者の場合は、今後も読んで頂ければ喜びこの上ありません、というより読み続けたほうがいいです。これから私がトランペットを始めて今に至るまでの人生(と言ってもたかだか十年ですが)を綴りながら、どうすればトランペットが上達するかというコツのようなものを書いていきます。これは今トランペットをやっている人も、ただただ気になっているだけの人も一読の価値ありです。
後者の方々、それでオーケーです。音楽は文字通り、楽しむものです。楽しまなければそれは音楽ではなく、貴方のやることは物理学になってしまいます(また物理学者の顰蹙を買いそうな表現を……)。ただ日頃より音楽に満ち溢れた我々の人生の中で、トランペットという楽器の存在があるということを心のどこかにひっそりと留めて頂ければ幸いです。
第一話は以上とさせて頂きます。これから先、私は思ったことを赤裸々に記しますので、人間の心の闇が垣間見える可能性があります。気分を害してしまった場合はお手数ですが、運営様に通報の程、宜しくお願い致します。
ではまた次回、お会いしましょう。
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